Daily report for 13 November 2024
UN Climate Change Conference Baku - November 2024
この日は、1日中、資金交渉が続けられ、新しい損失損害基金の運用開始などが議論された。各国政府首脳は、ハイレベルセグメントでのステートメント発表を続け、開会ステートメント後に中断していたプレナリーも再開された。
再開された開会プレナリー
G-77/中国は、実施には実施手段へのアクセスが必要だと強調、気候資金の新しい集団数量目標(NCQG)では、開発途上国のニーズへの対応と、資金メカニズム運用機関が支援する技術実施プログラムとのバランスをとるよう求めた。
EUは、グローバルストックテイク(GST)の全面的な実施、緩和及び適応の推進、さらには資金貢献の基盤を拡大して最も脆弱なものを支援することで、世界の気候変動への対応を実証するよう求めた。
環境十全性グループ(EIG)は、化石燃料からの移行で合意してから1年が経ったが、化石燃料補助金は気候資金の10倍の規模に膨れ上がっていると指摘し、NCQGを各国のニーズ及び将来の移行に合致させ、最も必要とするものに「押しつけ、引き寄せる(pushes and pulls)」資金とするよう求めた。
アンブレラグループは、GSTの成果をフォローするとの「揺るぎのない決意(unequivocal resolve)」を示すよう求め、NCQGは、数十億ドルの支援供与及び動員を根幹に、数兆ドルの投資でこれを補う、多層式の資金供与にするべきだとし、能力のあるものは上積みするよう求めた。
ブラジル、南アフリカ、インド、中国は、条約及びパリ協定を全面的かつ効果ある形で実施する時だとし、資金供与責任を弱めようとする先進国の動きを拒否した。
アラブグループは、GST成果の実施及び公正な移行の確保では、NCQGが重要な役割を果たすとし、対応措置の悪影響への対応が重要だと強調、第6条をバランスのとれた、効率的な形で運用を始めるよう求めた。
アフリカングループは、NCQGの根幹は公的資金であると強調し、資金貢献者と受益者の土台を再交渉しようとの動きに、懸念を表明、資本コストの高騰を嘆き、債務の持続可能性を確保するよう強調した。
有志開発途上国グループ(LMDCs)は、NCQGでは公的資金が鍵となるとし、目標多層化の考えに異議を唱え、先進国に対し、それぞれの義務を果たすとともに、適応や損失損害、及び気候技術センター・ネットワーク(CTCN)への資金など、資金の増額を確保するよう求めた。
後発開発途上国(LDCs)は、損失損害基金の資本化を高め、LDCの緩和、適応、損失損害のニーズに合わせたNCQGを、主に無償ベースで供与するよう求め、さらに気候資金の明確な定義づけを求めた。
GRUPO SURは、開発途上国の野心は先進国による資金、技術、キャパシティビルディング支援の供与額次第であり、逆ではないと強調、資金貢献基盤の拡大を議論することに異議を唱えた。
MOUNTAIN PARTNERSHIPは、山岳氷河の融解は現地での脅威だけでなく、海水面上昇でも脅威になると強調し、この問題での進展を目指す、議長職の山岳関係協議招集を歓迎した。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気候変動の傾向を理解するには、組織的な観測が重要であると強調、IPCCは第7次評価プロセスにおいて、女性及び若い科学者の参画を増やすべく努力しているとし、先住民の意見など、多様な観点を取り入れる必要があるとの認識を示した。
地球気候観測システム(GCOS)は、現場での観測箇所及びデータの記録を保持していると強調、締約国に対し、氷河の観測を続け、過去のデータを利用可能にし、国内のGCOSコーディネーターの任命を求めた。世界気象機関(WMO)は、意思決定二向け情報を提供するという地球温室効果ガス監視イニシアティブの役割に焦点をあて、組織観測資金ファシリティへの資金供与の増額を求めた。世界気候研究プログラム(WORLD 気候 RESEARCH PROGRAMME)は、多数のプロジェクトの概要を紹介し、世界の降水量における知識面のギャップを埋める作業では淡水地域に焦点を当てる予定だと述べた。
国際民間航空機関(ICAO)は、持続可能な航空燃料の展開を報告、第6条の運用開始を求めたほか、航空輸送への課税は開発途上国への接続性(connectivity)に影響する恐れがあると警告した。
気候行動ネットワークは、各国は「火に油を注いでいる」ようだとし、各国が必要としているものに資金を与えないなら、ドバイの約束は無になると強調した。DEMAND 気候 JUSTICEは、炭素市場は合法的でないとして非難し、生命と排出削減を犠牲にして、軍事産業に資金を注ぎ込むことを糾弾した。
FARMERSは、自分たちは最前線に立たされているとし、締約国に対し、農業、国家決定貢献(NDCs)、NCQG、損失損害基金の議論では、このことを認識するよう求め、炭素市場は農業従事者の権利を守るものであるべきだと強調した。INDIGENOUS PEOPLESは、各国は第6条や地球工学など偽の解決策を打ち出しているが、行動はできていないとして嘆き、ジェノサイド(大量虐殺)ならぬエコサイド(ecocide)だと述べ、先住民と地方コミュニティという全く異なるものを組み合わせようとするのは、止めるべきだと述べた。
LOCAL GOVERNMENTS AND MUNICIPAL AUTHORITIESは、締約国に対し、「欠かすことのできない(indispensable)」国内の小地域政府とパートナーシップを組み、NDCsの野心を引き上げるよう求めた。RESEARCH AND INDEPENDENT NON-GOVERNMENTAL ORGANIZATIONS (NGOs)は、化石燃料の利用量増加が報告されているとし、締約国に対し、サイエンスを移行経路の中心に据え、全ての人々及び自然の安全とレジリエンスを確保するよう求めた。
WOMEN AND GENDERは、ジェンダーに関するリマ作業プログラムはジェンダー的に正しい気候行動を実現していないとして、締約国の政治的な意思の欠如を嘆き、炭素市場及び気候行動をとらないことで、少数のものは豊かになったが、グローバル・サウスはその犠牲になっているとして、「資金が無いという神話(myth of financial scarcity)」の問題を指摘した。CHILDREN AND YOUTHは、先進国が資金の公平な負担をしないことで、将来の世代の権利が損なわれていると指摘、自分たちは、議長職選任のYouth 気候 Champions、及び化石燃料の利益を喧伝し続けているCOPsのため、脇に追いやられていると述べた。
TRADE UNION NGOsは、240万人もの工場労働者や農業従事者が気候関連の害にさらされていると指摘し、無償ベースの資金は人権や労働者の権利を守れる組織的な変更を可能にすると強調、さらに生存の希望をもたせる公正な移行も可能にすると述べた。BUSINESS AND INDUSTRY NGOsは、第6条の最終決定がこのCOPを成功させる鍵であるとの見方を示し、既に決定された項目は正しい方向に進む第一歩であるとし、ビジネスや投資部門にシグナルを送れるようなNCQGの議論を求めた。
資金
NCQG:パリ協定締約国会議(CMA)の下でのNCQGの非公式協議では、Fiona Gilbert (オーストラリア)が共同進行役を務めた。締約国は、新しい文書草案を歓迎し、共同進行役に対し、重複箇所を削除する一方で、アイデアは削除せず、文書のスリム化を図るよう求めた。EIG及びEUは、アクセス、透明性、権利ベースの表現に関する非公式な議論を提案した。アラブグループは、非公式な非公式協議での文書作成を拒否した。
資金常任委員会(SCF)の問題:COP/CMA合同のコンタクトグループでは、Clara Schultz (スウェーデン)及びAli Waqas (パキスタン)が共同議長を務め、締約国は、決定書に関する当初の意見交換を続けた。
隔年評価報告書に関し、米国及びニュージーランドは、特にパリ協定第2条1c項(資金フローの調整)など、重要な提案に注目するよう求めたが、アフリカングループは、第2条1c項の範囲に関するダイアログで議論が進行中であるとし、二重の作業になると指摘した。LDCsは、次回の評価に損失損害を含めることを提案した。
気候資金の共通の定義に関し、LDCs及びアフリカングループは、さらなる議論を求め、 SCFは推奨案を出していないと指摘した。米国、カナダ、ニュージーランドは、SCFの作業量を考慮し、追加議論なしを希望、資金常任委員会は緑の気候基金(GCF)及び地球環境ファシリティ(GEF)へのガイダンスの作業を終了できない可能性があるとの見方を示した。共同議長らは、決定書草案を作成する予定。
緑の気候基金の報告書、及び同基金へのガイダンス:COPコンタクトグループの共同議長は、Pierre Marc (フランス)が務めた。締約国は、SCFがまとめた決定書草案の要素スリム化を求めた。アフリカングループは、GCFが民間部門の資源動員に成功したことを歓迎し、先進国の資金貢献者に対し、2030年までに500億米ドルの資金管理ができる基金にすることを奨励した。米国及びカナダは、ガイダンスは締約国ではなく、GCFに対するものだと指摘した。EUは、GCFに対するガイダンスを隔年ではなく毎年のものにするとの動議を支持した。
この他、次の項目でコメントが出された:他の基金との一貫性及び補足性を高める;影響の大きい提案を優先する;準備体制への支援を早める;多国間のプロジェクトでも各国のモニタリングを行う;直接アクセス組織の認定を早め、優先する;GCFのスタッフにおける地域的な多様性;中南米カリビアンでのGCFの存在を確立する。共同議長らは、書面による文書提出を歓迎し、文書草案のスリム化を図る予定。
CMAコンタクトグループで、アラブグループは、NCQGでの成果を歓迎し、先進国に対し、合意された数量に合わせた資金貢献の速やかな増額を求め、資金フローの一貫性の表現に異議を唱えた。共同議長らは、書面による文書提出を歓迎し、文書草案のスリム化を図る予定。
地球環境ファシリティの報告、及び同ファシリティへのガイダンス:COPコンタクトグループの共同議長は、David Kaluba (ザンビア)が務めた。締約国は、SCF作成のガイダンス草案の要素をスリム化するよう求めた。独立中南米カリビアン諸国連合(AILAC)は、次回の資金補填に対しガイダンスを提供する必要があると強調、アラブグループは、開発途上国のニーズから始めるべきだと強調し、エジプトは、第8回の資金補填の少なくとも2倍にするよう求めた。アラブグループは、条約の下での報告作成に対する支援継続の必要性を指摘、EUは、GEFに対するガイダンスを隔年から毎年に変えるとの提案を支持した。
その他、次の強化を求めるコメントが出された:LDCs及び小島嶼開発途上国(SIDS)への支援及び支援のアクセス性;資金メカニズムと技術メカニズムとのリンク;ジェンダーへの対応性;認定プロセスに関するものなど、他の基金との一貫性。共同議長らは、書面による文書提出を歓迎し、文書草案のスリム化を図る予定。
損失損害基金の報告、及び同基金へのガイダンス:COPコンタクトグループ共同議長のAmena Yauvoli (フィジー)は、報告書に関する決定書草案(CP/2024/9-CMA/2024/13, and Adds.1)の要素について、コメントを求めた。締約国は、世界銀行とのアレンジの最終決定、及びフィリピンをホスト国とするとの決定など、理事会の作業を前向きに捉えた。
EIG、米国、EU、英国、ニュージーランド、カナダ、ノルウェー、オーストラリアは、理事会の報告書及び作業を歓迎すると同時に、追加ガイダンスには言及しない、手順上の決定書草案を希望した。
多数の開発途上国は、決定書の実質的な要素を指摘、特に長期資源動員戦略の要素を挙げた。アフリカングループは、この基金は開発途上国のニーズに対応するものであるべきだと強調、AILACは、全ての開発途上国には、この基金にアクセスする資格があると強調した。アラブグループは、先進国に対し、支援の提供を促すよう提案した。AILAC、インド、エジプトは、プレッジを貢献合意に転換する必要があると強調し、小島嶼国連合(AOSIS)は、現在のプレッジでは不十分だと指摘した。共同議長らは、COPの下でのアレンジ採択に向け、決定書草案を作成する予定であり、追加コメントがなければ、CMAの下でのアレンジに向けた決定書草案を作成する予定。
COP、CMA、損失損害基金理事会の間のアレンジ:COPコンタクトグループの共同議長は、Jose Delgado (オーストリア)が務めた。締約国は、SCF提案のアレンジメント草案(CP/2024/6/Add.8, CMA/2024/8/Add.8)を承認する意思があると表明した。AOSISは、この基金は資金メカニズムの運営組織の一つであり、同メカニズムから定期的なレビューを受けるとの理解を示した。共同議長らは、COPの下でのアレンジ採択に向け、決定書草案を作成する予定であり、追加コメントがなければ、CMAの下でのアレンジに向けた決定書草案も作成する予定。
適応基金(AF)の問題:CMP及びCMAのコンタクトグループでは、Ralph Bodle (ドイツ)及びIsatou Camara (ガンビア)が共同議長を務めた。締約国は、京都議定書締約国会合(CMP)及びCMAの決定書の要素について議論した。AILAC及びLDCsは、適応資金の規模拡大が必要なことを認識するよう求めた。
この基金をパリ協定専用のものへと移行する作業については意見が分かれた。EU、EIG、英国、米国、カナダは、第6条4項メカニズムの収入の一部はすぐにも利用可能になる予定であるとし、理事会に対し、関連する法的文書を改定して、これを採択するよう求めた。
アラブグループ、LMDCs、アフリカングループは、CMP及びCMAが収入の一部の利用可能性を確認するまで、理事会の作業を終了するわけにはいかないとし、利用可能とする方法の説明を求めた。
理事会事務局は、移行関係の作業は進行中であると報告、信託者(trustee)である世界銀行は、最終決定されるまでは文書の機密保持を要請した。アフリカングループは、信託のアレンジに関し一般質問したことを想起した。
パリ協定第2条1c項の範囲及び第9条との補足性に関するダイアログ:CMAコンタクトグループの共同議長は、Elena Pereira Colindres (ホンジュラス)及びBen Abraham (ニュージーランド)が務めた。締約国は決定書草案要素の説明を求めた。
GRUPO SUR、LDCs、アフリカングループ、AILAC、アラブグループ、LMDCs、ロシアは、第2条1c項の解釈では意見が分かれたままだと指摘したが、米国、オーストラリア、英国は、全体的な理解が進んでいるとの考えを示した。アラブグループ、LMDCs、ケニアは、異なる解釈があることから、手順上の決定書の採択を主張した。
少数の開発途上国は、高い資本コスト、債務レベルの高さ、財政的な余裕の無さなど、報告書に記載する課題を指摘した。AOSISは、ダイアログの下で、これまでに開催されたワークショップはSIDSとの関連性が薄いものであったと強調、特に外部機関のプレゼンテーションは関係性が薄かったと指摘した。
ダイアログの今後の題目に関しては、適応の議論追加で意見の一致が見られたが、アラブグループは、今度の題目を決定書で明示するべきでないと述べた。EIG及びEUは、追跡(tracking)の進展を支持した。EUは、国際金融機関が果たす役割を議論するよう提案した。カナダは、LDCs及びSIDSの課題に関する議論の追加を求めた。オーストラリアは、小規模経済に焦点を当てることを提案した。共同議長らは、決定書草案を作成する予定。
決定書1/CMA.5のパラグラフ97記載の、GST成果実施に関するダイアログ:実施のための補助機関(SBI)の下での非公式協議の共同進行役であるRicardo Marshall (バルバドス)は、スコープについては意見が分かれたと指摘し、今回の会合では、SB 60の非公式ノートをベースに、モダリティの議論に焦点を当てることを提案した。
AILACは、このダイアログはGSTの各テーマでの議論を推進するべきだとし、次を議論するよう求めた:GST決定書に記載する提案の実施における、全体的な進捗状況;進捗を妨げている障壁及び課題、特に実施手段に関係するもの;ギャップを塞ぐために必要な約束の追加。LMDCsは、このダイアログはNCQGの実現に向けた進捗状況を追跡するべきだと強調した。EUは、モダリティの議論を奨励、ダイアログのスコープはハイレベルで議論することを提案した。
共同進行役は非公式ノートを作成する予定。
緩和
パリ協定第6条2項規定の協力手法に関するガイダンス:非公式協議の共同進行役は、Peer Stiansen (ノルウェー)及びMaria Al Jishi (サウジアラビア)が務めた。この非公式協議は午前中一杯続けられ、締約国は、SBSTA 60からの文書草案スリム化方法を提案した。
第6条の技術専門家レビューなどを含める、報告作成での矛盾を明らかにし、対応するプロセスに関し、各国は、「顕著な(significant)」矛盾、あるいは「継続的な(persistent)」矛盾とは何か、ガイダンスの規範性について、長時間議論した。英国は、「顕著な」の定義を二重計算と結びつけることを提案したが、EUは、より広範で、「段階をつけた(graded)」定義づけが必要だと指摘した。 多くのものは、これらの用語はレビュワーに任せることを希望した。AOSISは、量的及び質的な情報の両方での矛盾を議論するよう提案した。LMDCsは、「物的な矛盾(material inconsistencies)」など、新たな用語の導入に反対した。
多様な締約国は、レビュワーが指摘する特定の矛盾点については、パリ協定実施及び遵守委員会との連携の詳細を決める必要があると強調した。AILAC、GRUPO SUR、EU、アフリカングループなどは、矛盾点が明らかにされた場合には、国際的に移行する緩和成果(ITMOs)をNDCsに移行したり、利用したりすることは中止するとの文章を支持した。
国際レジストリの追加機能及び手順に関し、締約国は、大きな意見の違いは残っていると指摘し、多数のものは、それぞれの立場を明らかにするか、意見の違いを橋渡しする方法を提案した。米国は、ITMOsに関係する締約国の行動を追跡し、データを記録する以外の機能の付与に反対し、機能拡大には広範な作業プログラムが必要になると警告し、各国は国内の制度を国際レジストリに合わせるべく、再構成しなければならなくなると述べた。
アフリカングループは、レジストリに(クレジット)発行機能をつけるよう求めている訳では無いとし、レジストリを持たない国が、国際レジストリを利用して、認定や移行、クレジットの利用などの機能を発揮できるようにしてほしいと強調した。GRUPO SUR、AOSIS、LDCsも同様の意見を表明した。ニュージーランドは、国際レジストリでこれらの機能を利用できるITMOsと、「検索、閲覧(pull and view)」機能しか利用できない緩和成果との差異化を提案、国際レジストリはITMOsに対してのみ役割を果たすと指摘した。多数のものは、締約国による国内のレジストリの開発を可能にする能力を開発するため、支援が必要だと強調した。
締約国は、共同進行役らに、新しい文書の作成を委任した。
パリ協定第6条4項メカニズムの規則、モダリティ、手順:CMAコンタクトグループ共同議長のKate Hancock (オーストラリア)及びSonam Tashi (ブータン)は、第6条4項監督機関のCMAに対する年次報告書(FCCC/PA/CMA/2024/2 and Add.1)を審議するよう求め、CMA決定書草案の要素を提案することも求めた。熱帯雨林諸国連合(CfRN)は、補助機関はCMAの採択にかけるためのガイドラインを作成し提案するというマンデートを達成せずに、第6条4項の手法論及び除去のガイドラインを採択するという、「恐るべき前例(horrible precedent)」を作ったとして、非難した。ENVIRONMENTAL NGOs (ENGOs)及びTRADE UNION NGOsは、補助機関のガバナンス違反を嘆き、メカニズムの十全性を確保するガイダンスの策定を求めた。
CMA決定書草案の要素に関し、EU及びアフリカングループは、補助機関の議長は文書での年次報告に加えて、口頭でもCMAに報告するとの作業モードの採用を提案した。LDCsは、LDCsにおける適応の収入の一部の支払い免除を支持した。GRUPO SURは、クリーン開発メカニズム(CDM)の新規植林及び再植林プロジェクトの第6条4項メカニズムへの移行について、議論することを支持した。AILACは、クレジットのモニタリング期間を過ぎた場合のガイダンスを支持し、日本は、ベースラインのツール及びメカニズム・レジストリの実施に関し、議論するよう求めた。
共同議長らは、文書草案を作成する予定。
パリ協定第6条8項に規定する非市場アプローチ(NMAs)枠組の作業プログラム:SBIコンタクトグループ共同議長のKristin Qui (トリニダード・トバゴ)及びJacqui Ruesga (ニュージーランド)は、新しい文書草案を提示、これには作業プログラムの第1フェーズの評価、第2フェーズに向けての提案、ウェブベース・プラットフォーム及びキャパシティビルディングに関係する問題が含まれると指摘した。
第1フェーズの評価に関し、LMDCsは、NMAsが各国のNDCs実施をどのように推進したか、量的な評価を含めるとの提案について説明した。CFRN及びLMDCsは、第2フェーズでも第1フェーズの議論継続を求め、第1フェーズはまだ十分に議論されていないと述べた。
第2フェーズでの提案に関し、アラブグループ、EU、米国、トルコ、その他の締約国は、注目分野の追加に反対した。少数の締約国は、スピンオフ・グループの題目のリストにも疑義を唱え、必要なときにのみ、題目を決定することを希望した。CfRN、EU、その他は、「母なる大地を中心とする行動(Mother Earth Centric Actions)」という表現に反対したが、LMDCsは、緩和及び適応の両方の行動を促進する必要があると強調した。
ウェブベース・プラットフォーム及びキャパシティビルディングに関し、CfRNは、各国の国内窓口にはプラットフォーム利用障壁に関する調査をしたが、これをプラットフォームに登録済みのサービス・プロバイダーなど、非締約国利害関係者にも広げるよう提案した。
共同議長は、新しい文書草案を作成する予定。
NDCの特性に関する追加ガイダンス:CMA非公式協議の共同進行役は、Sin Liang Cheah (シンガポール)及びFederica Fricano (イタリア)が務めた。締約国は、NDCsの特性に必要な追加ガイダンスに関する意見発表を行った。LDCs及び韓国など、少数のものは、追加ガイダンスの必要性を決定する前に、現在のNDCsの特性のガイダンスについて、説明するよう求めた。アフリカングループ及びノルウェーは、パリ協定第4条(NDCs)及び決定書4/CMA.1 (決定書1/CP.21の緩和セクション関係の追加ガイダンス)にガイダンスが記載されていると指摘し、追加ガイダンスは必要ないと述べた。
アラブグループ及び韓国は、追加ガイダンスはパリ協定と矛盾してはならないと強調した。締約国は、NDCsの国家決定の特性を強調し、インドは、「特性に見せかけた(in the guise of features)」トップダウンの要素導入に反対した。
他の締約国は、追加ガイダンスを支持し、共通の特性はNDCsの提出及び実施に関する締約国の経験から特定可能だと指摘した。EU、AOSIS、LDCsは、経済全体の目標を明らかにした。日本及び米国は、全ての締約国による数量化を求め、LDCsとともに、1.5℃目標に合わせることを支持したが、インドは反対した。LDCsは、NDCs実施での資金のギャップを埋め、NDCのタイムラインを明らかにするよう求めた。LMDCsは、大半のNDCsには条件がついていると指摘、これもNDCsの特性の一つだと指摘した。
共同議長らは、今後の進め方に関し、議長職と協議する予定。
適応
適応世界目標(GGA)の問題:SBの非公式な議論の共同進行役は、Lamin Dibba (ガンビア)が務めた。締約国は、GGA問題の審議を開始し、CMA 7に決定書を提案するよう求める決定書 2/CMA.5のパラグラフ38について、フォローアップをどうするか、議論した。次の点で意見の不一致が浮上した:今回の会合でこの問題の集中審議に入るか、それとも後日に回すか;将来のGSTに対するGGAのインプット;GGA枠組のレビュー開始時期、特にGST 2のタイミングに関して。締約国は、事務局作成の移行型適応に関するテクニカルペーパー (FCCC/TP/2024/8)を歓迎したが、一部のものは発表が遅すぎるとして悲嘆した。次に関する議論も行われた:CMA 7以後、GGAに関する議題項目を独立させる必要性;GGAの作業に方向性を示す上で、条約の原則が果たす役割;他のプロセスとの重複作業の回避。
共同進行役らは、文書草案を作成する予定。
適応委員会の報告書:SB非公式協議の共同進行役は、Lina Yassin (スーダン)が務めた。アフリカングループは、同委員会の報告書に記載するCOP及びCMAの推奨案(FCCC/SB/2024/4)を、スクリーンに映し出し、文章での交渉ができるようにすることを求めた。EU、オーストラリア、米国、カナダは、反対し、まずは、共同進行役に文書草案の作成を委任することを希望した。共同進行役らは、今後の進め方について、SB議長らと協議する予定。
国別適応計画:SBI非公式協議の共同進行役のMeredith Ryder-Rude (米国)は、SBI 60で作成された非公式ノートにカラーコードと最新の注釈を導入、締約国はハドルで協議した。協議再開時、G-77/中国は、カラーコード及び注釈の中には同意できないものがあると述べ、SBI 60からの非公式ノートをスクリーンに投影し、文章の編集を提案できるようにすることを要請した。EU、ノルウェー、米国は反対し、それは一歩後退を意味すると警告、共同進行役による非公式ノートのスリム化を希望した。
共同進行役らは、議論が行き詰まっていると指摘し、締約国の非公式協議を求めた。
損失損害
気候変動の影響に伴う損失損害のワルシャワ国際メカニズム(WIM)の執行委員会(ExCom)及びサンチャゴ・ネットワークの合同の年次報告書:SB非公式協議の共同進行役は、Pasha Carruthers (クック諸島)及びFarhan Akhtar (米国)が務めた。締約国は、合同報告書(FCCC/SB/2024/2)及び2024年WIMレビューの両方に関する単独の決定書作成を求めた。アフリカングループは、どのような決定書でも、WIM ExCom及びサンチャゴ・ネットワークの違いを尊重し、それぞれの独立性を尊重するべきだと強調した。
締約国は、サンチャゴ・ネットワークの運用開始における顕著な進展を歓迎した。AILACは、地域オフィスの速やかな設置を求め、アフリカングループは、アフリカ地域には少なくとも2箇所のオフィスを設置するよう求めた。LDCsは、サンチャゴ・ネットワークに対する資金供与と損失損害基金に対するプレッジの違いを強調した。AILAC及びアフリカングループは、ネットワークに対するプレッジの未払分を速やかな提供を求めた。
2024年WIMレビュー:SB非公式協議の共同進行役は、Pasha Carruthers (クック諸島)が務めた。締約国は、決定書草案に入れる文章を提案した。WIMの知識文書のアクセスしやすさの改善では、意見の集約が見られ、文書を全ての国連用語に翻訳する、WIMとサンチャゴ・ネットワーク及び損失損害基金の間で調整や一貫性を図る、損失損害の制度を広範なものに拡大することなどで、意見が一致した。
AOSIS及びアフリカングループは、WIMに対し、世界の損失損害の状況に関し、定期的に報告書を作成するよう求めたが、オーストラリア及び英国は、そのような報告書の合理性及び内容の詳細も報告するよう要請した。
AILAC及びLDCsは、WIMの第3の機能である行動及び支援では、あまり進展が見られないと強調した。参加者は、行動及び支援におけるWIM専門家グループの役割、さらには各国の国内損失損害窓口の役割を、レビューするべきことで合意した。
共同進行役らは、発表された意見をまとめた非公式ノートを作成する予定。
その他の問題
技術メカニズム及び資金メカニズムのリンク:SBI非公式協議の共同進行役であるStephen Minas (ギリシャ)は、SBI 60での合意では、SBI 61でも、SBI 60の文書草案を考慮して、この項目の審議を続けることになっていたと指摘し、COP決定書草案の要素に関するコメントを求めた。
締約国は、議論の進め方で異なる見解を示し、「考慮する(taking into account)」が何を意味するか議論した。G-77/中国は、この文書で審議を進めることを支持したが、日本は、一から始めることを希望した。英国及びEUは、次を提案した:SBI 60で開催された会合期間中ワークショップの報告書 (FCCC/SBI/2024/16)、及び両方のメカニズムの協調及び協力の維持と強化に関する統合報告書(FCCC/SBI/2024/1)を歓迎する;協調強化の事例を明らかにする;協調の継続を奨励する。さらに、EUは、CTCNに対し、GCF及びGEFのプログラムとの戦略的な調整を進めるよう奨励することを提案した。
最終的には、SBI 60の文書草案と今回の会合での意見表明を統合する文書草案を作成するよう、共同進行役に委任することとなった。
技術移転に関するポズナニ戦略プログラム:SBI非公式協議の共同進行役は、Duduzile Nhlegenthwa-Masina (イースワティニ)及びStig Svenningsen (ノルウェー)が務め、今回のCOPでこの問題の審議を終了するかどうか議論した。多数のものは、2014年以後、戦略プログラムの下で開始されたプロジェクトは無く、進行中の最後のプロジェクト2件も2024年に終了すると指摘、GST決定書で設置された技術実施プログラムの下での技術の議論継続が支持された。G-77/中国は、新しいプログラムは運用が開始されていないとし、この議論は時期尚早だと述べた。EU、英国、米国は、新しいプログラムは技術的なニーズの特定と対応に役立つと述べた。カナダは、戦略プログラムの継続の如何を決めるのは、SCFの権限であると指摘した。非公式協議が夜まで続けられた。
研究及び組織観測:非公式協議は、科学的技術的助言のための補助機関(SBSTA)下で開催され、Patricia Nyinguro (ケニア)及びFrank McGovern (アイルランド)が共同進行役を務めた。締約国は、決定書草案を歓迎、2024年が記録上最も暑い一年であったと言及するかどうかが、議論の中心となり、多数のものは、この言及は「絶対必要だ(absolutely necessary)」と指摘した。 LMDCsは、この表現は誤解されやすいとし、温暖化の傾向は歴史的な累計排出量の観点で解釈されるべきだと述べた。
AOSISは、早期警戒システムへの世界的なアクセスを実現する、特に「脆弱な地域(vulnerable regions)」において実現するとの言及を歓迎し、SIDS及びLDCsを優先するとの表現を加えるよう提案した。LMDCsは、特に「開発途上国」に対し、早期警戒システムを配置し、脆弱な地域を優先するとの表現を提案した。
共同進行役は、決定書草案を改定する予定。
廊下にて
廊下でも、会場でも、大きな議論となったのは、多様なコーヒーのオプションの質であった。この段階での交渉と同様、解決策は無く、このコーヒー論議は交渉にも重くのしかかっていたようだ。いくつかの会議室では、交渉担当者たちが、共同進行役たちに、徹夜での文書草案の改定を迫っていた。新しい資金目標に関する議論の共同進行役たちは、65頁もの書面による提出文書を読み返し、34頁という「モンスター」のような草案を作成しようとしていた。さらに、資金問題では、米国が、2回にわたり、書面による文書提出のための期限延長を要請、後発開発途上国グループの交渉担当者は、「要請するものがいて助かった(I’m glad someone asked)」と述べた。
第6条2項の交渉担当者は、驚くほどの効率の良さを示した。これは月曜日の第6条4項での決定に刺激された可能性がある。この決定は、ベテランの交渉担当者をして、「祝う理由(reason to celebrate)」ができたと言わせたが、オブザーバー及び熱帯雨林諸国連合は、再開された開会プレナリーで非難していた。他方、技術的なニーズに対応する資金提案を、多様な議題項目で「登場させよう(pop up)」とする「一致して協力する努力(concerted, coordinated effort)」がなされ、あるオブザーバーは、「これがカギとなる(It’s key)」と強調し、「現場での実施の改善に結びつく(as this could lead to some real improvements on the ground)」 と述べた。
多数のハイレベルなゲストの発したメッセージも、波乱を呼んだ。「アゼルバイジャンは、フランスと争う姿勢を示し、イタリアは核融合の夢を見ているが、アルゼンチンは、代表団に帰国を命じた」と、ショックを受けた参加者は指摘し、「一日にしては大きすぎるドラマだ」と述べた。