Daily report for 10 December 2019

Chile/Madrid Climate Change Conference - December 2019

チリ/マドリード気候変動会議は、火曜日も続けられ、ハイレベルセグメント及び資金関係問題に関する少数の会議が開催された。

ハイレベルセグメント

COP議長のCarolina Schmidt (チリ)は、COP 25/CMP 15/CMA 2のハイレベルセグメントを開会した。

スペインのミュージシャン、Alejandro Sanzは、「我々は最善を尽くす必要がある(we need to give the best of ourselves)」と述べ、気候変動への対応努力における連帯を呼び掛けた。

世界気象機関事務総長のPetteri Taalasは、2019年気候の状態報告書に焦点を当て、気候変動の影響結果を指摘した。同事務総長は、カーボン・ニュートラリティに向け転向しようとの一般からの圧力が高まっていると指摘し、「明日(tomorrow)」の観点から長期的な観点へと視点を移すよう求めた。

スペインのTeresa Ribera大臣は、参加者に対し、世代間を横断する橋架けが必要であり、中長期的な観点で努力する必要があると想起し、気候変動との闘いでは社会の平等を作用させる必要があると強調した。

UNFCCC事務局長のPatricia Espinosaは、パリ協定第6条の規定の運用開始を求め、関係するメカニズムの下での緩和行動は適応行動を支援するだろうと指摘した。同事務局長は、IPCCの最新の報告によると、我々は必要とされる転換を実現する経路上には載っていないと想起し、野心的なリーダーシップを促し、「もう時間がない(we are out of time)」と強調した。

国連総会の第74回会合議長であるTijjani Muhammad-Bandeは、「我々には行動する倫理的な義務がある(we have a moral obligation to act)」と強調し、全てのものの繁栄を確保すると同時に、気候耐性及び性の平等を確保し、生物多様性の喪失を逆転させる経済モデルを明らかにするよう呼びかけた。

COP 25議長のCarolina Schmidtは、気候変動は社会的な不平等で悪化すると強調した。同議長は、適応に関するハイレベルな閣僚ダイアログ及び資金や科学、エネルギーに関する閣僚たちとの会議の開催を指摘し、政府の全ての部局、さらには国内の地方政府、コミュニティ、民間部門の行動者の参画を促した。

各国のステートメント:キリバスのTaneti Maamau大統領は、損失及び損害に特化した資金、気候資金へのアクセス簡素化、「明確で確固とした(clear and robust)」第6条を伴う、パリ協定作業計画(PAWP)の完成を確実にするため、全体のサポートを探求した。

トンガのPohiva Tuʻiʻonetoa首相は、技術、キャパシティビルディング、「義務的な資金供与(mandatory financing)」の間で「不可欠な(essential)」シナジーに焦点を当て、海洋の健全性に対する自国のコミットメントを強調、2030年までに海洋保護区域の対象を倍増させる計画を強調した。

ツバルのKausea Natano首相は、次を求めた:気候資金、特に損失及び損害の気候資金の規模拡大;海洋に関する作業計画での合意;第6条の下での環境十全性の確保。同首相は、UNFCCCプロセスへの台湾の積極的な参加を確保するよう促した。

フィジーのFrank Bainimarama首相は、次を強調した:2020年までの1千億米ドルという気候資金目標の達成、及び2025年以後の新しい全体目標の決定;第6条の下での二重計算の防止;国家決定貢献(NDCs)を、共通の5年時間枠と合わせる;緑の気候基金(GCF)の下での損失及び損害資金の窓口を設置。同首相は、気候科学に関する議論が長引いたことに懸念を表明し、「無視や否定ではなく、COP 26での野心(not of ignorance and denial, but of ambition for COP 26)」の舞台を準備するよう促した。

スロバキアのLászló Sólymos副首相は、GHG排出量を削減し、自国の炭鉱地域の正当な転換を実行するという自国の努力を強調した。

スウェーデンのIsabella Lövin副首相は、行動に関する4つの重要分野に焦点を当てた:野心の強化;「可能な限り最高の十全性(highest possible integrity)」に向けての第6条へのガイダンス;排出削減、生物多様性の保全、海洋の健全性を「統合する(integrated)」対応の必要性;パリ協定の国内法への投影。

ベネズエラのJorge Arreaza Montserrat大臣は、ネオリベラルで資本主義の「被害者にこの惑星がなっている(the planet has been the victim)」と述べ、一部の締約国の立場は「きわめて無責任だ(profoundly irresponsible)」と評した。

G-77/中国の立場で発言したパレスチナのRiad Malki大臣は、先進国に対し、支援の強化を求め、開発途上国向けの気候資金は「政治から切り離す必要がある(must be depoliticized)」と述べた。

AOSISの立場で発言したベリーズのOmar Antonio Figueroa大臣は、小島嶼開発途上国(SIDS)は「気候野心の先駆け(vanguard of climate ambition)」であり続けるとし、全ての国に対し、「2020年を野心の10年間の始まりにする(make 2020 the beginning of a decade of ambition)」よう懇願した。

フィンランドのTerhi Lehtonen国務長官、及び欧州委員会第1副大統領のFrans Timmermansは、ともにEUの立場で発言し、「市場措置の確実な成果(a secure outcome for market measures)」及び気候変動の影響に伴う損失及び損害のワルシャワ国際メカニズム(WIM)の第2回レビュー終了を求めた。さらに、近く提示する予定のEUのグリーン・ディール(Green Deal)に焦点を当てた。

適応の野心に関する閣僚級ダイアログ:COP議長のCarolina Schmidtは、参加者を歓迎し、国別適応計画に関する進捗状況はゆっくりと推移しつづけており、これまでに文書を提出したのは17か国のみだと指摘した。スペインのTeresa Ribera大臣は、シナジーを見出すには、緩和及び適応行動における政治的な障害を乗り越えて努力する必要があると強調した。UNFCCC事務局次長のOvais Sarmadは、「野心を推進し、支援する(catalyze and support ambition)」には、UNFCCCプロセスの影響力が重要だと述べた。

COP議長のSchmidtは、フィジー、ボツワナ、日本、ウルグアィの閣僚たちと共に、適応、実施及び野心に関するパネル討論を開催し、そのモデレーターを務めた。閣僚たちは、特に次について議論した:政府の閣僚たちを網羅して気候変動の主流化を図る必要性;開発途上国に対する無償融資ベースの資金援助及び技術支援が必要;災害リスク軽減を促進するため、生態系を利用する。日本の閣僚は、自国がGCFの第1回資金補填に15億米ドルを寄贈したと発表した。

「統合、協力、支援(integration, cooperation, and support)」に関する第2回パネルでは、バングラデシュ、エジプト、韓国、オランダの閣僚たちが参加、開発戦略での適応の役割、強化された適応のための協力及び支援に、焦点を当てた。パネリストは、特に次の点に焦点を当てた:バングラデシュのマルチ寄贈者による気候変動リジリエンス基金;最高の政治レベルでのモーメンタムが必要;国別適応計画策定に対する地球環境ファシリティ(GEF)の資金援助へのアクセスを加速化するプロセス;プロジェクトのバンカビィティ(bankability)。かれらは次も指摘した:韓国グローバル適応ウィーク、これは適応におけるブロックチェーン技術(blockchain technologies)の役割、及びインターネット通信(Internet of Things:IoT)に注目する;適応に関する世界委員会(Global Commission on Adaptation)及びその適応センターが「計画及び会議(plans and meetings)」から行動へと動く努力をしている。

フロアからの意見発表では、適応、脆弱な諸国、適応戦略としての緩和を考えるシステムが注目された。英国の代表は、この会議から持ち帰るものとして次の項目に焦点を当て、この会議を閉会した:環境及び開発を統合する観点;若者のエンパワーメント;適応を経済的なチャンスに換える。

COP 25

資金関係問題:GEFの報告及びGEFへのガイダンス:Amena Yauvoli (フィジー)を共同進行役とする非公式協議で、締約国は、共同進行役の決定書草案について意見交換をし、更なるスリム化及び短縮が必要だと指摘した。特に次に関しては意見が分かれた:共同資金(co-finance)政索に関する懸念を指摘する;GEFに対し、損失及び損害の活動支援を要請する;GEFの第8回資金補填への言及、先進国はこの議論は時期尚早と考えた。数か国の先進国は、プロジェクト全体を通し適応の主流化を続けるようGEFに要請するとの記述の削除を求め、GEFの目的は「地球環境上、有益なことの実現(the delivery of global environmental benefits)」だと指摘した。開発途上国及び数か国の先進国はこれに反対し、適応は環境に有益だと強調した。数か国の先進国は、GEFに対し、承認済みのプロジェクトでまだ資金を受けていないものがあるか、明らかにするよう求めた。

透明な資源配分システム(STAR)の最新情報に関し、開発途上国は、GEFは条約の資金メカニズムを運用する組織として、いかなる変更もCOPに連絡しなければならないと強調した。少数の開発途上国グループは、プロセス以上に、実質的な観点から、STARの適格性基準の変更を嘆いた。共同進行役は、文書草案を改定する予定であり、協議は非公式な非公式協議で続けられる予定。

CMA 2

資金関係問題:適応基金に関係する問題:Amjad Abdulla (モルディブ)を共同議長とするコンタクトグループで、締約国は、この項目の進め方について意見交換を行った。共同議長のAbdullaは、CMAは適応基金の報告書及びその付録に留意するという手順上の決定書を提案した。数か国の先進国は、この項目に関する実質的な審議を行う時間を求め、CMAは当該基金にガイダンスを提供する立場にあり、これには資金源に関するガイダンスも含まれるとの文章案を提示した。ある開発途上国グループは、CMA決定書はCMP決定書に必要な変更を加えて確かなものになる、すなわちCMP決定書はCMAにも適用されるとの文章を提案した。別な開発途上国グループは、当該基金がパリ協定にのみ役割を果たすようになるまでは、この基金の機能に関し世界銀行及びGEFとの調整を行うのはCMAではなく、CMPであると強調した。ある先進国は、CMA 3において、この基金がパリ協定にのみ役割を果たすとされた時には、CMAは基金の理事会メンバーのモダリティを検討することを提案した。少数の開発途上国グループは、この項目については、何も行動しないこと、または共同議長提案の手順上の決定書のみが必要だと考えると強調した。これらのグループは、意見の一致が見られないとして、この会議の閉会を促したが、数か国の先進国は反対した。議論は非公式に続けられる予定。

CMP 17

適応基金に関係する問題:Fiona Gilbert (オーストラリア)を共同議長とするコンタクトグループで、締約国は、適応基金に対する資金プレッジの最新の数字を記載した決定書草案をレビューした。締約国は、非公式な非公式会議での建設的な議論について報告し、理事会のメンバーシップについては合意が得られなかったと指摘した。多数の開発途上国及び先進国は、この基金がパリ協定のみに役割を果たすよう、スムーズな転換を確保する意思があると強調した。この文書は、CMPでの審議及び採択に向け送致される予定。

廊下にて

多くの者、特に午前2時半の議長のストックテイキングまで起きていた者にとっては、あまりにも短い睡眠をとった後、会場に戻ってきた参加者は、ペースの違いに直面した。会議場のホールは混雑していたが、予定表は空白で、通常の協議やコンタクトグループはなかった。残っていた交渉は、COP議長との会議や非公開の会議で行われ、他の者はこれまでの進展を振り返るに十分な時間の余裕があった。

数名のものは、SBSTA及びSBIが多数の項目でまともな合意に達せず、ただ単に議題項目を「通り抜けた(waved through)」との観測を示し、不安がっていた。あるものは、「規則16の項目(Rule 16 items)」を数え、実質的な成果の数よりも、将来の議論に回された成果、または手順上の結論書の数の方が多いと集計していた。6つの項目が、第2週の追加協議に回された。

技術的な機関が通常より遅く閉会したため、一部の熟練交渉担当者は、この新しい時間枠が最終週の交渉にどのような影響を与えるかを考えていた。「これまでは、SBsが第1週に閉会し、少なくとも1日は回復するだけの睡眠がとれた」とあるものは説明した。「新しい閣僚たちは、多数のややこしい問題と取り組む日数が、一日短くなっている」と。他の者も、同じ不安を抱き、「交渉担当者はこのプロセスでは現金化できないほどの小切手を切ったのではないか」と考えていた。ある交渉担当者は、一部では過去の失敗COPsの亡霊である「コペンハーゲン」という言葉が漂っていたとも言った。しかし、この交渉担当者は、「再度、より良い仕事をしようというモチベーションを掻き立てるには、プロセスの失敗が必要」かもしれないと考えた。

他のオブザーバーは、議題項目をSBsから切り離すのは、解決にならない可能性があるとし、人権は引き続きプロセスを横断する行き詰まりの問題となっていると指摘、ジェンダーの議論や第6条の交渉における市場ルールの審議が長引いていることも指摘した。人権問題の弁護士は、「京都から学んだことが一つあるとすると、それは人権のセーフガードが必要だということだ;緑の気候基金や世界銀行のように、後戻りはできない」と警告した。適応問題を扱う参加者は、後戻りについて、同じような懸念を抱いており「適応を主流化しなければならないと今頃議論しているとは信じられない」と嘆く者もいた。

ハイレベルセグメントが夜まで続けられる中、あるベテランのオブザーバーは、このCOPのテーマである「行動をとる時(Time for action)」を思い起こし、会議の期間は3日間しか残っていないが、「閣僚たちは金曜日までに合意できるだろうか、その合意成果は、各国政府がいかに真剣に行動をとることを考えていると実証できるだろうか?」と首を傾げていた。

Further information

Participants

Tags