Daily report for 11 December 2019
Chile/Madrid Climate Change Conference - December 2019
チリ/マドリード気候変動会議は、一連のハイレベル・イベントを続け、数件の問題は非公開で議論された。
気候の非常事態のハイレベル・イベント
イベントを開会したチリのハイレベル気候チャンピオンのGonzalo Muñozは、先週50万人がマドリードの通りを歩き、交渉から実施へシフトするよう求めた。
ポツダム研究所(Potsdam Institute for Climate Impact Research)のJohan Rockströmは、過去20年間における気候科学の「赤い糸(red thread)」は、リスクが過少評価されていることだと述べた。同氏は、2℃は惑星の限界であり、これを超えると「地球の温室化(Hothouse Earth)」が控えていると強調した。
スペインのTeresa Ribera大臣は、ルールに基づく国際社会の秩序が挑戦を受けているとし、「行うと同意したことと行っていること(what we agreed to do and what we are doing.)」のギャップが拡大していると指摘した。同氏は、「いかなるタイプの撤退(any type of withdrawal)」も受け入れることには警告し、「より多くのことをするのを恐れるものの名前を公表し、恥じさせる(naming and shaming those who fear doing more)」よう呼び掛けた。
グリーンピースのJennifer Morganは、政治指導者に対し、カーボン・バジェッドを1.5℃以下で抑えるために必要な速度と規模で、排出を削減すべく、緊急措置を設定するよう促した。
ヤング・アクティビストのGreta Thunbergは、もはや科学を放っておく時ではないと述べ、1.5℃以下にとどまるチャンスが67%あるカーボン・バジェットを8年以内に超えてしまうと指摘した。同氏は、公平性を強調し、世界の人口のうち裕福な10%が我々の排出量の半分を出していると強調し、パリ協定の採択以後も、銀行は化石燃料に1.8兆ドルを投資いていると指摘した。
コスタリカのCarlos Rodríguez大臣は、若者や先住民組織を含める非締約国利害関係者、及び締約国とのパネルディスカッションを開催、モデレーターを務めた。パネリストは、次が必要であると強調した:地方レベルの運動や行動;政府及び企業は、先住民のテリトリーについて、先住民コミュニティと公平なダイアログを確保する;パリ協定第6条ガイダンスではジェンダー及び人権に関する表現を取り入れる;「我々の子供たちの要求に応える(respond to the demands of our children)」ため、社会を「再起動する(rebooting)」。
プレ2020年行動のハイレベル・ストックテイク
モデレーターのMariana Castaño Canoは、ストックテイクの目的はプレ2020年の全体努力の理解を深めること、さらには機会や学習事項を明らかにすることだと紹介した。
COP 25議長のCarolina Schmidtは、パリ協定の実施を向上するには締約国間の信頼が重要だと強調した。同議長は、このCOPの期間中、達成されたもの、そして野心におけるギャップを適切な形で認識するため、COP議長として、努力するつもりだと発言した。
UNFCCC事務局次長のOvais Sarmadは、前進すること、プレ2020年の野心を引き上げ、ポスト2020年の行動の野心を引き上げることが重要だと強調した。同次長は、このプロセスでの信頼が必要だと強調し、要素は既に存在しており、「何が残っているかというと野心の引き上げだ(what is left is to raise ambition)」と述べた。
気候チャンピオンのMuñozは、グローバル気候行動のマラケシュ・パートナーシップは次のことにより野心の引き上げを助けていると、説明した:グローバル気候行動年鑑、これは過去の達成事項を提示する;グローバル気候行動ポータル、これは現行のイニシアティブを伝える;気候行動経路(Climate Action Pathways)、これは非国家の行動の将来の軌跡を示す。
緩和行動の閣僚級ストックテイク:英国のIan Duncan大臣は、全てのものがより多くを行うよう求め、英国は、2050年までにネット・ゼロ目標を達成する法律を作り、緑の気候基金(GCF)に対するコミットメントを倍増し、適応及び緩和が最も必要なところへの資金供与を支援すると報告した。
インドネシアのNur Masripatin大臣は、自国の「自主的なプレ2020年コミットメント(voluntary pre-2020 commitment)」を改善したと述べ、この中には化石燃料補助金の改革、バイオ・ディーゼル・プログラムが含まれると述べた。さらに同大臣は、国家決定貢献(NDCs)の実施では、全ての行動者の参加が重要だと強調した。
フロアからの意見発表で、FARMERSは、開発途上国、並びに特定の課題に直面する小規模農業従事者に注目するよう求めた。YOUNGOsは、次を求めた:NDCsをパリ協定記載の世界目標に沿うものにする;若者主導のプロジェクトのための気候資金;ガバナンスの全レベルにおける正規のストックテイク及び排出量の計算。
フィリピンは、開発途上国の適応ニーズ支援としては1千米ドルの気候資金目標は「極めて不適切(grossly inadequate)」だと述べた。中国は、プレ2020年の実施上のギャップを埋める制度を求め、そうすることで、ギャップがポスト2020年の期間に繰り越さず、開発途上国に負担が加わることもないと述べた。
支援に関する閣僚級ストックテイク:支援の受理国及び提供国の閣僚は、気候行動及び支援を強化する方法、並びに締約国の努力について議論した。
フィンランドのKrista Mikkonen大臣は、EUはその歴史的な責任及び指導的役割を真剣に果たしていると強調した。フィンランドがEU議長国であることから、同大臣は、次を強調した:EUによる気候資金供与の体系的な増額、これによりEUは、開発途上国に対する最大の公的資金供与国になった;気候資金へのアクセスの問題対応を支援し、イノベーションを支援する。
ルワンダのJeanne D’Arc Mujawamariya大臣は、全ての国、特に排出量の多い国に対し、野心を引き上げ、資金約束を増額し、1千億米ドルの資金集合目標達成を要請した。同大臣は、ルワンダは2020年3月にNDCを改定し、一層野心的なものにする予定だと発表した。
セントルシアのGale Rigobert大臣は、IPCCの1.5℃特別報告書では気候変動のリスクが予想より悪いとし、2030年のかなり前から急速な行動をとる必要があることを示していると指摘した。同大臣は、2019年国連気候サミットでは数名の参加者が2025年までに1兆米ドルを上回る気候資金を提供するという集合目標を求めたと想起した。
インドのRavi Shankar Prasadは、プレ2020年の野心の欠如は「部屋の中のゾウ(the elephant in the room)」のようだと指摘した。同代表は、GCFの第1回資金補填プレッジ、並びに開発途上国に対する公的資金約束の合計額は「何兆ドルにものぼる必要な金額と比べ、過少なままだ(remain too small compared to what is required, which runs in the trillions)」と悲嘆した。
フランスのAlexandra Bonnetは、2050年までにカーボン・ニュートラリティを達成するというフランスのコミットメントに焦点を当てた。同代表は、フランスは50億€を動員し、GCFへの寄付額を倍増したと強調し、これは信頼を構築するカギになると強調した。
フロアからの意見発表で、締約国及び利害関係者は、課題を明らかにし、解決策を提案した。NDCの実施に関し、南アジア協力的環境プログラム(SOUTH ASIA CO-OPERATIVE ENVIRONMENT PROGRAMME)は、キャパシティビルディングが重要な推進役だと強調し、民間部門の参画を得る方法についてアイデアが必要だと指摘した。
地方政府及び市町村当局(LOCAL GOVERNMENTS AND MUNICIPAL AUTHORITIES)は、COP 26の成功はNDCの作成に都市が参加するかどうかにかかっているだろうと述べた。
マレーシア、並びに環境NGOsの立場で発言したClimate Justice Now! (CJN!)及び気候行動ネットワーク(CAN)は、プレ2020年野心及び実施のギャップを閉じるには具体的な制度が必要だと強調し、CJN!と共に、作業計画への支持を表明し、CANは、このプログラムは長期世界目標の第2回定期レビューの一部となることができ、グローバルストックテイクにインプットを提供すると述べた。
グローバル気候行動ハイレベル・イベント
COP 25議長のSchmidtは、この会合を開会し、全ての行動者は「解決策に参加し、より良い世界への希望を持てるターニングポイントに達するため貢献する(be part of the solution and contribute to reaching a turning point that enables us to hope for a better world)」必要があると強調した。
気候に関する特命全権大使でCOP24議長のArtur Lorkowskiは、各国政府は政治的指導力を発揮し、長期ビジョンを示し、気候行動を推進する確固とした規制を採択すべきだと強調した。
国連事務総長のAntónio Guterresは、気候行動をステップアップする優先策を説明、特に次を紹介した:気候変動の社会面に対応する;石炭火力発電能力を削減し、化石燃料補助金も削減する;資金フローを持続可能な投資の方向に転換する。
気候行動ダイアログ:Global Partnership of Forest and Landscape RestorationのMusonda Mumbaは、サンタンデール銀行(Banco Santander)のAna Patricia Botín、及びアイルランドの前大統領のMary Robinsonとの議論のモデレーターを務めた。Botínは、サンタンデール銀行は2020年にカーボン・ニュートラルになる予定だと発表した。Robinsonは、他の銀行部門は持続可能でないままだと強調し、更なる指導力の発揮を求めた。
宇宙から地球へのメッセージ:スペインのPedro Duque大臣は、国際宇宙ステーションの現在の司令官Luca ParmitanoとGuterres事務総長との対話を開催した。Parmitanoは、ビデオリンクを使って宇宙から呼びかけ、指導者や政治家からの「ビジョン(vision)」を求め、この惑星が「信じられないほど壊れやすい(incredible fragility)」ことの目撃者になっていると述べた。
気候の非常事態の物語:モロッコのChefchaouen市のMohamed Sefiani市長は、1万を超える都市及び地方政府がGlobal Covenant of Mayorsの下での行動を約束していると述べ、NDCsを「ローカライズ(localize)」し、気候変動プロジェクトを実施するには、追加支援が必要だと指摘した。
サモアの若者代表のBrianna Frueanは、祖母の島が失われる恐怖について話し、その美しさが保全に向けた希望を掻き立ててほしいと表明した。
Vanke Co.(中国のディベロッパー)のWang Shiは、自分の不動産会社ではいかにして材木の使用量及び排出量の削減に役立つ新しい建設技術を採用したか、その情報を共有した。
プレ2020年地球気候行動の最新情報:気候チャンピオンのMuñozは、2019年の行動アジェンダの結果について情報を共有した、この中には次が含まれた:3回の地域気候ウィーク;技術検証プロセス(Technical Examination Process)から政策立案者に向けた提案;チリの気候野心連合(Climate Ambition Alliance)、これは国連事務総長の気候行動サミットで発足、66か国、10地域、93のビジネス、12の投資家が、2050年までまたはそれ以前のネット・ゼロ排出達成を約束した。
パネルディスカッションで、地方政府、ビジネス、金融部門代表は、特に次の必要性に注目した:締約国はNDCの改定の際、地方政府の参加を得る;「利益だけでなく、人々及び惑星に正しい影響を与えること(not just on profit, but on having the right impact on people and the planet)」に焦点を当てるという企業の変革;1.5℃目標に沿う投資ポートフォリオ。
数か国は、地球気候行動のマラケシュ・パートナーシップを2020年以後まで延長し、特に約束(committed)の実施に関する透明性を提供するよう求めた。
閉会:COP 25議長は、39か国がその将来のNDCsに海洋を取り入れると約束しており、国連気候行動サミットの「適応及びリジリエンスに関する行動宣言(Call for Action on Adaptation and Resilience)」イニシアティブは、今や地球気候アジェンダの新しい一員となり、118か国が貢献していると発表した。
COP 26議長に指名されている英国のClaire O’Neillは、2020年は「行動の年(the year of action)」であったと称した。同次期議長は、アジェンダを形作る上での非締約国利害関係者の重要性を指摘し、全ての行動者に対し、COP 26への道筋にある気候野心連合(Climate Ambition Alliance)に加わるよう称した。
CMA 2
資金関係問題:適応基金:コンタクトグループ共同議長のFiona Gilbert (オーストラリア)は、適応基金は今週、スイスから1500万米ドル、ドイツから3200万米ドルの新しい資金プレッジを受けたことを告げた。
コンタクトグループは、締約国主導の非公式協議の結果報告を聴いた。パレスチナは、G-77/中国の立場で発言し、今の時点では行動はとらないことを支持するとの同グループの意見を再度述べた。EUは、適応基金がパリ協定で役割を果たすこと、このためCMAからガイダンスを受けるべきことを認める必要があると強調した。締約国は、今後の進め方で合意しなかった。共同議長は、意見の一致も結論書も見出すことができなかったとCOPに報告する予定である。
廊下にて
水曜日、「2つのCOPの物語(tale of two COPs)」が曝露され、楽観主義と怒りが見られた。プレナリーのステージでは、閣僚たちや他の高官が、緩和努力及び開発途上国への支援について話しをした。交渉担当者は、第6条の議論から離れ、収入の一部及び京都クレジットの繰り越しに焦点を当て、「これまでの予想よりうまくいっている(it’s going better than expected so far)」と説明した。
しかし、会場の回廊や外の街路では、怒りが巻き起こっていた。市民団体は、このプロセスではかつて見たことがないほどの大規模な抗議活動や座り込みを行い、会議の進行を妨害した。これら市民団体は、先進国に対し、「ステップアップし、支払いをする(step up and pay up)」よう求め、プレ2020年の野心の「正直なストックテイク(honest stocktake)」を求める一部の参加者に同調、あるものは、附属書I締約国は1990年以後排出量をほとんど減らしていないと指摘した。
ハイレベル・ストックテイクに参加した一部のものは、「プレ2020年の時間(pre-2020 times)」が3週間しか残っていないことから、過去のこととして忘れる用意ができていた。しかし他の者は、2020年以後もプレ2020年を机上におくのが前へ進む唯一の方法であろうと、プレ2020年のコミットメントの実施におけるギャップを特定する作業計画を求めていた。
交渉は遅々として進んでいないが、町のcacerolazos(叩いての抗議)は行動を求めていた。パリが、気候体制は「知恵の時代(age of wisdom)」に入ったとの希望を与えたとすると、抗議行動は「愚か者の時代(the age of foolishness)」の到来を告げている。