Daily report for 17 May 2016
Bonn Climate Change Conference - May 2016
火曜午前、ボン気候変動会議では、APA及びSBSTA非公式協議が開幕。午後からは、SBSTA及びSBIのコンタクトグループと非公式協議が開催し、SBI及びSBSTA全体会合(プレナリー)も再開された。また、CDMプロジェクト活動としての適格性を潜在的に有する再植林活動の種別に関するSBSTAワークショップも午後に行われた。
APA:
組織上の問題: COP 21/CMP 11議長のLaurence TubianaがAPA会合を開会。Sarah Baashan (サウジアラビア) 及び Jo Tyndall (ニュージーランド)をAPA共同議長として選出した。
タイは、G-77/中国の立場から、APAに対してあらゆる問題について同等に配慮するよう求めるとともに、透明性枠組みにおける途上国への柔軟性を求めた。
NDCs、グローバル・ストックテイク、透明性等におけるルール及びガイダンス重視を求めつつ、オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場から、今後の作業の進め方について概念的な議論を行うよう提案した。
スイスは、EIGの立場から、会合によりAPAに託された課題への締約国の理解は向上するはずだとし、会合後に技術面の意見書提出と共同議長による“リフレクション・ノート”の作成を提案した。EUは、宿題についての取組みを見直すためのストックテイク会合(点検会合)を実施するという案を歓迎した。
モルディブは、AOSISの立場から、気候行動を実施するための資金を評価するためSIDS向けの手続きを簡素化するよう求めた。
サウジアラビアは、アラブ・グループの立場から、締約国主体の包含的なプロセスに向けたグループの期待感を示した。
コロンビアは、AILACの立場から、環境十全性や人権の保護、NDCsを実行するための途上国向け支援を求めた。
ベネズエラは、米州ボリバル同盟 (ALBA)の立場から、気候変動は持続可能な開発のための2030アジェンダの実施を制限すると述べた。
マリは、アフリカン・グループの立場から、APAは包括的であるべきで、パリ協定で実現された“デリケート”なバランスを反映させなければならないと強調した上で、柔軟性や支援を含め、行動や支援の透明性に関するモダリティの基礎的要素について主張した。
コンゴ民主共和国は、LDCsの立場から、アジェンダについてすべての問題は等しく、バランスをもって扱うと保証するよう求めた。
労働組合のNGO団体 (TUNGOs) は、グローバル・ストックテイクの一つの要素として、公正なる移行を含めるよう求めた。
女性及びジェンダーに関する団体は、すべての政策分野において気候への即応性を確保するべく今後の作業を進めるため、ジェンダーに関するリマ作業計画を活用するよう要請した。
若者を代表するYOUNGOsは、「若い世代が今この場で手を差しのべている」と述べ、難しい決断を下す際は将来の世代のことを配慮するよう各国に求めた。
企業・産業代表のBINGOsは、2030年アジェンダとの相乗効果を呼びかけ、COP 21以降の企業への支援という“過去に前例のないメッセージ”を実現するための取組みを求めた。
気候行動ネットワーク(CAN)は、これから必要なのは、野心の引上げ、1000億米ドルの誓約に向けたロードマップ、プレ2020年の数値目標の強化、損失・被害に関する支援での合意等であると強調した。
クライメート・ジャスティス・ナウ!(CJN!)は、“パリ精神に忠実であれ”と強調し、ジオエンジニアリングは“誤った解決策”と称した。
先住民団体は、NDCsに関する指針には、先住民の完全かつ効果的な参加を担保し、社会的セーフガードを盛り込むべきだと述べた。
その後、APAは議題に関する追加協議を行うために一時中断した。
SBSTA
プレナリーが午後から再開し、開幕ステートメント(声明)発表が行われた。
タイは、G-77/中国の立場から、農業は途上国の社会経済開発における“屋台骨”であるとして、SBSTAの農業関連の作業について強調した。
メキシコは、環境十全性グループ(EIG)の立場から、グローバル・ストックテイクに対するIPCCの貢献に関する検討及びナイロビ作業計画の評価への期待について述べた。
技術の開発・移転の役割を強調しつつ、EUは、パリ協定の技術枠組みが追加的な制度的アレンジを要するものであってはならないと述べた。
パナマは、熱帯雨林連合(CfRN)の立場から、REDD+は気候変動との闘いにおける重要なメカニズムの一つであると強調し、モルディブ(AOSIS)及びオーストラリア(アンブレラ・グループ)とともに、環境十全性を確保するためのパリ協定の下での市場型メカニズムの設計を求めた。
マリは、アフリカン・グループの立場から、UNFCCCとIPCCが評価報告書のサイクルとグローバル・ストックテイクのサイクルを調整することが重要だと強調した。
ボリビアは、ALBAの立場から、非市場型メカニズムを含め、第6条 (協力的行動)のすべての部分を検討する必要があると強調した。
コロンビアは、AILACの立場から、グローバル・ストックテイク及び資金源のアカウンティングに関する指針についてのIPCCの情報提供のありかたを特定すること等によって、パリの成果で実現されたバランスを維持すべきだと強調した。
地球気候観測システム(GCOS) は、GCOS実施計画のレビューを行うことにより、GCOSの作業に貢献するよう締約国に招請した。
世界気候研究計画(WCRP) は、成功する気候政策の策定に向けた科学の役割を強調し、健全なる分析と予測の提供への取組みを示した。
国際民間航空機関 (ICAO) は、航空部門を利用して、他の部門の行動に資金提供することへの懸念を示した。
国際海事機関 (IMO) は、燃料消費データベース構築を含め、排出削減のために講じた取組みについて概要を示した。
研究・独立系NGOs (RINGOs)は、緩和と適応には異なるスキルセットが必要であると強調し、物理科学者と同じように社会科学及び法律専門の学者が必要とされていることを指摘した。
気候行動ネットワーク(CAN)は、現在のINDCsは“完全に不十分”であるとして、2018年の促進的ダイアログ(対話)が、科学と衡平性に沿ったNDCsを点検・修正・再提出するための重要な機会になると述べた。
CJN!は、新たな市場創設を糾弾し、先進国による公平な分け前以上の大気圏利用を許容するオフセットは受け入れられないと述べた。
先住民は、パリ協定の実施における全ての局面で先住民の専門知識が生かせると強調し、森林の炭素以外の便益を考慮するよう求めた。
バンカー燃料: EUは、“パリの精神をICAOやIMOへ持ち込む”よう、プレナリーの場で締約国に奨励した。この議題項目を検討すべく、SBSTAプレナリーが再開予定。
CDMプロジェクト活動としての適格性を潜在的に有する再植林活動の種別に関するワークショップ :ワークショップでの討議内容は次の通り:再植林活動の経験;再植林活動の種別; CDMの下で潜在的な適格性を有する植物・管理活動の種別。また、再植林の概念が森林の定義の中で該当する分野によって分類できるのではないかとの示唆があり、その場合は新規植林及び再植林に関する既存の指針が利用でき、そうでない場合は新たな指針が必要になるとの意見があがった。議論の中で、再植林が多くの社会経済面の共同便益をもたらす方法について、いくつかの国から意見が出された一方、再植林活動の種別か機能のどちらによって分類すべきか、再植林の分類法に関する提案も寄せられた。
パリ協定第6条 (協力的行動)に関する諸問題: 第6条2項ガイダンス (国際移転した緩和の成果): 非公式協議では、第6条に基づく3つの作業計画の間のバランスを取る必要があるとの意見や、締約国の意見書提出を通じた作業計画の精緻化、オプションに関するテクニカルペーパーや技術ワークショップを含めた技術的な作業が必要との意見が出された。
第6条4項に関するガイダンス(緩和及び持続可能な開発を支援するためのメカニズム): メカニズムの範囲や国家以外の主体の役割、パリ協定の他の部分との関係等についての共通理解が必要との意見が締約国から出された。
第6条8項に関するガイダンス(非市場型アプローチに向けた枠組み):特に、作業計画、用語の明確さ、草案グループ、決定書テキストの要素等の必要性について議論が行われた。5月18日(水)に協議再開の予定。
SBI
SBIプレナリーは午後に再開された。
オーストラリアは、アンブレラ・グループの立場から、他の多くの国とともに、パリで合意済みの目的を達成するためのSBIの重要な作業について強調した。
EUは、キャパシティビルディングに関するパリ委員会のモダリティ策定や長期世界目標(LTGG)についての次回定期点検が重要である旨を強調した。
タイは、G-77/中国の立場から、事務局が保守管理を行い公開されているNDC登録簿の中に適応に関する報告を記録するよう求めた。韓国は、EIGの立場から、アクセスしやすく、シンプルなNDC登録簿づくりを求め、マリ(アフリカン・グループ)とともに、登録簿の目的・機能・特徴を明確にする必要があると強調した。
モルディブは、AOSISの立場から、2018年促進的ダイアログへのインプットに関する議論を行うよう求めた。コンゴ民主共和国は、LDCsの立場から、パリから生じた任務遂行のためのロードマップづくりを要請した。
エクアドルは、ALBAの立場から、適応基金の第3回レビューが資金供与額の増加につながるよう期待すると述べた。コスタリカは、AILACの立場から、適応や損失・被害に対応することが重要であると強調した。
世界気象機関 (WMO) は、途上国支援におけるWMOの支援業務の拡充が必要であると強調した。
TUNGOsは、公正な移行のための作業計画について積極的に意見を出したいとの意向を示した。
女性とジェンダー代表は、技術移転は女性にとってアクセスしやすいものであるべきだと強調した。YOUNGOは、NDCsの実現を確保するためには一般市民の参画を重視すべきだと強調した。
CANは、先進国に対し、COP 22での資金ロードマップ提出を求めた。
CJN! は“公共政策づくり”に対する民間部門の統制強化に懸念を示した。
先住民は、伝統知識や現地の知識系、先住民知識に関する技術専門家ワークショップを求めた。
政府間会合:コンタクトグループでは、オブザーバーの役割を含めたCOP 22/CMP 12や政府間プロセスの組織構成について話合いが行われた。オブザーバーの参加強化論について多くが支持を表明した。BINGOsは、一般的に認められた、正規のインタフェースを求めた。CANは意見書提出の機会を増やすことを提案した。モロッコは、次期COP/CMP議長国として、本件に関する取組みを継続すると請け合った。今後の道筋について、EUは、 会期中ワークショップの開催や意見書提出、ベストプラクティスの検証を提案した。5月18日(水)に協議を続ける。
事務・資金・制度上の問題: 資金及び予算の問題: SBIプレナリーでは、関係者間の協議の上、Chruszczow議長が結論書草案を作成することで合意した。
事務局の機能や業務のレビュー継続: この小項目についてはSBI 46で検討することでSBIが合意した。
京都議定書及びUNFCCCに基づく特権及び免責事項: Peter Horne (オーストラリア) がこの小項目ともに非公式協議の議長を行うことでSBIが合意した。
SBSTA/SBI
対応措置:コンタクトグループでは、G-77/中国は、協力強化の分野として、技術協力の促進; 途上国の優先課題に配慮したモデリング及び評価面での協力; 研究機関とのパートナーシップ;公正な移行等を提案した。AOSISは“行動志向重視”を求めた。南アフリカは、脆弱性を特定するよう求めた。EUは、特に参加とインプットを最大化するための実践的かつ包括的アプローチならびに実質的な議論から特別技術専門家会合の開催を求める声につながるような双方向的プロセスを求めた。
次回LTGG定期点検の範囲:コンタクトグループでは、重複作業の防止、グローバル・ストックテイクのモダリティに関する議論が決着した後で次回のレビュー範囲について議論することで殆どの締約国が合意した。議論を再開する場をSB 46、あるいはSB 48とすべきか話合いが行われた。5月19日(木)の会合までに結論書草案が作成される予定。
廊下にて
二日目のボン交渉。パリ協定特別作業部会(APA)の初回会合で口火を切ったプレナリー会場は満席となり、APAの初代共同議長の選出から全体会合が始まった。両議長として女性2名が選出されたことを特に参加者は好意的に受け止め、歓迎の意を示した。そんな中でも、各国の交渉が旧弊に陥り、議題の細かい部分に関する見解の不一致から政治的な議論で凝り固まってしまうと懸念する向きも一部にあった。ある政府代表は、前日に見られたSBI議題に関する不協和音とAPA議題をめぐる現在の行き詰まりの類似性を指摘する。いずれも緩和と適応が平等に扱われるかという一部の締約国の不安を反映したものだという見方だ。このような初期の課題に新しい共同議長が立ち上がり、プレナリーで示された連帯意識をもって“議題問題”を解決できるよう望むと参加者数名が話していた。
(IGES-GISPRI仮訳)