Daily report for 16 November 2016
Marrakech Climate Change Conference - November 2016
11月16日水曜日、国連気候変動会議はモロッコのマラケシュで続けられた。午前中、野心引き上げと支援に関する促進ダイアログの第2部が開催された。午後、気候資金に関する第2回隔年ハイレベルダイアログが開催された。
COP及びCMPの下では、コンタクトグループと非公式協議が一日を通して開催され、さらに合同のハイレベル・セグメントも続けられた。COPの下ではCOP 22議長が非公式協議を開催、パリ協定の発効及びCMAの開催について協議した。夕方、CMAプレナリーが開催され、続いてCMAの下での非公式協議が行われ、夜遅くまで続いた。
合同ハイレベル・セグメントのウェブキャストは次を参照:
http://unfccc.cloud.streamworld.de/webcast/joint-high-level-segment-5th-meeting-of-the-cop-an
http://unfccc.cloud.streamworld.de/webcast/joint-high-level-segment-6th-meeting-of-the-cop-an.
CMAプレナリー
作業構成書: 夕方、締約国は、議題書及び作業構成書(FCCC/PA/CMA/2016/1)を採択した。ボリビアはLMDCsの立場で発言し、次のように指摘し、これを記録に残すよう求めた: 同グループは、議題項目3(パリ協定に関係する問題)の脚注を含めて行われる議論は、パリ協定2条(持続可能な開発及び貧困撲滅努力の観点において、気候変動の脅威に対する世界的な対応を強化する)及び3条(NDCsを時間と共に前進させるとともに、開発途上国を支援する必要性を認識する)の観点に基づき、行われると理解する。
批准状況: UNFCCC事務局長のPatricia Espinosaは、2016年11月16日現在、110の条約締約国がパリ協定の批准書、受諾書、承認書、もしくは加入書を寄託しており、これは条約締約国の半分以上を代表していると報告した。締約国はこの報告に留意した。
開会ステートメント: 締約国は、CMA 1の開会で国際社会にプラスのサインを送ることを歓迎した。
タイはG-77/中国の立場で発言し、「だれも取り残されていない」ことを確かめ必要があると強調する一方、パリ協定の実施はこれを批准した締約国にのみ適用されると指摘した。
EUは、CMA 1は「全世界的な気候協定に向け努力してきた我々、そして気候変動の現実と共に生きているものたち」にとり、歴史的な瞬間であると強調した。同代表は、パリ協定は「試合の転機(game changer)」であるとし、その規則に則った前進を続けるよう求めた。
オーストラリアはアンブレラグループの立場で発言し、COP 22での「実際の進展(real progress)」は「パリの精神が強く残っている(the spirit of Paris remains strong)」ことを実証するものだと述べた。
ボリビアはLMDCsの立場で発言し、「最近の政治的な出来事にも拘わらず(despite recent political events)」、パリ協定の締約国がその義務を実施するものと期待すると述べた。同代表は、NDCsの範囲は緩和と適応、MOIで構成されており、パリ協定は条約の原則の観点から解釈されるべきだと強調した。
サウジアラビアはアラブグループの立場で発言し、協力はCBDR及び歴史的責任に基づくものでなければならず、気候変動及び対応措置のマイナスの影響に焦点を当てるべきだと述べた。
メキシコはEIGの立場で発言し、気候行動は正しい社会政策であり、倫理上絶対不可欠で、経済的合理性もあることから、気候行動の動きを止めることはできないと述べた。
モルディブはAOSISの立場で発言し、CMA 1は祝うものではあろうが、それで満足するものではないと警告し、「国際社会が個別の利益ではなく全体の福利を優先している(the international community puts its collective well-being over its individual interest)」時のモーメンタムに則り、一層進めていくよう求めた。
コスタリカはAILACの立場で発言し、パリ協定の要求事項、特に次の項目の運用開始を強調した: 全世界の参加; 適切な政策による実施; 利害関係者の広範な参加の奨励; MOIでの協力。
コンゴ民主共和国はLDCsの立場で発言し、2018年の明確な作業計画を採択し、採択の準備ができている決定書を採択するため、COP 23でCMAを再開することを支持した。
マリはアフリカングループの立場で発言し、COP議長への支持を表明した。
CMA 1議長のMezouarは、世界は現在の気候行動のモーメンタムを確保する必要があると強調し、参加者に対し、共通の信念を持ち行動に向け動くよう求めた。同議長は、CMAの下での非公式協議が直ちに開催されると通知した。
野心の強化と支援に関する促進ダイアログ
COP22議長のMezouarは、この会合を開会した。COP22議長のAziz Mekouarは、第1回会合の成果について報告、更なる野心が必要だが進展していることは明らかだと述べた。
UNEPの次席専務理事のIbrahim Thiawは、現在のプレッジはパリ協定の目標達成には不十分であると強調したが、「排出曲線を曲げる(bend the emissions curve)」機会はあると述べた。
野心に関し、パネリストは次の項目を議論した: 成功(する)要素; 直近の国内でのステップ; 協力メカニズム。成功要素に関し、EUは、カンクンでの緩和プレッジを上回っていると述べた。インドネシア及びインドは、ドーハ改定文書の批准を促した。カナダは、非国家行動者の約束を強調した。
国内のステップに関し、参加者は、炭素価格化、REDD+、キャパシティ・ビルディングに注目した。協力に関し、EUとインドは、炭素市場を強調した。インドネシアは、資金メカニズム同士の協調を求め、モルディブは、アクセスを容易にするよう促した。インドは、技術面の障壁削減を強調した。カナダは、気候と大気浄化の連合(Climate and Clean Air Coalition)に注目した。
MOIに関し、GCFの暫定専務理事のJavier Manzanaresは、27件のプロジェクト及びプログラムに注目、現地の投資額に対し推計で94億米ドルがつぎ込まれると述べた。
GEFのCEOのNaoko Ishiiは、透明性キャパシティ・ビルディング・イニシアティブ(CBIT)に対し、寄付者から5千万米ドルを超えるプレッジがあったとし、コスタリカ、ケニア、南アフリカでの実施プロジェクトが開始されると発表した。
パネルディスカッションで、米国のJonathan Pershingは、MOIの規模拡大に対する資金投入比率の引き上げを促した。ブラジルのAdriano Santhiago de Oliveiraは、自国は森林伐採への取り組みを成功させたと指摘し、適切なMOIがあれば「それをより多く、より良く、より早く(more, better and faster)」できたと述べた。中国のXie Zhenhuaは、MOIの「ユニラテラルな」計算への疑念を表明し、全ての締約国の間でこの問題を議論する必要があると強調した。
気候資金に関する第2回隔年ハイレベル閣僚ダイアログ
開会のスピーチでは、生活と社会を守るためには、資金を増加させるだけでなく、何兆米ドルも動員する必要があることが強調され、気候のリスク保険に関する予測、吸収、改革イニシアティブに焦点が当てられた。
気候行動のための金融政策: 基調講演者は次の点を求めた: 支援を最もリスクが大きい国に振り向ける; 2020年まで毎年1千億米ドルという先進国の約束の実現; 多国間開発銀行は、次の10年間で、持続可能な、耐久力のあるインフラの整備に向けた融資額を4倍にするとの保証。さらに参加者は、融資に保証手段を付け、民間資金の「集中(crowd-in)」を図る努力、さらには財政政策によるグリーンな開発の促進についても聴いた。
ハイレベルのパネリストは、G20における「新しい資金モデル(a new financing model)」に向けた進展、財務閣僚の気候変動との戦いを支援するイニシアティブ、他の開発優先策の達成も確保する必要性、県や省レベルの気候行動について説明した。
気候資金の規模拡大とその分野の拡大: ザンビア大統領のEdgar Lunguは、LDCsは締約国がこれまで適応資金の数量目標で合意できなかったことを遺憾に思うと述べた。
基調講演者は、次の点に焦点を当てた: 開発途上国に対する公共資金の流れは2012年から2013年で平均410億米ドルであった; 1千億米ドルに向け最近発表されたロードマップは、先進国がこの目標を達成する、またはそれを超える道筋にあることを示しているが、達成しないリスクも残っている; 各国政府は、民間の投資を転換するため、気候のリスク及び気候の機会に関する情報提供構造を強化すべきである; 都市、食糧安全保障、生態系サービスは適応措置にとり重要な分野である; 各国はNAPの策定に関し、GEFから3百万米ドルを受け取る資格がある。
ハイレベルなパネリストは、その後、次の問題を議論した: 適応のため民間投資を動員する上でのSIDSの課題; アフリカ開発銀行の焦点はアフリカでのエネルギー; 化石燃料に対し毎年5千億米ドルの補助金が出されている限り、グリーンへの転換は達成できない; より倫理に適った経済を達成するには「我々の意識改革(a revolution of our awareness)」が必要; これまでにないほどの額の資本が利用可能になるなど、今日でも利用可能な「万全の解決策(perfect storm of solutions)」; 投資社会との全体を網羅するダイアログの設立。
COPコンタクトグループ及び非公式協議
資金に関係する問題: GCFのCOPへの報告及びGCFへのガイダンス: コンタクトグループにおいて、共同議長のStefan Schwager (スイス)は、2回の非公式協議、及び自身が進行役を務める締約国間の草案作成会議について報告し、その結果である決定書草案を提出した。締約国は、この文書に若干の調整を加え、COPの審議に回すことで合意した。
パリ協定9.5条に基づき、締約国が提供する情報特定プロセスの開始: コンタクトグループにおいて、共同議長のOuti Honkatukia (フィンランド)は、2回の非公式協議及び自身が進行役を務める締約国間の草案作成会議について報告し、その結果である決定書草案を提出した。
フィリピンはG-77/中国の立場で発言し、この文書を歓迎し、「一からやり直さないでよい」ことを確実にするため、SB 46に合わせ開催される会合期間中のラウンドテーブルでの積極的な参加を待望していると述べ、EUもこれに同調した。締約国は、この文書に多少の調整を加え、COPでの審議に回すことで合意した。
SCFのCOPへの報告及びSCFの機能のレビュー: コンタクトグループにおいて、共同議長のDelphine Eyraud (フランス)は、非公式協議及び自身が進行役を務める締約国間の草案作成会議について報告し、その結果である決定書草案を提出した。
締約国は、SCFに対し、支援のMRVに関するSCFの機能を発揮するにあたり、並びに現在の作業計画の下でその機能を発揮するにあたっては、関連の利害関係者及び専門家と協力し、条約の下で現在進行中の作業、及びパリ協定の下で予見される追加行動を考慮に入れるよう要請するとのパラグラフに関し、合意するに至った。
SCFは、その2017年の作業計画に森林関係の配慮に対する資金供与を盛り込むと再度記述するパラグラフでは、意見が分かれた。あるグループは、決定書16/CP.21 (総合的で持続可能な森林管理の代替政策手法)への言及を求めた。他の締約国数ヶ国は、このパラグラフの削除を提案した。共同議長は、括弧書きの文書をCOP議長職に回した。
GEFのCOPへの報告及びGEFへのガイダンス: コンタクトグループにおいて、締約国は、決定書草案の数ヶ所のパラグラフについて合意に至った。この中には、GEFは第7回のGEF追加資金募集に関係する審議において、パリ協定の発効を考慮に入れる必要があると強調するパラグラフも含まれた。
締約国は、GEF-6の資金募集で予想される不足額に留意し、GEFに対し、適切かつ必要な場合は、関連のGEF-6プログラムの方向性を目指し、開発途上国へのGEFの援助不足という影響結果を最小限に抑える努力を続けるよう要請するパラグラフについて合意した。
さらに締約国は、GEFに対し、LDCFの運用を委託された資金メカニズム運用機関として、プロジェクト提案の開発に関するLDCsの能力開発努力を強化し続け、潜在的可能性がある資金源を特定し、各国の長期的な国内制度整備能力の強化に焦点を当てるよう要請するパラグラフでも合意した。
締約国は、数件の追加分では意見が対立した。この中には、「CBITへの支援は、第7回資金募集に含められる(the support for the CBIT will be included in the seventh replenishment)」ことを確保するとの文章の後に、「追加資金を予備費とする(as additional resources to be set aside)」を加えるという案も含まれた。
参加者は、GEFに対し、特にNCs及びBURs作成のため供与される資金援助に関する情報を、年次報告書において提供し続けるよう要請するパラグラフについて議論し、締約国は次の項目の表現方法で意見が異なった: 「非附属書I締約国(non-Annex I parties)」、「開発途上締約国(developing country parties)」、もしくは資金供与を受ける資格を有する締約国(parties eligible for funding」。
このパラグラフ及び他のパラグラフを括弧に入れた上、共同議長はこの文書を更なるガイダンスのため、COP議長職に回した。
資金メカニズムの第6回レビュー: コンタクトグループにおいて、共同議長のGeorg Børsting (ノルウェー)は、スリム化された決定書草案を提出した。締約国は、次の通り合意した: ガイドラインに関する文章案では、1か所の多少の追加分を受け入れ、他の全ての追加分を削除する; 決定書の手順上の部分; 決定書草案をCOPに回す。
長期気候資金: コンタクトグループにおいて、共同議長のAndres Mogro (エクアドル)は、共同議長(複数)はCOP議長職に対し、この小項目での交渉の状況に関する情報を伝える、これには締約国の意見やアイデアを反映させる決定書草案の最新版を含めると発表した。
技術開発及び移転: 技術メカニズムと条約の資金メカニズムとのリンク: 非公式協議において、共同進行役のElfriede More (オーストリア)は、締約国はほぼ全ての問題で合意していると強調した。
一部の開発途上国グループは、技術メカニズムと「支援との結びつき(tied to support)」を確保するため、この議題項目を次回のCOPの議題にも入れる必要があると強調した。多数の先進国は、この議題項目の審議を終了し、会合期間中ワークショップをこれまで提案されていた4年以内ではなく、2018年の最初のSB会合において開催することを希望した。
議論の後、締約国は、GCFに対するガイダンス提供で提案されたパラグラフを削除することで合意し、この項目のCOP 24での審議継続を含め、決定書草案を送ることで合意した。
CMPコンタクトグループ及び非公式協議
CDMに関係する問題: 午前中の非公式協議で、締約国は、決定書草案の改訂版を通して審議した。「総論(general)」と題するセクションに関し、締約国は、次のパラグラフで合意できた: 2015年-2016年のCDM執行理事会の報告; これまでのCDMの進捗状況; 執行理事会に対し、決定書6/CMP.11の7項及び8項(CDMを他の用途のツールとして利用するオプションの探求、及び国際的な気候金融機関を通したCDMの資金調達オプションの探求)に対応する活動の継続を奨励する。
午後も協議が続けられた。締約国は、次の項目など、数件の問題でそれぞれの意見の隔たりが続いたことから、合意に達することはできなかった: パリ協定6条(協力的手法)の観点から見たCDMの関連性; 自主的な償却; 国際航空輸送問題; GCFへの言及; 制約的実施手法; クレジット期間の長さ。
手順上の特性などを議論した後、Karoliina Anttonen (フィンランド)は、括弧書きを削除し、「クリーンな」決定書草案をCMPの審議に回すことを提案し、締約国も同意した。
廊下にて
水曜日の朝、マラケシュ気候変動会議の参加者は暖かい天気に迎えられ、ハイレベルイベント及びより技術的な交渉の両方が行われる生産的な一日に向け、吉兆となった。審議終了がこの日のテーマであったようで、CMPでのCDMの議論、さらにはCOPでの技術と資金のリンクの議論は文書を送り出す形で終了した。
あるオブザーバーは、野心向上と支援に関する促進ダイアログの結果への失望感を表明し、「これは野心メカニズムのひとつとなるはずだった」と述べ、「2018年の促進ダイアログを効果的にする方法について考えるという大きな宿題を抱えた」と付け加えた。
閉会の空気は他でも感じられ、米国のJohn Kerry国務長官は、大勢が詰めかけたプレスルームで、公的立場では最後の気候問題COPにおける熱情的なスピーチを行い、緊急に行動する必要性を訴えた。同長官は、何人も「ただ単にイデオロギーに基づき(based solely on ideology)」、何十億の人々に代わり、行動しないことを選択する権利など持つものではないと強調した。
早くも交渉終了が近づく中、一部の問題は停滞したままであった。この中には、COPの資金に関する多数の問題が含まれた。さらに、CMA 1及びパリ協定発効準備に関する議長の協議も、速やかな結論はなかなか出てきておらず、締約国は、CMA及びCOPの決定書草案を今後の交渉の土台として用いるかどうかで合意することができなかった。締約国は、次回のCMA会合をいつ開催すべきか、パリ協定でのいわゆる「孤児になった問題(orphan issues)」を反映させる方法でも意見が一致せず、これはこの会議で出てくると期待する向きもあった「強力な祝賀のメッセージ(strong celebratory message)」に水をかける可能性があると懸念した。
今夜も涼気が流れてきて、参加者は、CMAプレナリーを再開できる前に、最終的な問題の整理を行おうとマラケシュプレナリーで肩を寄せ合い、暖をとった。CMA議長のMezouarが、「今あるものを取りまとめ、一段ギアをあげよう(consolidate what we have and step it up a gear)」と助言し、交渉担当者は、夜まで、孤児の問題や次回CMA会合の時期に関する非公式な交渉を続け、この長い夜を過ごすことで、マラケシュ会議は、金曜日に時間通り終われるのではとの希望を抱いていた。