Daily report for 15 November 2016
Marrakech Climate Change Conference - November 2016
モロッコ・マラケシュの国連気候変動会議は11月15日(水)も続けられた。午前中にSBI及びSBSTAは閉会したが、CMA開幕プレナリーが行われ、COP、CMP及びCMAの開幕セレモニーが開催された。
COP及びCMPの下で終日、コンタクトグループ会合や非公式協議が行われた。夕方からは合同ハイレベル・セグメントが続けられた。合同ハイレベル・セグメントのウェブキャストは下記サイトから閲覧可能: http://unfccc.cloud.streamworld.de/webcast/high-level-segment.
CMA開幕プレナリー
COPのMezouar議長が午前、開会宣言を行い、パリ協定の採択から1年以内に発効した今が“歴史的な好機”にあり、気候変動に対する各国のコミットメントを示す証拠であると述べた。その後、いったん休会し、11月16日(水)に再開される。
合同ハイレベル・セグメント
モロッコのMohammed VI国王が、COP 22はパリ協定の実施において“決定的な転換期”になると強調し、遵守できない決定に合意するよう各国を煽ることなく、先進国には2020年までに1000億米ドルを拠出するという公約を守り、すべての国は技術移転の促進に取り組むよう要請した。
国連のBan Ki-moon事務総長は、在任中に学んだ教訓について述べ、多国間ベースのソリューションや政治的リーダーシップの重要性や、すべての行為主体の取り組みを確保する必要性、国連が担う科学の擁護と行動に向けた人道的な道義推進の役割を強調した。
国連総会(UNGA)のPeter Thomson議長(フィジー)は、気候変動の影響はすべての国が現在感じていることであるとし、将来世代のためだけでなく、気候変動に取り組むための機運を維持していくよう求めた。
UNFCCCのPatricia Espinosa事務局長は、低炭素で気候に強靭な世界への変革のため、先住民や若者、女性、その他のグループを参画させるよう求めた。
Emerson Collectiveの創設者で代表のLaurene Powell Jobsは、地球と水、生物多様性を守るためには先住民のスチュワードシップが重要だと強調し、先住民を尊重し、同等のパートナーとして扱うよう求めた。
若者代表のMariame Mouhoub(モロッコ)は、各国の政府代表に対し、個々の違いを乗り越え、環境保護への移行だけでなく、世界で最も脆弱な人々との結束を築くよう求めた。
また、François Hollande仏大統領は、フランスが世界に範を示して対策に取り組むと強調し、パリ協定は“覆すことができない”とし、世界の政府、産業界、金融業界、NGO、市民らが様々なイニシアティブを実践し、具体的な解決策を見つけようとしていると指摘した。また、米国は気候に関する自らの公約を尊重すべきだと強調し、決意と敬意をもって、フランスが率先して米国の新大統領との対話を行うと述べた。また、“あらゆる違いがあっても、我々が共有する、わが地球によって我々は団結する”と述べた。
SBI閉会プレナリー
WIM執行委員会(ExCom)の報告: SBIでは、結論書が採択され、WIMレビューに関する決定書草案(FCCC/SB/2016/L.9) をCOPの審議に向けて勧告した。EUは、 執行委員会がその作業計画を成功裏に実施するよう願うとし、執行委の作業の“おかげで損失と被害に関する取り組みを強化できるようになった”と謝意を述べた。
会合の閉会と報告: SBIでは、会合報告書(FCCC/SBI/2016/L.25)が採択された。
SBI 議長Tomasz Chruszczowは、午前10時20分、SBI 45を閉会した。
SBSTA閉会プレナリー
WIM執行委員会の報告: SBSTAでは、結論書が採択され、COPの審議に向けて決定書草案(FCCC/SB/2016/L.8 and L.9)を勧告した。
会合の閉会と報告: 資金と収支の予算的な意味合いについて事務局から報告があり、2017年にはパリ協定6条(協力的アプローチ)に関する締約国のラウンドテーブルを開催するために49万ユーロが必要となると伝えられた。
SBSTAでは、会合報告書(FCCC/SBSTA/2016/L.18)が採択された。
SBSTA議長のCarlos Fullerが午前10時33分、SBSTA 45を閉会した。
COPコンタクトグループと非公式協議
資金に関する問題: SCF報告書とSCFの役務に関するレビュー: 共同議長の簡潔版決定書草案(streamlined draft decision text)の2つのパラグラフについて、非公式協議の議論が分かれた。
特別気候基金(SCF)の作業計画の中で代替的アプローチを考慮に入れるようSCFに要請するという提案については、これまでの決定に対する具体的な言及について数ヶ国から反対意見があがった。
また、SCFに対して、支援のMRVに関するSCFの役割の実施において、条約に基づく現行作業とパリ協定に基づき想定される更なる行動を要請するという提案については、ある締約国がパリ協定に基づく行動についての記載を削除するか“CMAの何らかの決定に則り”という一文を追加することを提案したが、多くの締約国がこれに反対した。
パリ協定9条5項に則って締約国に提供される情報を特定するプロセスの開始: 共同議長の決定書草案が非公式協議で議論された。各国の意見が分かれたのは、SB 46と連動させて進行役を置いたインセッション・ワークショップを実施することが有効か否かという問題であり、その後にCOP 23での審議に向けて事務局の概要報告書を作成するかどうかという問題であった。
今後の作業に関して、先進国の隔年報告書を含むこれまでの経験や既存の取り決めによる情報を受けるものと認識するかという点については、あるグループが、その他の情報源を参照するべきだと主張した。また、いくつかの国が事前情報と事後情報を明確に区別すべきだと強調し、後者の情報を入手することはより困難だと指摘した。非公式な議論が続けられる。
長期気候資金: 非公式協議で、共同議長の決定書草案がセクションごとに検討された。資金の拡充や事前情報、ワークショップに関するセクションについて意見が分かれた。
資金の拡充については、数グループが、“適応資金に関する何か堅牢なもの(something robust)”を見たいと強調した。さらに、“途上国のニーズと国家主導で特定された優先順位の増大に沿って、先進国に対して途上国向けの資金支援の供与を拡充するよう要請する”と記すパラグラフについては、“存在している適応報告書の中で特定されているように”という文言を追加するようあるグループが提案し、ある途上国は“資金支援”という文言を“資金源”という文言に変更するよう提案した。そのほかの国々は、パラグラフ削除を提案した。
事前情報については、“この議題小項目の議論の範疇を超える内容だ”と示唆して、このセクションの全パラグラフの削除を数ヶ国が要求した。
インセッション・ワークショップについては、ニーズだけに焦点を絞るのではなく、ニーズをプロジェクトに移行するための方策や、特定されたプロジェクトに対する資金の対応とアクセス獲得法、こうした行動を支援するために必要な規模の資金を呼び込むための環境と施策の実現法等、より具体的に言及すべきだとの提案があがった。一方で、“確実に担保できるプロジェクト”との記載に強い反対意見があがった。ごく非公式に議論が続けられる。
技術の開発・移転: 条約の技術メカニズム及び資金メカニズムのリンケージ: 非公式協議では、修正版の結論書草案に関する意見交換が行われた。
複数のパラグラフについての修正案が出たという前日の非公式協議について、ある国が報告した。修正が提案されたパラグラフは、途上国に対する利用可能な支援の活用推奨や、資金源へのアクセス、技術プロジェクト及びプログラムへのGCFの支援に対する進展についてCOPへの年次報告として報告するよう推奨することも含めたGCFへの指針提供等であった。
また、この議題項目の完結に関する新たなパラグラフ案についても報告された。
一部の途上国は、進展可能な作業分野に関して、より具体的な指針を求めた。多くの先進国が、同パラグラフは“パッケージ”として合意済みであるとし、“バランスを乱す”ことに釘を刺したが、一部の途上国がこれに反対を唱えた。
午後にはごく非公式レベルで行われた非公式協議について報告が行われた。多くの文章で良好な進展がみられたと報告されたが、いくつかの先進国が主張したように、議題項目の完結に係る最終パラグラフについては意見の相違があった。
また、この議題項目に関する決定について、①いったん審議を完了し、この議題項目に関する今後の審議は他の関連項目の下で実施するか、②今後の「第XX回の会合」で本件に関して更に検討するという合意を成立させるという2つの選択肢が検討された。非公式協議は夕方も続けられた。
CMPコンタクトグループと非公式協議
JIに関する問題: 午前の非公式協議で、共同議長Arthur Rolle (バハマ)は、これまでの非公式協議で共同議長が作成した結論書草案を取り上げたことを伝え、グループで議論を完了するよう奨励した。
JISC会合へのメンバーのオンライン参加を定足数としてカウントすると決定する文言、およびオンライン上のJISC会合に正式な会合として資格を有するものとみなす文言にすることで、グループの合意が成立した。
内容の明確化を求める声に対しては、事務局は、オンライン参加とはビデオとテレビ会議の両方から成るものだと述べた。また、ドーハ改正の発効を迅速化する目的で、批准手続きを奨励することでも締約国の合意が得られた。
その後、共同議長Dimitar Nikov (フランス)は、コンタクトグループを開き、CMPの審議に向けて決定書草案を送ることで合意が成立した。
CDMに関する問題: Hlobsile Sikhosana-Shongwe (スワジランド)及びKaroliina Anttonen (フィンランド)が非公式協議の共同進行役を務め、決定書草案のセクションに関する議論へと導いた。議論となったセクションは、全体部分、ベースライン及びモニタリングの方法論、プロジェクト活動の登録及びCERs発行、地域および地方における分布、CDM融資スキーム、CDMの作業に関する資金源等であった。代替パラグラフ案が議論されたが、その多くに括弧が残された。
適応基金に関する問題: 適応基金理事会の報告書: 非公式協議で、適応基金の資金源の予測可能性と持続可能性を高めるべく、“CDM資金源の見直しの必要性について認識する”という一締約国からの提案については、数々の国が反対した。
ある先進国グループは、代わりの選択肢として、炭素市場を活性化するため“ドーハ改正発効の必要性を認識”という文言を入れることを提案した。また、別のグループは、資金源の予測可能性と持続可能性に取り組むため、資金動員戦略を含めたAFBの取り組みを歓迎することを提案した。夕方にも議論は続けられる。
廊下にて
火曜日の朝。歴史的なパリ協定の第1回締約国会合の開会式に参加すべく、本会議場の周辺には大勢の代表団が押し寄せ、その昂奮は明らかであった。SBSTA、SBI、APAでの作業は完了し、ほとんどの議題はハイレベル・セグメント向けに除外されていたため、他の場所に出向かねばならぬ参加者は少なかった。
オランド仏大統領が「パリ協定は撤回できない」、「何も行動を起こさないと世界は破滅する」として、「フランスが主導して、断固たる決意をもって米国に要求し、米国との対話に臨む」と断言したことは、感動を求める多くの参加者を鼓舞するものだった。 とはいえ、現実主義者の参加者は、それよりも各国の閣僚らが“気合を入れ、適応基金の未来に向けた体制づくり”を行うことを望むようだった。
Bab Ighli会場をつなぐ1キロ程の大通りは壁門をずらりと飾る脊柱のような小塔が印象的だが、通りは徒歩の参加者で混雑した。一方、条約と京都議定書の屋台骨ともいうべき課題に関する交渉でも、同じように立ち往生の状況だった。
資金や京都メカニズムの交渉の歩みは遅く、特に資金の交渉参加者は“8時以降”いったい何時まで残らねばならないかを悟ると、時として苛立ち声の応酬となった。24時間以内に交渉デッドラインが迫ったことを共同進行役が強く念押しすると、「勇気と英知、不屈の精神をもって行動しよう」と訴えた国連のパンギムン事務総長の助言が皆の心に思い起こされた。