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Bangkok Climate Change Conference - September 2018
バンコク気候変動会議は、本日、タイのバンコクにある国連会議センターにて開会、2018年9月8日まで続けられる。この会議では、実施に関する補助機関の第48回会合(SBI 48-2)、及び科学的技術的助言のための補助機関の第48回会合(SBSTA 48-2)を再開、パリ協定の特別作業部会第1回会合の第6部 (APA 1-6)が開催される。
本会議への期待感
本会議の目的は、パリ協定作業計画(PAWP)の進捗を図ることであり、2015年のパリ協定の運用を可能にすべく、その詳細を詰める必要がある。PAWPは、2018年12月のポーランドでのカトヴィゼ気候変動会議(COP24)までに採択される予定であり、作業終了の期限が迫る中、締約国は、ボン気候変動会議(2018年4月30日―5月10日)において、カトヴィゼでのPAWPの「期限内の終了(timely completion)を確保するためバンコクで追加の交渉会合を開催することで合意した。
バンコクでの交渉の主な課題の中には、パリ協定の循環性及び繰り返しという特性に関係するものがある、これらの特性のため、締約国は、5年間隔で、それぞれの国家決定貢献(NDCs)を提出する、もしくは透明性及び責任(accountability)枠組の下での進捗状況に関し定期的に報告を行うほか、パリ協定の目標に向けた全体的な進捗状況を評価するため、5年ごとにグローバル・ストックテイクを開催することになる。交渉の関係では、次の問題に焦点を当てる予定:
- NDCsの明確性、透明性、理解を高める情報 (APA);
- NDCsの特性 (APA);
- NDCsの計算 (APA);
- 行動及び支援のための透明性枠組、これには温室効果ガス(GHG)排出量の報告、及び開発途上国に供与され、動員される資金援助に関する報告が含まれる (APA);
- グローバル・ストックテイクに関係する問題 (APA);
- NDCsの共通時間枠 (SBI);
- NDC登録簿のモダリティ及び手順(SBI)
バンコクで議論される予定のPAWPのテーマで他の重要なものには下記が含まれる:
- パリ協定の実施を促進し、その遵守を推進するための委員会(APA);
- 公的な干渉を通して提供され動員される資金源の計算 (SBSTA);
- 開発途上国の適応努力の認識(SBI及びSBSTA);
- 適応報告書 (APA);
- 対応措置実施の影響に関するフォーラム (SBI及びSBSTA);
- パリ協定第6条に基づく自主的な協力、これには市場ベース及び非市場ベースの手法を含める (SBSTA) 。
APA、SBSTA、SBIを取り仕切るオフィサーは、8月16日発表の合同リフレクション・ノートの中で、バンコク会議参加の締約国に対し、PAWPの全項目に関し交渉のたたき台について合意する必要があると強調し、そのようなたたき台は、明確かつスリム化したオプションを記載し、本会合の成果を速やかに決定書草案文書に置き換えるに足る詳細を示す必要があると強調した。これらオフィサーは、バンコク会合をCOP 24の前に交渉を進める「最後の機会(the last opportunity)」と称し、この目的が達成されない場合、カトヴィゼで満足の行く成果を上げられるかどうかが「危うく(in jeopardy)」なると警告する。
UNFCCCプロセスの起源
気候変動に対する国際政治の対応は、1992年、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる、この条約は、国際的な気候変動協力の法的枠組及び原則を定めたもので、「気候系に対する危険な人為的な干渉」を回避すべく、GHGsの大気濃度安定を目指す。この条約は、1994年3月21日に発効、197の締約国を有する。
UNFCCCの効果性を高める目的で、1997年12月に京都議定書が採択された。この議定書で、先進工業国及び市場経済移行国は6種のGHGsバスケットの排出削減数量目標を約束する。京都議定書は、2005年2月16日に発効、192の締約国を有する。その第1約束期間は2008年から2012年で行われた。2012年のドーハ改定書は、2013年から2020年の第2約束期間を設置した。ドーハ改定書は、144の締約国が批准した後に発効する予定である。2018年8月29日現在、115の締約国がドーハ改定書を批准している。
2015年12月、締約国はパリ協定を採択した。この協定の規定では、全ての国はNDCsを提出し、その緩和、適応、実施手段に関する全体の進展状況を、5年ごとのグローバル・ストックテイクにおいてレビューする。パリ協定は、2016年11月4日に発効、2018年9月3日現在、180の締約国がこの協定を批准した。
主要な転換点
ダーバン・マンデート:パリ協定の交渉マンデートは、2011年、南アフリカのダーバンでの国連気候変動会議において採択された。締約国は、強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム(ADP)に関する特別作業部会を発足することで合意、2015年より遅くない時期に「条約の下で、全ての締約国に適用可能な議定書、他の法的文書、もしくは法的効力を有する合意成果」を作成し、2020年に発効することをマンデートとした。加えて、ADPは、2℃目標に関するプレ2020年野心のギャップを埋める行動を探究することもマンデートとした。
リマ:2014年、ペルーのリマでの国連気候変動会議は「気候行動のリマ宣言(Lima Call for Climate Action)」を採択、これはパリ協定に向けた交渉の進展を進めた。この宣言は、交渉文書草案の要素並びに国家決定貢献約束草案(intended nationally determined contributions (INDCs))の提出及び合成のプロセスについて、その詳細を推敲するとともに、プレ2020年野心も議論した。
パリ:2015年、フランスのパリで国連気候変動会議が開催され、12月12日に、パリ協定を採択するに至った。この協定には、世界の平均気温の上昇を産業革命前の水準より2℃以下で抑えるとの世界目標が含まれ、さらに1.5℃の上昇に制限するための努力を追求することが盛り込まれる。また、気候変動の悪影響に適応するための締約国の能力向上、及び低GHG排出量で気候耐性のある開発に向けた経路に合わせ、資金フローを作ることも目指す。協定は、各国の異なる状況に鑑み、衡平性、並びに共通するが差異のある責任及びそれぞれの能力という原則を反映し、実施されることになる。
パリ協定の下で、各締約国は、5年間隔で、より野心的なNDCsを連続して報告することになる。NDCsに2025年までの時間枠が含まれる締約国は、2020年までに新しいNDCを報告することが求められ、NDC時間枠が2030年までの締約国は、2020年までに貢献量を報告する、または更新することが求められる。
パリ協定の主要な特色には、透明性枠組、及びグローバル・ストックテイクと称されるプロセスが含まれる。締約国は、このプロセスを2023年に開始し、以後5年ごとに、緩和、適応、実施方法に関する全体の進捗をレビューする。この協定には、さらに適応、資金、技術、損失と損害、遵守に関する条項も含まれる。
締約国は、パリ協定採択時に、PAWPを立ち上げ、APA、SBI、SBSTAによるものも含め、協定の運用細則を作成することとした。締約国は、2018年に、パリ協定の長期目標に向けた全体の進捗状況を把握する促進ダイアログを開催することで合意した。このプロセスは、現在、タラノア・ダイアログと称される。
さらに、締約国は、パリにおいて、パリ協定の目標達成には、全ての国及び非締約国利害関係者がより強力かつ野心的な気候行動をとる必要があることで合意した。リマーパリ行動議題に則り、数名の非締約国利害関係者は、パリで、ユニラテラルな緩和プレッジを披露、登録された行動は1万件以上に及んだ。非締約国の利害関係者による行動への注目は、2016年に立ち上げられた世界気候行動のためのマラケシュ・パートナーシップを通しても続いた。
マラケシュ:2016年11月7-18日にマラケシュで国連気候変動会議が開催されたが、これには、第1回のパリ協定締約国会議(CMA 1)が含まれた。締約国は、PAWPに関係する数件の決定書を採択しており、これには次のものが含まれた:2018年までに作業を終了させるべきこと;キャパシティ・ビルディングに関するパリ委員会の委任事項;パリ協定9.5条(先進国による事前の隔年資金報告)に則り提供されるべき情報を特定するプロセスの開始。他に採択された決定書には次のものが含まれた:損失と損害のワルシャワ国際メカニズム(WIM)の5か年作業計画を承認;技術メカニズムの強化;ジェンダーに関するリマ作業計画の継続及び強化。
フィジー/ボン:2017年11月6-17日、ドイツのボンで、フィジーのCOP議長職の下、フィジー/ボン気候変動会議が開催された。このCOPではタラノア・ダイアログが立ち上げられ、「実施のためのフィジー・モーメンタム(Fiji Momentum for Implementation)」が設立された、これはプレ2020年の実施及び野心に優位性を持たせる決定である。さらにこのCOPは、PAWPの終了に関するガイダンスを提供し、適応基金はCMA 1-3までに決定がなされることを条件に、パリ協定においても役目を果たすと決定した。さらに締約国は、地方の地域社会及び先住民のプラットフォーム、WIMの執行委員会、資金に関する常任委員会、適応基金を、さらに発展させる、もしくは、ガイダンスの提供を行った。
SBSTA 48、SBI 48、APA 1-5:2018年4月30日から5月10日のこの会合で結論に達し、決定がなされた項目の多くには、PAWPに関する議論を捕捉し、これらの問題の考察を続けるとの締約国の合意が含まれる。この作業を補助すべく、締約国は、APA共同議長に対し、8月1日までに、「交渉のための合意されたたたき台(agreed basis for negotiations)」の作成を助ける「ツール(tools)」を作成するよう要請した。この会議のユニークな特色は、タラノア・ダイアログであった。「我々はどこにいるか?(Where are we?)」、「どこへ行きたいのか?(Where do we want to go?)」、「どうやってそこへ行くのか?(How do we get there?)」という質問を中心に設計されたこのプロセスにおいて、締約国及び利害関係者は、2018年12月のカドヴィゼ気候変動会議において提示されるべき統合報告書に情報を提供するストーリーを共有した。
会合期間外のハイライト
第20回GCF理事会会合:緑の気候基金(GCF)理事会は、2018年7月1-4日、韓国のSongdoで第20回理事会会合を開催した。この理事会では特定の問題での決定が行われる一方、76件のプロジェクトのポートフォリオの追加は行われず、投資基準を支援する新しい政策に関しても合意に達せなかった、また認定組織として新しいパートナーを加えることもできなかった。
第26回BASIC閣僚会議:BASIC(ブラジル、南アフリカ、インド、中国)諸国は、2018年5月19-20日、南アフリカのダーバンで会合した。BASICの閣僚は、共同声明の中で、包括的でバランスのとれたPAWPの成果を確保するため、他の締約国と協力すると約束し、バンコク気候変動会議では、パリ協定の実施に関する全ての問題及び相互関係を網羅する締約国主導の交渉文書を打ち出す必要があると強調する。
第9回ピーターズバーグ気候ダイアログ:35の諸国の閣僚及び他の代表、並びにUNFCCC補助機関の議長及び共同議長は、2018年6月18-19日、ドイツのボンに集まり、野心的な行動を遅らせることの影響、正しい転換の確保、PAWP、気候資金、タラノア・ダイアログについて議論した。結論文書では、特に、2018年に、PAWPを成功裡に終了させ、タラノア・ダイアログの政治フェーズでは、建設的な意見交換を続けるとの閣僚達の約束に焦点を当てた。
第2回気候行動に関する閣僚会議(MoCA):EU、カナダ、中国が2018年6月20-21日、ベルギーのブリュッセルで開催したMoCAは、36か国の政府閣僚及び他の政府代表が集合した。議長のサマリーでは、閣僚達が、「パリ協定は不可逆的であり、再交渉されるものではないことを確認し、その多国間主義の重要性を強調した」ことに焦点を当て、気候行動及び気候支援のモーメンタム構築の重要性を強調したことにも注目する。
実質的なリンクに関するラウンドテーブル:このラウンドテーブルは、APA、SBSTA、SBIで審議されるPAWPの多様な部分同士の相互関係に関し、締約国の理解を深めるため、2018年8月3日にバンコクで開催された。