Summary report, 6–17 November 2017
Fiji / Bonn Climate Change Conference - November 2017
フィジーを議長国とするボン気候変動会議が2017年11月6日から17日にかけてドイツ・ボンで開催された。同会議には、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第23回締約国会議(COP23)、京都議定書第13回締約国会合(CMP 13)、及びパリ協定第1回締約国会合第2部(CMA 1-2)が含まれる。また並行して3つの補助機関による会合、すなわち、科学的・技術的助言に関する補助機関第47回会合(SBSTA 47)、実施に関する補助機関第47回会合(SBI 47)、及びパリ協定第1回特別作業部会第4部(APA 1-4)も実施された。
ボン気候変動会議の参加者は総勢16,000人を上回り、各国政府関係者約9,200人、国連機関、政府間組織及び市民社会組織の代表者約5,500人、報道関係者約1,200人が世界中から集まった。
11月18日土曜日の早朝まで続いた交渉では、パリ協定作業計画の様々な側面が中心議題となった。31件の決定が採択され、うち24件はCOPの決定、7件はCMPの決定だった。これらの決定は以下のことを定めている:パリ協定作業計画の完了に関する指針を示し、タラノア対話(パリ協定を採択した決定1/CP.21で設置が求められた2018年促進的対話の呼称)を発足させ、「実施のためのフィジー・モメンタム(Fiji Momentum for Implementation)」に基づく2020年まで(プレ2020年)の実施と野心に注目を与える;CMA 1-3での決定に従うことを前提として適応基金をパリ協定の下に位置づけることを決定する;地域社会及び先住民に係るプラットフォームを運用可能にする;ジェンダー行動計画を策定する;緩和及び適応に関する技術審査プロセスを評価する;長期資金に関する作業を進展させる;資金に関する常任委員会、適応基金、市場経済移行国及び開発途上国におけるキャパシティ・ビルディングを対象としたレビューを完了させる;気候変動の影響に伴う損失及び損害に関するワルシャワ国際メカニズムの執行委員会に指針を与える。
COP、CMP及びCMAの下で実施された合同ハイレベル・セグメントには、15人の各国政府首脳、並びに多数の閣僚及び代表団長が参加した。
交渉は「ブラ・ゾーン」で実施され、サイドイベントは「ボン・ゾーン」で開催された。ボン・ゾーンでは、国連の様々な気候プロセスを通じて健全な海洋と気候変動対策を結びつける取り組みの「Ocean Pathway Initiative」や、パリ協定の実現を目指して300人を超える地方・地域レベルの指導者たちが採択した「ボン-フィジー・コミットメント」など、多くの国や非国家主体が気候行動に関するそれぞれの取り組みを紹介した。
締約国会議
パリ協定発効準備及びCMA 1:同項目は11月7日火曜日のプレナリーで最初に取り上げられ、2018年促進的対話のデザインが中心に議論された。2018年促進的対話は、「建設的な話し合い」を意味する太平洋島国の概念「タラノア」から着想を得て「タラノア対話」と名付けられた。会議期間中続けられた非公式協議は、Nazhat Shameem Khan(フィジー)及びCOP 22の議長Aziz Mekouar(モロッコ)が共同ファシリテーターを務めた。
11月7日、Khanはタラノア対話について説明し、タラノア対話とは、建設的、促進的かつ解決志向型の対話で、衝突を回避し、共感を構築し、安心できる環境を作りながら安定性と包括性を促進する特徴があると強調した。またKhanは、「現在の状況は?」「何を目指しているのか?」「どうすれば達成できるのか?」という3つの問いを中心に同対話を構成することを提案した。
フィジー主導で行われているタラノア対話のモダリティ(様式)策定作業を支援しているモルディブは、AOSISの立場から、緩和の野心向上を主眼に同プロセスのあらゆる要素を形成すべきと述べた。イランはLMDCsの立場から、「組織的な調整」が対話成功のカギを握ると述べた。対話のデザインについて交渉を始める必要はないとの点で意見は一致しているものの、EUとオーストラリアは、COP 23期間中に対話の進め方を明確にしておくべきと強調した。コロンビアは、非国家主体が同プロセスに参加することの重要性を強調した。
若者のNGOs(YOUNGOs)は、対話が「無意味な会話や表面的な意見発表」の場に陥ってはいけないと強調した。
地方政府及び自治体当局(LGMAs)は、政府のあらゆるレベルで気候行動を連携できるように垂直・水平統合を活用するよう締約国に求めた。
COP 23議長のBainimaramaは、11月18日のプレナリーで、パリ協定作業計画の完了、2018年促進的対話、並びにプレ2020年の実施と野心をテーマにCOP 22及びCOP 23の議長が実施した締約国とのオープンエンド型協議について報告した。議長はその後、COP決定「実施のためのフィジー・モーメンタム(Fiji Momentum for Implementation)」の草案を提示した上で、同決定は透明性と包括性が確保された費用効率の良い方法で2018年の交渉を行うための土台を築くものであり、附属書には2018年促進的対話のデザインが記載され、プレ2020年の実施と野心の重要性も示されていると指摘した。COPは同決定を採択した。
最終成果:COPは、その決定(FCCC/CP/2017/L.13)において、パリ協定の気運(モーメンタム)を維持し、その精神とビジョンを守ることの重要性を強調し、さらにパリ協定作業計画を完了させることの緊急性を強調する。
COPは、パリ協定に基づく作業の完了に関して以下を実施する。
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
- 第24回会合(2018年12月)までのパリ協定作業計画の完了に向けて作業の監視・加速を行うとともに、CMA 1-3による審議及び採択のためにその成果を提出するという確固たる決意を確認する。
- 事務局に対し、COPとその補助機関及び構成組織が関わるパリ協定作業計画関連活動に関する完全な情報・参考資料へのリンクが含まれたオンライン・プラットフォームを開設するよう要請する。
- 作業計画を適時完了させるために、SB 48(2018年4~5月)からCOP 24までの間に3つの補助機関全てが追加の交渉セッションを行う必要がある可能性を認識する。
- COP議長が、COPビューロー(幹事会)及びAPA共同議長との協議の上で、SBI・SBSTA 48及びAPA 1-5の成果に基づき追加交渉セッションの必要性を評価すること、さらにそれに応じて事務局に指示を与えることを決定する。
- 追加交渉セッションを開催する場合は、それぞれの補助機関が検討しているパリ協定作業計画に関連した問題を取り上げることに同意する。
- 追加交渉セッションは費用効率の良い方法で実施し(セッションの期間、国連公式言語への通訳・翻訳費用などロジスティクス面を含む)、開発途上国の代表団が効果的に参加できるようにすることに同意する。
- 事務局に対し、追加交渉セッションに関する暫定的な(必要であれば最終的な)調整を行うこと、また追加交渉セッションの実施が確定した場合は、リソースの利用可能性に応じて最終調整を行うことを要請する。
COPは、COP 23で発表された「タラノア対話」と呼ばれる2018年促進的対話のデザインを歓迎する。同デザインはCOP 22とCOP 23の議長が作成した非公式ノートに記載され、附属書にはタラノア対話のマンデート、及び準備段階と政治段階の特徴が記されている。COPは、2018年1月から開始するタラノア対話の発足に合意した。
COPは、プレ2020年の実施と野心に関して以下を実施する。
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
- COP議長及びUNFCCC事務局長に対し、ドーハ改正をまだ批准していない京都議定書締約国に受諾書を早急に預託するよう求める共同書簡を送付することを要請する。
- 事務局に対し、ドーハ改正の批准を促進する方法について国連事務総長と協議することを要請する。
- 締約国に対し、決定1/CP.21(パリ成果)セクションIV「2020年までの強化行動」実施の進捗に関する追加情報を、2018年5月1日までに提出用ポータルを通して提出することを要請する。
- 事務局に対し、以下に言及するプレ2020年の実施と野心のストックテイクへの情報として、提出文書に関する統合報告書を作成することを要請する。
- 2018年促進的対話(タラノア対話)が、同対話の要素の1つとして、プレ2020期間中の行動及び支援に関連した締約国の取り組みを検討する(必要に応じて)ことを記したCOPの報告書を歓迎する。
- COP 24において、プレ2020年の実施と野心に関するストックテイクを実施することを決定する。同ストックテイクは2016年促進的対話のフォーマットを適用し、特に以下を検討する:COP、CMP、SBI、SBSTA、COP及び京都議定書に基づく構成組織、並びに資金メカニズムの運用機関に関する情報;締約国によるプレ2020期間中の緩和の取り組み;プレ2020期間中の支援提供;世界的な気候行動のためのマラケシュ・パートナーシップの活動(政策決定者向けの技術審査プロセス(TEPs)の概要、及びハイレベル・チャンピオンが作成した気候行動に関する年鑑を含む)。
- COP 25において、プレ2020年の実施と野心に関するストックテイクを実施することを決定する。同ストックテイクは2018年促進的対話のフォーマットを適用し、特に以下を検討する:COP、CMP、SBI、SBSTA、京都議定書に基づく構成組織、並びに資金メカニズムの運用機関に関する情報;COP 24で実施された気候資金に関するハイレベル閣僚級対話の成果;タラノア対話に関連した成果;2018年に実施されたストックテイクの成果;世界的な気候行動のためのマラケシュ・パートナーシップの活動(政策決定者向けTEPsの概要、及びハイレベル・チャンピオンが作成した気候行動に関する年鑑を含む)。さらに事務局に対し、ストックテイクに関する報告書の作成を要請する。
パリ協定特別作業部会
11月7日火曜日、共同議長のSarah Baashan(サウジアラビア)は、COP 22以降、APAが着実かつ徐々に進展していることに留意しつつ、まだ多くの作業が残されていると強調した。
複数の締約国が、取り上げられた様々な課題または補助機関の間でバランスや一貫性を保つことのメリットと必要性を強調した。ほとんどのグループが大半の実質的な議題項目に対する期待を表明し、複数の開発途上国が、いくつかの実質的項目において、緩和、適応、MOI(実施手段)、及び対応措置を取り上げる必要があると主張した。
COP 23のプロセス及び期待される成果について、EUは、各国からの提出文書や見解書をとりまとめることがプロセスの効率的な進め方とは思えないと述べた。オーストラリアは、アンブレラグループの立場から、APAにも柔軟性が必要で、各項目をそれぞれのペースで前進させられるようにすべきと強調した。スイスは、EIGの立場から、共同議長がプロセス全体のバランスを図りながら、徐々に交渉テキストの内容と堅牢さを深めることを求めた。
マリは、アフリカン・グループの立場から、そしてエチオピアは、LDCsの立場から、テキスト交渉の緊急性を強調した。イランは、LMDCsの立場から、全ての要素を盛り込んだ交渉原案を1つ作成するよう求めた。サウジアラビアは、アラブ・グループの立場から、2018年に一括で決定を出す方が好ましいと主張した。
モルディブは、AOSISの立場から、包括的な作業計画とタイムテーブルを手にしてボンを後にしなければならないと述べた。ブラジルは、ブラジル、アルゼンチン及びウルグアイを代表し、文言の要素開発を支持した上で、2018年に合意すべき要素とそれ以降でも対応可能な要素を区別することを提案した。
適応基金について、LMDCsは、同基金をパリ協定の下に位置づけるべきと主張した。LDCsは、COP 23での決定採択を求めた。ブラジル、アルゼンチン及びウルグアイは、2018年のCOP決定採択を提案した。
女性とジェンダーの代表は、公平かつ包括的でジェンダーに配慮したパリ協定の実施を実現するためのルールを作るよう求めた。
YOUNGOsは、気候エンパワーメント行動(Action for Climate Empowerment:ACE)がパリ協定の中核要素であると主張した。
産業関係者(Business and Industry NGOs:BINGOs)は、「全ての経済圏」アプローチの一環として、企業を巻き込んだ対話の場を設けるよう求めた。
気候行動ネットワーク(CAN)は、野心を奨励し、行動を促進するための実施ガイドラインの策定を求め、本会合期間中に交渉テキストを作成するよう求めた。
今、気候正義を!(Climate Justice Now!:CJN!)は、一部の締約国が「NDCsは緩和のみを対象とし、MOIは対象ではない」と主張していることは遺憾であると述べた。
先住民グループは、気候の変わりやすさや異常気象への脆弱さを訴え、気候変動が先住民の必要最低限の生活や主権に影響を及ぼしていると強調した。
LGMAsは、特にGST(グローバル・ストックテイク)や透明性枠組みへの貢献を強調した。
Trade Union NGOsは、各国のNDCsに公正な移行を盛り込むよう求めた。
決定1/CP.21(パリ成果)の緩和セクションに関する追加ガイダンス:(NDCsに関するガイダンス)パラグラフ26に規定されている「NDCsの特徴」;28項に規定されている「NDCsの明瞭性、透明性、理解を高めるための情報」;(NDCsの算定に関するガイダンス)パラグラフ31に規定されている「各締約国のNDCsの算定(アカウンティング)」:同項目について、Sin Liang Cheah(シンガポール)とGertraud Wollansky(オーストリア)を共同ファシリテーターとする非公式協議が行われた。
11月8日水曜日、締約国は、11月6日月曜日に開催された会合期間中のラウンドテーブル、並びに過去の会合で作成された共同ファシリテーターのノンペーパー(APA.2017.5.非公式ノート)を評価しつつ留意した。多くの国は、各国の能力の違いをガイダンスに反映させるべきという点で合意し、一部の開発途上国は、一般的な情報を開発途上国向け・先進国向けのガイダンスで補足することを提案した。一部の先進国は、差異化アプローチの必要性には同意したが、「二分化(bifurcation)」は拒否した。また一部の国からは、「恥をかかせる(shaming)メカニズム」と言えるほど詳細にわたるガイダンスと、一般的すぎてパリ協定の義務履行には役立たないようなガイダンスとのバランスをとる必要があるとの意見が出た。さらに一部の国は、キャパシティ・ビルディングの必要性を強調した。単一のガイドライン草案を作成するか、差異化の運用に関する見解の相違を反映した2つのガイドライン草案を作成するかについて、締約国間の意見が分かれた。
共同ファシリテーターのCheahは、残り時間が少ないことを指摘した上で、以下の見出しを記載した1頁の文書を提示した:注意事項(caveats)、一般的手法(general approach)、手続き的側面(procedural aspects)、実質的要素を作成するための予備的資料(preliminary material for developing substantive elements)。Cheahは、各国が同文書のための情報を提供することを提案した。しかし締約国は、今後の進め方について合意することができなかった。
今後の進め方について、多数の先進国と開発途上国から、共同ファシリテーターのノンペーパーの付録を議論の土台とするという提案が出された。ある開発途上国グループは、他の多くの国の支持を得て、同文書に構成、見出し、小見出し、及び特定の課題を盛り込むこと、並びに情報またはオプションのクラスター(集合)を形成することを提案した。あるグループ(1カ国が反対)は、情報及び算定に関する実質的要素について、2セットのガイダンスを作成することを求めた。多くの国が「予備的文書」を支持したが、具体的なフォーマットや内容については意見が分かれた。締約国は、そのような文書を作成するという共同ファシリテーターの提案に支持を表明するとともに、同文書には全ての意見を盛り込み、レッドライン(譲れない一線)を尊重すべきと主張した。
締約国は、パラグラフ45の「予備的資料」文書に対して様々な反応を示した。同文書には、3つの小項目全てに関する本文が含まれており、情報及び算定に関する実質的要素は、締約国の見解(3つのクラスターに分類)が記載された付録に盛り込まれている。多数のグループ及び締約国は、共同ファシリテーターの取り組みを称賛しつつ、同文書には冗長性や重複があると指摘した。ある開発途上国グループは、クラスターを本文に移し、情報に関連した2つのクラスター間の重複を削除することを求めた。多くの国は、クラスター間の重複を取り除くことには反対したが、クラスター内の重複をなくすことには賛成した。一部の先進国は、あるグループの見解が特に目立つようになっていると述べ、全ての見解を平等に扱うよう求めた。締約国は、現段階での文書のスリム化案で合意せず、多数の締約国及びグループは、文書をさらに検証するための時間が必要と述べた。
ある先進国は、予備的文書について、情報及び算定に関する付録に盛り込まれている2つのクラスターを格上げし、文書の本体部分に移すことを提案した。また同国は、締約国によるさらなる意見提出を要請し、それらを該当セクションに添付すること、並びに共同ファシリテーターがクラスターを含む同文書を整理することを求めた。ある開発途上国グループは、締約国から提出された意見書を2つのクラスターの代わりにすることを提案し、意見書を特定の締約国やグループだけのものとみなすことに反対した。Wollanskyは、情報及び算定について、また文書から欠落している事柄について、締約国が会期中に意見提出を行うことを提案し、締約国もこれに合意した。さらに締約国は、文書の整理を共同ファシリテーターに委任するとともに、意見書の帰属に関する意向を各締約国が意見書に示せるようにすることに合意した。
その後の協議で、共同ファシリテーターのCheahは、180頁の「予備的資料」文書を提示した。Cheahは、文書の長さに関する懸念を示す一方で、同文書には締約国の懸念を考慮した複数の注意事項(caveats)が含まれていると指摘し、同文書をもとに締約国がAPA 1-5で実質的な交渉に入れるようになることを期待すると述べた。多くの国が、APA 1-5の前に同文書に関するさらなる作業を行うよう共同ファシリテーターに委任することに異議はないと表明し、ある開発途上国グループは、共同ファシリテーターが同文書をスリム化し、意見をとりまとめることを提案した。各国は、同文書をAPA 1-4に基づく共同ファシリテーターの非公式ノートとしてAPAの共同議長に提出することに合意した。
適応報告書に関する追加ガイダンス(パリ協定7条10項及び7条11項に言及されているNDCsの一部としての報告書を含む):同項目について、Julio Cordano(チリ)とBeth Lavender(カナダ)を共同ファシリテーターとする非公式協議が行われた。
参加者たちは、見出しと小見出しの「骨組み(skeleton)」リストが含まれた予備的文書に関する検討を開始した。非公式ノートが3度改定され、見出しと小見出しの内容についてより深く議論された。
ある開発途上国は、以下の見出しと小見出しを提案した:序文;指針となる原則;目的;要素(オプトインまたはオプトアウトの小見出しを含む);手段(タイミングと頻度に関する小見出しを含む);リンク;サポート(適応報告書の作成・提出、並びに適応報告のニーズ、優先課題、計画、戦略実施のための支援に関する小見出しを含む);支援のモダリティ(様式);その他の問題。同提案に基づき議論を進めるべきか、それとも意見対立のある分野のみを議論すべきかどうかで、先進国と開発途上国の意見が分かれた。複数の開発途上国が、支援は開発途上国向けであるべきで、指針原則には、共通だが差異ある責任と各国の能力、国情、及び柔軟性を含めるべきと主張した。多数の先進国は、指針となる原則を含めることに反対し、これらの原則はパリ協定でカバーされていると述べた。ある先進国は、義務的または共通の報告フォーマットは負担を増やし柔軟性を減らすと指摘し、最も負担が小さいとして要素リストを提案した。
ある発展途上国グループは、別の発展途上国グループの支持を得て、適応報告書の指針には「一般的な指針」と「NDCに特化した指針」の2つが必要と提案した。複数の先進国がこれに反対し、同部会の役目は適応報告書の指針を作ることであって、NDCsを通じた適応報告の指針を作ることではないと指摘した。ある開発途上国グループは、これはNDCsにおける適応報告の指針が存在しないことに端を発した提案であると説明した。複数の国から、同提案によって負担が増えるおそれがあるとの意見が出された。
その後の非公式協議において、共同ファシリテーターのLavenderは、他のAPA議題項目に基づく作業との「比較可能性」を確保するために、(特に要素の見出しについて)より詳細な第2版を作成するようAPA共同議長から要請を受けたと報告した。非公式ノートの第2版について、複数の開発途上国が、非公式ノートは(特に要素に関する)締約国間の意見の収束を意味するものではないことを示す文言を挿入することを要請した。ある先進国は、2つの開発途上国グループの支援を得て、手段を特化した指針(可能な手段を箇条書きで記す)及び手段を特化しない指針というオプションを含めることにより、適応指針に関する2つのオプションからNDCsだけを選び出さないことを提案した。多くの開発途上国は、適応に関する世界的目標を目指したデータの集計方法やアプローチに関する指針の作成をIPCCに要請する旨を非公式ノートに記載することを支持した。複数の締約国がこの提案の実現性を疑問視し、これは議題項目の範囲外と指摘した。
同非公式ノートは、非公式協議で提起された提案を含める形で改定された後、APAコンタクトグループに送られた。
行動及び支援の透明性枠組みに関するモダリティ、手続き、指針:同項目について、Xiang Gao(中国)とAndrew Rakestraw(米国)を共同ファシリテーターとする非公式協議が行われた。締約国は以下について議論した:モダリティ、手続き及び指針におけるコミットメントの差異化;予備的文書においてどの条項がどの締約国グループに適用されるかを示すために共同ファシリテーターが作成した注釈記号;追加の見出し(NDCs及び適応報告書の作成支援に関するパリ協定9条5項(事前の資金透明性)を含む);進捗状況に関する促進的な多国間審議及び技術専門家レビュー(TER);パリ協定の義務履行のみを目的とする場合、透明性枠組みに登録された支援を供与国と受理国の双方が合意することの必要性。
改定後、共同ファシリテーターは、予備的文書を審議にかけるためにAPAコンタクトグループに送付した。
GSTに関連する問題:GSTのための情報源の特定:GSTのモダリティの策定:Outi Honkatukia(フィンランド)と Richard Muyungi (タンザニア)を共同ファシリテーターとする非公式協議が行われた。締約国は、以下に焦点を当てながら、共同ファシリテーターが作成した予備的文書の「構成要素」について議論した:指針となる問いを中心に情報を構築する可能性;補助機関またはCMAが適切なガバナンス組織となるか否か;技術的プロセスのタイミングと期間を定義する必要性。
締約国はまた、GSTにおける衡平性の運用について議論し、その概念は:重要である;包括性を確保している;持続可能な開発及び貧困撲滅の概念と関連付けている;開発途上国に過度な負担を課さない;客観的な手段を活用する;適応、緩和、MOIに適用する;締約国以外のステークホルダーや専門家グループの参加を奨励する、ことに合意した。締約国からは、以下を含む提案が出された:通常会合と連動させて技術的な対話の場を設ける;衡平性を分析するための情報源を検討する;個別対話を実施する;GSTの成果に衡平性への言及を盛り込む。
改定後、共同ファシリテーターは、予備的文書を審議にかけるためにAPAコンタクトグループに送付した。
パリ協定の実施に関するさらなる問題:
発効準備:パリ協定及び決定1/CP.21セクションIII(パリ協定の実施に関する決定)に基づき委任された作業に関連し、同作業計画実施の調整及び一貫性の促進、並びに必要に応じた行動(提言を含む)を目的とした補助機関及び構成組織による進捗状況評価:APA共同議長のSarah BaashanとJo Tyndallを共同ファシリテーターとする非公式協議が行われた。締約国は、適応基金及び5つの追加的な問題について検討した。
適応基金:同項目について、María del Pilar Bueno(アルゼンチン)とPieter Terpstra(オランダ)を共同ファシリテーターとする非公式協議が行われた。COP 23の成果として、適応基金をパリ協定に役立てるべきこと、及び今後議論される時間枠の中でモダリティを策定することを規定すべきかどうかについて意見が分かれた。複数の先進国は、決定を行う前に、ガバナンスと制度的取り決め、セーフガード、運用モダリティを中心とした適応基金関連の問題に対処するための作業を進めるべきと主張した。
ある開発途上国グループは、2つの決定草案を提示した。1つはCOP決定草案で、適応基金をパリ協定の下に位置づける旨が記載されている。もう1つはCMP決定草案で、適応基金をパリ協定の下に位置づける旨が記載され、さらに資金へのアクセスと資金動員戦略に関して準用すべき運用政策と指針が特定されている。複数の先進国による提案には暫定期間の必要性が強調されており、あるグループは2020年以降に適応基金をパリ協定の下に位置づけるべきと提案した。またある先進国は市場からの収益の一部を主な資金源にするべきと強調し、他の複数の先進国はパリ協定6条との関係を明確にするよう求めた。一方、ある開発途上国グループは、この文脈で市場を受け入れるという条件は「考慮に値しない(non-starter)」と述べた。
非公式ノートの第1版について、複数の開発途上国グループが「革新的な資金源(innovative sources of finance)」への言及に反対し、この用語を定義づける必要があると強調した。ある先進国は、適応基金に拠出される認証排出削減量(CER)の収益の一部が革新的な資金とみなされると主張した。ある開発途上国は、パリ協定6条に関連した交渉に予断を与えないよう警告した。またある先進国は、適応基金の将来像は政治判断で決まると指摘した。
その後の非公式協議において、複数の開発途上国グループが進展の遅さに懸念を示し、ある国は、議論が「行き詰まっている」と付け加えた。一方、複数の先進国は、意見がまとまってきた分野もあると指摘した。
同テーマに関する非公式協議は、適応基金に関連する問題というCMP議題項目の下で11月18日土曜日まで続けられた(10頁参照)。
その他のさらなる問題:5つの追加的問題に関する非公式協議において、締約国は審議を支援するために共同議長が提起したさらなる疑問点について検討した。これらの疑問点は、過去のセッションで作成されたAPA共同議長のリフレクション・ノート(APA.2017.3非公式ノート)の中で既に提起された3つの疑問点に追加されたものである。
多くの締約国が、現在様々な機関で進められている他の資金関連項目の審議とスケジュールが重なることへの懸念を示した。またパリ協定9条5項(事前の資金透明性)に基づいた開発途上国向け公的資金供与に関する隔年報告の手順を検討する必要性について、本件が9条5項に関するCOPの議題項目の下で十分議論されているか否かという点で意見が分かれた。
これらの見解は後の協議でも繰り返し発言された。開発途上国は、透明性枠組みに関するAPA項目5の作業との関連性を指摘し、COPがAPAに対してこの問題を取り上げるよう指示することを求めた。ある開発途上国グループは、この問題の進め方に関する同グループの提案として、実質的な要素を記載した会議用文書(conference room paper)を提出する予定と報告した。
締約国は、GCT及びGEFに対する初期のCMA指針の必要性について議論した。ある開発途上国グループは、関連諸機関の間での法的かつ説明責任に関する取り決めを明確にした。さらに同グループは、CMAからのいかなる指針もパリ協定のみに関する問題を対象とし、SCFからの要請を受けた後、CMAで検討され、最終的にCOPに持ち込まれることになると指摘した。現時点では本件を取り上げるべきではないとの考えに多くの国が同意した。また多くの先進国が、SCFは既に決定1/CP.21(パリ成果)によって指針草案の作成を委任されているとして、追加の指針は一切必要ないと主張した。開発途上国は、「CMA作業計画」がもっと明確になるまで追加指針に関する議論を待った方が良いと主張した。ある開発途上国グループは、CMA 1が今後の追加指針に関する検討プロセスを開始するよう提案した。共同ファシリテーターのTyndallは、同グループに提案書を作成するよう要請した。
締約国は、後発開発途上国基金(LDCF)及び特別気候変動基金(SCCF)に対するCMAの初期指針の必要性を検討した。多数の開発途上国グループは、SBIを通じてCOPに初期指針を発行するマンデートを付与すること、並びに、CMAに提言を行ってSBI 50までに結論を出すために、LDCF初期指針を2018年のCMA 1でのSBI特定議題項目とすることを提案した。ある開発途上国グループは、LDCFとSCCFはCOPの管理権限内にある条約の基金であると指摘した上で、APAではなくSBIがこの問題を扱うのであれば、「LDCFの機能に関連したパリ協定の運用に関するその他の問題(other matters relating to the operationalization of the Paris Agreement relevant to the functioning of the LDCF)」という表題の議題項目の下で取り上げるべきと述べた。複数の先進国は、LDCFの初期指針はGEFへの指針の範囲内にあるため、現段階でそのようなマンデートについて検討する必要はないと述べた。またある国は、SBIで初期指針を検討することは支持できないと付け加えた。
2025年以前に資金に関する全体的な数値目標を新たに設定するという追加的な問題について、「c長期資金(Long-term Finance:LTF)に関するCOP小項目の下で既に作業が行われており、新たな目標は同小項目の範囲内にある」、「関連する決定1/CP.21(パリ成果)のパラグラフがCMA 1-2議題の脚注の中で言及されており、この問題は既にCMA議題に含まれている」といった指摘が上がり、それらに対して締約国の意見が分かれた。多くの開発途上国グループは、数値目標の設定作業を完了させるには時間がかかるとして、CMA 1-2での作業を開始する必要性を主張した。またなるべく早くインプットを得るために、APAがCMA手続きに関する決定を勧告するよう求める声が上がった。2つの開発途上国が、数値目標の設定時には「開発途上国のニーズと優先課題を考慮する」ことに専念すべきと主張した。多くの先進国とある開発途上国グループは、現段階で準備作業を始める必要はないと主張し、CMAが2025年(場合によっては2023年)までに議論を開始することを提案した。また別の開発途上国グループは、2020年の資金目標の達成において得られた教訓、並びにタラノア対話やGSTで得られた知見を取り入れるべきと主張した。それを受けて、2つの開発途上国が、新たな目標に関する議論をタラノア対話やGSTに役立てるべきと次々と提案した。11月10日金曜日に、アフリカン・グループがパリ協定9条5項に基づく情報通達手順に関する見解を示した会議用文書(conference room paper)を提出し、同文書に関する短い説明が行われた。共同ファシリテーターのBaashanは、共同ファシリテーターが非公式ノートの最終版を作成すると伝えた。
パリ協定9条5項に基づく情報通達手順を検討し、パリ協定作業計画に盛り込む必要性に関するアフリカン・グループの懸念を解消するために、議長が主導する締約国間の協議が11月15日から17日まで続けられた。
最終成果:APAは、議題項目3から8(FCCC/APA/2017/L.4 and Add.1)について以下の結論に達した。
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
COP 23 | CMP 13
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- 議題項目3から7について、会合に先立ち文書が作成されたこと、並びに会合前ラウンドテーブルが実施されたことに留意する。
- これらの文書及び会合前ラウンドテーブルが、個々の議題項目に関する理解を促進し、締約国の見解を明確にするのに役立ったこと、さらにAPAの下での交渉に有益な知見をもたらしたことに合意する。
- 本会合で進展があったことに留意する一方で、議題項目3から8に関する審議の実質的な進展を加速させる必要があること、並びに全ての問題に関する議論を成熟させて詳細を詰め、2018年12月までに作業を適時完了させなければならないことを指摘する。
- 全ての課題を首尾一貫しバランスのとれた方法で進展させる必要があること、並びにSBI、SBSTA及びCOPが協調的アプローチを取りながらパリ協定作業計画に関連した問題を検討する必要があることを再度認識する。
- COP議長に対し、議長が自らの責任で、補助機関の今後の作業を侵害することなく、本会合で扱われたパリ協定作業計画関連の問題について、APA、SBI、SBSTA及びCOPによる作業の成果をまとめるという選択肢を検討することを提言する。
- 共同議長の以下の意向に留意する:本会合の成果の概観を示したリフレクション・ノートを2018年4月初旬までに発行する;本会合及び各国の提出文書で示された締約国の見解(本会合で作成された非公式ノートに反映されている見解を含む)に基づいて今後に関する提案を行う。
- 締約国がAPA議題項目について本質的な審議を行うには、焦点を絞った提案書を活用することが最も有用であるという点に留意する。
- 交渉の進展状況に応じて、また費用効率の良い方法で追加の会合を開催できる可能性や、開発途上国の専門家が効果的に参加できる可能性によって、2018年中に追加の交渉期間を設けることが有益となる場合があるという見解を表明する。