Daily report for 2 May 2018
Bonn Climate Change Conference - April 2018
水曜日の主要なイベントの一つは、締約国と非締約国利害関係者の両方が参加し、気候変動と戦う努力について世界的な対話を行うタラノア・ダイアログ会議の開会であった。
もう一つの重要なテーマは、12月のCOP 24で完了予定のパリ協定作業計画(PAWP)であった。PAWPの下で議論された題目は、緩和と国家決定貢献(NDCs)、グローバル・ストックテイク、適応、資金などであった。
多数の交渉グループも、SBSTA及びSBIの議題項目の多様な問題を議論するため会合した。加えて、Suva専門家ダイアログは損失と損害関係問題に焦点を当て、気候変動とジェンダーに関するワークショップも開催された。
タラノア・ダイアログ開会会合
COP 24議長職でポーランドのTomasz Chruszczowは、「ポリネシアの問題解決の伝統」と緊急に気候変動と取り組む必要性とを合体させようというタラノア・ダイアログに焦点を当てた。UNFCCC事務局長のPatricia Espinosaは、現在のNDCsでは1.5℃の倍近くの気温上昇をもたらすと指摘し、プレ2020年行動を加速化し、次回のNDCsでは野心の規模拡大を図る必要があると強調した。
COP 23議長職でフィジーのLuke Daunivaluは、タラノア・ダイアログの概要を説明、3つの指針となる質問を指摘した:われわれはどこにいるのか;どこへいこうとしているのか;どうやってそこへいくのか。同代表は、ダイアログ参加者に対し、建設的で、促進的、解決策本位であるよう奨めた。フィジーの大臣でハイレベル気候チャンピオンであるInia Seruiratuは、サイクロンや豪雨など、フィジーが直面する厳しい気候の課題について説明し、「われわれの子供や孫が(そのような課題の下で)生きていく世界にしてはならない」と強調した。
エジプトはG-77/中国の立場で発言し、緩和、適応、実施方法に関する行動の「全ての範囲(full gamut)」を検討する必要があると強調した。同代表は、開発途上国出身の非締約国利害関係者のダイアログ出席は能力の制約から限定されており、遺憾であると述べた。
エチオピアはLDCsの立場で発言し、COP 24の前にIPCCの1.5℃特別報告書を検討するよう求め、各国に対し、2020年に自国のNDCsを通報する際は、ダイアログの成果を考慮に入れるよう求めた。
メキシコはEIGの立場で発言し、非締約国利害関係者をダイアログに受け入れることは重要であると強調し、参加性の高いパートナーシップの構築を待望した。オーストラリアはアンブレラ・グループの立場で発言し、気候変動とその影響と取り組むには、前へ進む方法や利用できる最善の科学について、共通の理解を深めることが重要だと強調した。
モルディブはAOSISの立場で発言し、気候変動問題の緊急性を強調し、ダイアログでは実施手法を含め、野心的な気候行動を可能にする効果的な戦略、解決策、まだ手を付けていない機会などの特定に焦点を当てるよう求めた。ガボンはアフリカングループの立場で発言し、アフリカ地域で既に開催されたダイアログに注目し、パリ協定の目標達成の基礎になるものは予測可能な資金及び技術の移転であると指摘した。コロンビアはAILACの立場で発言し、利用可能な最善の科学の活用を促し、NDCsを協定の目標に向け舵を切るには長期の低排出開発戦略が重要であると強調した。
EUは、6月13日にブリュッセルで、400名以上の利害関係者が集まるタラノア・イベントを開催する計画であると説明し、ダイアログの準備段階のメッセージを政治段階でも考慮に入れてもらう方法を明らかにするよう求めた。トルコは、促進的で建設的なダイアログを求め、NDCsの国家決定の特性を保持する必要があると強調した。
イランはLMDCsの立場で発言し、協定の目標と合致する実地の行動をとることで、ダイアログの促進的な特性の価値を実証するのが重要だと強調した。サウジアラビアはアラブグループの立場で発言し、歴史的な過ちから学び、将来、過ちを繰り返されないようにする必要があると強調した。インドは、多様な声をまとめることが重要だと強調し、開発途上国をベースとする研究所から、さらに多くのインプットがダイアログにもたらされることを期待した。南アフリカは次のことを促した:野心を引き上げる新しい機会を特定する;プレ2020年の野心のギャップを埋める;野心と支援の直接のリンクを確保する。
YOUNGOsは、国内及び小国内の行動について若者とオープンで率直な協議をするよう求めた。BINGOsは、気候変動を政治課題の上位に置き続け、全てのレベルのビジネス社会とダイアログを保持することが重要だと強調した。気候行動ネットワークは、各国政府に対し、国の野心を引き上げるため、国及び地域のダイアログを開催するよう奨励した。「今、気候の正義を!」は、衡平性が極めて重要であると強調し、野心引上げがこれまで成功していないことを嘆いた。FARMERS(農業従事者)は、気候変動への取り組みでは供給チェーンの異なる段階のもの同士が努力できるよう、障壁を取り除くことが重要だと強調した。INDIGENOUS PEOPLES ORGANIZATIONS(先住民組織)は、気候変動と取り組む解決策に注目するあまり、その根本原因との取り組みから目をそらすことがあってはならないと述べた。
LOCAL GOVERNMENTS AND MUNICIPAL AUTHORITIES(地方政治当局)は、地方及び地域のダイアログはNDCsの「確定及び引上げ(fix and lift)」を支援すると強調した。RINGOsは、学際的であるよう促し、参加性が高く意見反映型のダイアログを実践する機会として、タラノア・ダイアログを活用するよう促した。TUNGOsは、低炭素政策を支援する適切な社会政策、労働市場政策が必要であると強調し、低炭素な転換推進には、高いスキルを持つ労働力が重要だと強調した。WOMEN AND GENDER(女性とジェンダー)は、現在の持続可能でない成長モデルを導いたシステム及び問題を議論する「率直で重要な(frank and critical)」ダイアログを求めた。
その後、パネリストは、ダイアログの主要な質問点に関連するストーリーを共に聞いた。IPCC作業部会IIIの共同議長のJim Skeaは、気候変動が既に影響を及ぼしているという「まぎれもない証拠(unambiguous evidence)」に焦点を当てる一方、太陽光及び風力エネルギーのコストが「異常なほど(extraordinary)」の割合で低下したなど、機会はあるのだと指摘した。同共同議長は、1.5℃に関するIPCC特別報告書では初めて緩和の社会的側面も取り上げると強調した。UNEP DTUパートナーシップのAnne Olhoffは、NDCsの野心引上げを2025年まで待つわけにはいかないと強調した。Mahindra GroupのAnirban Ghoshは、Mahindraの「持続可能性に向けた旅路(sustainability journey)」を顧みた、これにはこのグループの旗艦会社による2019年までにGHG排出量原単位を25%削減するとの約束、並びに企業内の炭素価格化の導入が含まれる。パネルの市民社会を代表するHindou Oumarou Ibrahimは、締約国に対し、化石燃料を禁止し、クリーンエネルギーへの衡平なアクセスを提供し、炭素を隔離して生態系を守る正味ゼロ(排出)の野心的な戦略を提示するよう促した。
APA
決定書1/CP.21(パリ協定の採択)の緩和セクションに関する追加ガイダンス:非公式協議で、締約国は、APA 1-4の180頁の非公式ノート読み合わせを助ける「ツール」の提案で合意した。このツールは月曜日には提供可能な予定であるが、非公式ノートを置き換えるものではなく、全ての提案を保持する一方、その提示方法をスリム化する予定である。
議論の焦点は、NDCsの明確さ、透明性、理解を進めるための情報であった。一部の要素では合意もなされたが、特に範囲(scope)に関し、参加者の意見が分かれ、一部のものは、ガイダンスはNDCsの緩和要素のみを対象とすべきと論じ、他のものは、適応と実施方法も対象とすべきと論じた。さらに、二分化でも意見が分かれ、一部の締約国は、開発途上国向けのガイダンスは差異化するよう論じ、他の締約国は全てのものに適用されるガイダンスを求めると同時に、各国のNDCsの約束におけるタイプの違いを考慮に入れるよう求めた。
グローバル・ストックテイク:締約国は、APA 1-4の非公式ノートの審議を続けた。活動A(準備段階)に関し、締約国は、そのタイミングは活動の特性及び活動B(技術段階)との関係の両方を考慮に入れるよう提案し、活動Bの「かなり前に(well in advance)」インプットを準備するよう、明確に招請することも記載するよう提案した。
活動Bに関し、締約国は次を提案した:SBSTA/SBI合同コンタクトグループの下での技術ダイアログ;SB議長の責任の下、専任の共同進行役を置く、ワークストリームごとの技術ダイアログ;透明性の高まりを目的に、並行して開催する会議ではなくオープンなフォーラムの開催;タラノア・ダイアログからのガイダンス。
活動C(政治段階)に関し、あるグループは、宣言の形で政治的な約束を明らかにするための閣僚セグメントの開催を提案した。
さらに締約国は、次の点を議論した:衡平性とCBDR-RC原則を適用可能にする方法;ストックテイクに関する協定のマンデートを特定する表現の追加;グローバル・ストックテイクの全体的なタイミング及び期間を、特定の活動のタイミングに合わせる;開発途上国の参加に対する支援供与;協定2条の長期目標の中にストックテイクの概念を入れることの重要性。
適応報告書:非公式協議では、決定書の構成可能性に関するあるグループの提案に焦点が当てられた。数か国の締約国は、この提案に対する感謝の意を表明した、これには文書を決定書と「要素(elements)」と「NDCs指針(guidance for NDCs)」に関する一つかそれ以上の付属書に分けるという提案も含まれた。一部のものは、含まれる題目への不快感を表明した。この提案に示された題目はいかなる結果にも予断を加えるものではなく、実質的なオプションは全て保持されるとの理解の下、参加者は、共同進行役に対し、共同進行役の非公式ノートを、提案される構成に替え、木曜日の議論に付すよう委任することで合意した。
SBI/SBSTA
農業に関するコロニヴィア(Koronivia)共同作業:非公式協議で、ある先進国は、SB 48からSB 53までの共同作業のタイムラインを含めるロードマップ草案を提起し、この提案は多数の締約国との協議の上で作成されたと述べた。さらに締約国に対し、この項目の作業を助けるため、UNFCCC以外のフォーラムを活用することに関し、「枠を超えて考える(think outside the box)」よう促した。締約国数か国は、提案されているロードマップ草案を支持し、これは柔軟性があり、学習事項を反映して更新可能であり、多くの作業を短い時間枠の中に収められると指摘した。ある開発途上国グループは、この提案について考える時間を追加してほしいと求めた。締約国は、次回会合の前にこの提案について検討することで合意した。
SBI
REDD+支援の協調:締約国は、結論書草案について審議した。多数の締約国は、REDD+窓口の会議を2019-2021年の間に開催し、COPに対し、その継続を奨励するかどうかSBIでの審議を求めるよう要請する文章について、これを支持すると表明した。ある締約国は、会議の時期の特定に異議を唱えた。別な締約国は、少なくとも2023年まで会議を開催し、そのマンデートをSBI 59で再検討すると明記することを提案し、5年の時間枠での作業という自国の希望を指摘した。締約国は、「非公式な非公式」方式で会合する予定。
キャパシティ・ビルディングに関係する問題:非公式協議では、結論書草案をパラグラフごとに審議した。ある開発途上国は、ある先進国の反対を受ける中、キャパシティ・ビルディング枠組の実施で一定の進捗が見られた、しかしギャップはまだ存在すると明記するよう文章の更新を要請した。締約国は、これについて以前に合意された表現を使うことで合意した。開発途上国数か国は、キャパシティ・ビルディングに関するダーバン・フォーラムの作業に対する感謝の意を表明することに反対し、現在のところ、その作業は不十分であり、より多くの時間を割くべきだと指摘した。締約国は、この問題に関する橋渡し的な文章で合意した。
非公式協議が続けられる予定。
技術メカニズムの定期評価の範囲及びモダリティ:非公式協議で、締約国は、評価の範囲とモダリティのどちらを最初に議論するか意見が分かれたが、結局、範囲を先に議論することに落ち着いた。締約国は、共同進行役の非公式ノートにある範囲のセクションを改定し、支援の適切性を評価するため検討されるべき小項目の一つとして「支援レベル(level of support)」を追加するという開発途上国数か国の提案で合意した。
非公式協議が続けられ、評価のモダリティに焦点を当てる。
対応措置に関する改良型フォーラム及び作業計画:共同議長のAndrei Marcu (パナマ)は、コンタクトグループに対し経済モデル化ツールに関する2日間の会合期間内訓練ワークショップに関するフィードバックを求めた。このイベントは価値があるという点では意見が一致したが、ウガンダは、モルディブ、ガーナ、その他の支持を得て、その技術的すぎる傾向からすると、実際のモデル研究者を聴衆にするワークショップにした方が良かったのではないかと述べ、丸2日間の交渉時間を費やすよりは会合前のイベントにする方を希望した。シンガポールは、このワークショップは良い一歩であるとして称賛した。
共同議長のMarcuは、その後、改良型フォーラムをレビューする最初の意見発表を招請し、締約国は、これをCOP 24という期限までに達成する方法について議論した。ガーナは、事務局が提出文書をとりまとめ、締約国が回答すべき主要な質問をまとめるよう提案した。議論が続けられる。
SBSTA
協定6.2条 (協力的手法):締約国は、協力的手法に関するガイダンスの要素案を記載するSBSTA議長の非公式文書について審議を続け、明確化するための質問事項に焦点を当てた。これらの質問事項は、大半が非公式文書及びSBSTA 47の共同進行役非公式ノート第3版との違いにまつわるものであった。
SBSTA議長は、要素を次のように時系列で記載するため第3版を再構成したと説明した:事前の締約国の報告及びレビュー;これに対応する調整;定期的で事後の締約国の報告及びレビュー。次の点に関し質問が提起された:ガバナンスのアレンジ・オプション;環境十全性;バッファー(緩衝)ベースの登録簿システムの運用。
非公式協議が続けられる予定。
SBIのジェンダーに関する会合期間内ワークショップ
SBIのジェンダーに関する会合期間内ワークショップは、水曜日、一日を通して開催された。
午後の分科会では、次の項目が議論された:ジェンダー別のデータ;ジェンダーの分析及び予算化;ガバナンスと協力メカニズム、これはジェンダー対応型の気候政策に情報を提供し、促進することを目指す。
ガバナンスと協力メカニズムに関するグループで、参加者は、特に次に関するものなど、各国の経験及び学習事項に関し意見交換をした:各国政府が、気候計画策定に女性及びジェンダー問題を入れる際の政府の責任範囲;気候変動及びジェンダー国内窓口の制度上の位置:窓口が役割を果たすための協力メカニズムの必要性;ジェンダーを政府各省庁を横断する主流のものにする;地方及び農村部地域社会において気候変動が女性に与える影響の差異化。
一部の参加者は、各国政府の異なる省庁間の縦割り構造を嘆き、政府内の中心に位置する組織にジェンダー及び環境問題の全体像保持を義務づけるべきだと述べた。ある参加者は、女性に対する差別撤廃委員会が発表した3月20日のステートメントに注目するよう求めた、このステートメントは気候変動の概念の下での災害リスク削減におけるジェンダー関係のものであり、このステートメントはキャパシティ・ビルディングに役立つツールであると強調した。
Suva専門家ダイアログ
SBI議長のDlaminiは、Suva専門家ダイアログは「我々の地域社会をより強靭なものにするための旅路(journey to make our communities more resilient)」を歩み始めると強調した。
損失と損害のワルシャワ国際メカニズム (WIM) 執行委員会共同議長のVhalinavho Khavhagali (南アフリカ)は、執行委員会は参加者の経験、知識、目的感覚が専門家ダイアログを建設的にするよう期待していると強調した。
COP 23議長職でフィジーのLuke Daunivaluは、参加者に対し、極端な天候現象、海面上昇、農業への影響に対し、世界中のコミュニティが効果的に対応できる方法に注目するよう促した。
WIM執行委員会共同議長のErling Kvernevik (ノルウェー)は、損失と損害に関する2016年報告書での主要な結論に注目した、これには次のことが含まれる:現在のリスク管理は大半が極端な現象及び急激に発生する現象を志向している;緩慢に発生する現象への対応には大きなギャップがある;既存の資金制度は、全てのものが利用できるわけではない;影響は国の能力を超える可能性がある;既存の資金制度は適切でない可能性がある。
その後、参加者は、リスクの評価、削減、移転、保持の4つのラウンドテーブルに分かれて議論した。議論の内容は、木曜日の専門家ダイアログのプレナリー会合で報告される予定。
廊下にて
交渉の3日目、ボン会議場内の雰囲気は外の天気を反映:晴れた青空の下、春のざわめきと楽観的な雰囲気があふれていた。
緩和の野心と気候科学との合致に役立つと多くのものが希望するタラノア・ダイアログは、この日午前中、待望の開会を迎えた。昼には、2018年9月にカリフォルニアで開催される地球気候行動サミットに関する特別ブリーフィングが行われ、野心引上げで非締約国利害関係者が果たせる役割に関し楽観的な見方が生まれた。あるベテランの参加者は、締約国は特にパートナーシップを通して約束を深める機会を得たと述べ、IPCCの1.5℃に関する特別報告書が緊急性の感覚を加えてほしいと述べた。
しかし、地平線には雲がでてきていたようだ。パリ協定作業計画に関する非公式協議の中には、締約国が従来からの立場表明を行った協議もあり、熟練の交渉担当者は、「いつもの容疑者(usual suspects)」が戻ってきたと嘆いた。