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Summary report, 27 July – 2 August 2024

61st Session of the IPCC (IPCC-61)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、これまでに6回の包括評価報告書を発表。第7次評価サイクルを立ち上げたばかりであり、今回の第61回会合では、この第7次評価(AR7)サイクルの基礎を築くという極めて重要な作業を行う予定。特に第7次評価サイクル中に作成予定の都市と気候変動に関する特別報告書、及び短寿命気候強制力に関する手法論報告書の概要で合意し、さらに第7次評価サイクル全体の戦略計画スケジュールの議論を進める予定である。

主要な問題に関し、多様な意見が交わされたが、2つの報告書の概要では意見の一致に至った。戦略計画スケジュールでは、合意できず、次回の会議に回されて、多くのものが失望した。

概要での合意で、この会議を締めくくることができ、代表団は安堵していた。特に全ての会議に参加できなかった少人数の開発途上国代表にとっては、有意義な会議であった。

今回の会議では、参加性向上が議論の中心となったほか、査証問題、第7次評価サイクルのタイムラインが議論された。参加性の向上を優先する必要性では意見が一致したが、これをどう実現するかでは、多様な意見が述べられた。

IPCC-61は、ブルガリアのソフィーで、2024年7月27日から8月2日に開催され、400名近くが参加した。7月26日にはプレナリー前のブリーフィングが行われた。

IPCCの簡略史

IPCCは、人為的な気候変動とその影響や対策に関する理解を深めるため、世界気象機関(WMC)と国連環境計画(UNEP)が1988年に設立した組織。加盟国は195カ国。新規の研究やモニタリングは行わず、世界中の科学者のボランティア活動により、国際的なピアレビューされた科学及び技術面の文献を評価し、気候変動の国際交渉に情報を提供する。

IPCCは次の3つの作業部会(WGs)で構成される:

  • 作業部会I(WGI)は、気候変動の科学的根拠を扱う;
  • 作業部会II(WGII)は、気候変動の影響、適応、脆弱性を扱う;
  • 作業部会III(WGIII)は、温室効果ガス(GHG)排出量の削減及び気候変動の緩和のオプションを扱う。

各作業部会は、2名の共同議長及び7名の副議長を擁するが、WGIIは8名の副議長を擁する。

共同議長は、技術支援ユニット(Technical Support Units (TSUs))の支援を得て、各作業部会のマンデート達成を指導する。IPCCは、他に、国別温室効果ガス・インベントリに関するタスクフォース(TFI)を有し、TSUの支援を得て、IPCC国別GHGインベントリ・プログラムを監督する。当該プログラムの目的は、国別のGHG排出量及び除去量の計算並びに報告作成を行う、手法論及びソフトウェアを開発し、精緻化し、その活用を奨励することである。

IPCCは、一つの評価サイクルの期間において発表される評価報告書、特別報告書、手法論報告書、技術報告書の作成作業を行う、議長団を選出する。議長団は、当該評価サイクル期間を任期とし、1名のIPCC議長、複数の副議長、作業部会共同議長及び副議長、TFI共同議長で構成される。IPCCはスイスのジュネーブに、WMOをホストとする、常設の事務局を置く。

2007年、IPCCは、全米国副大統領のアル・ゴア氏とともに、ノーベル平和賞を授与された、受賞理由は、「人為的な気候変動の知識を確立し、広め、対応策の基礎を築いた」ことであった。

IPCC作成文書

IPCCは、設立以来、包括評価報告書、特別報告書を作成し、気候変動に関する科学情報を提供してきた。

これまでに6つの包括評価報告書を作成、それぞれ1990年、1995年、2001年、2007年、2014年、2023年に発表した。その構成は4部に分かれており、うち3部は各作業部会の報告書、第4部は主要な結論をまとめた統合報告書である。各作業部会の報告書は、包括評価報告書(報告書本文:underlying 報告)、テクニカルサマリー(TS)、政策決定者向けサマリー(SPM)で構成される。各報告書は厳しい査読を受ける、第1回は専門家による査読、第2回は専門家と政府による査読、第3回は政府による査読である。これらの査読作業終了後、各作業部会のプレナリーではSPMの行ごとの承認を行い、パネルによる採択を受ける。

3つの作業部会報告書が受理され、そのSPMsが承認された後、これらの報告書及び他の報告書の重要な結論をまとめた統合報告書が作成され、そのSPMはパネルによる行ごとの承認を受ける。

IPCCは、この他にも気候変動に関する特別報告書を作成してきた。第6次評価サイクル(AR6)では、次の3件の特別報告書が作成された:

  • 1.5℃地球温暖化に関する特別報告書(SR1.5)、2018年10月のIPCC-48で承認;
  • 気候変動、砂漠化、土地の劣化、持続可能な土地の管理、食料安全保障、陸上生態系における温室効果ガスフラックスに関する特別報告書(SRCCL)、2019年8月のIPCC-50で承認;
  • 変動する地球の海洋及び雪氷圏(SROCC)、2019年9月のIPCC-51で承認。

このほか、IPCCは、各国のGHG排出量報告の指針となる手法論報告書を作成、グッドプラクティス報告書は2000年及び2003年に承認され、国別GHGインベントリのガイドラインは、2006年に承認、国別GHGインベントリの2005年ガイドライン精緻版(2019 Refinement)は、2019年5月のIPCC-49で採択された。

第6次評価報告サイクル

第6次評価サイクルは、2015年、IPCC-42における議長団の選出から開始され、2016年のIPCC-43では、AR6サイクルにおける3件の特別報告書(SRCCL、SROCC、及びUNFCCC第21回締約国会議の招請を受けたSR1.5)の作成、及び2019年精緻版の作成で合意した。さらに第7次評価サイクル(AR7)における都市と気候変動に関する特別報告書の作成でも合意した。

IPCC-44からIPCC-47 (2016年-2018年)では、2つの特別報告書及び2019年精緻版の概要が採択されたほか、短寿命気候強制力(SLCFs)の考察も議論された。ジェンダーに関するタスクグループの設立でも合意、パリ協定のグローバルストックテイクに配慮した、IPCCの今後の作業構成を議論するタスクグループへの委任条件も作成した。

2018年10月のIPCC-48では、SR1.5及びそのTSが受理され、SPMが承認された。この報告書では、温暖化を1.5℃の上昇で抑えるのは可能であるが、社会全体の「前例のないほどの」変革が必要であると結論付けた。

2019年では、IPCC-49で2019年精緻版の概要の章を採択、その本文を受理、IPCC-50では、SRCCLとそのTSを受理、SPMを承認した、IPCC-51は、SROCCとそのTSを受理、SPMを承認、このほか、ジェンダーに関するタスクグループの委任条件が採択され、SLCFsの手法論報告書を AR7サイクル中に完成させるとの決定書が採択された。

2020年2月のIPCC-52は、COVID-19のパンデミックによるシャットダウンを控え、AR6の統合報告書の概要を採択、これには序章のほか、次の3つのセクションが含まれた:現在の状況と傾向;気候及び開発の未来;気候変動への近未来の対応。IPCCのジェンダー政策及び実施計画が採択され、ジェンダー行動チームが設立された。

2021年8月のIPCC-54は、COVID-19パンデミックのため、バーチャル方式で開催され、AR6のWGI報告書「気候変動2021年:自然科学ベース」を受理、そのSPMを承認した。IPCC-55は、2022年2月にバーチャル方式で開催され、AR6のWGII報告書「気候変動2022年:影響、適応、脆弱性」を受理、そのSPMを承認した。IPCC-56も2022年3月から4月、バーチャル方式で開催され、AR6のWGIII報告書「気候変動2022年:気候変動の緩和」を受理、そのSPMを承認した。

第6次評価サイクルの統合報告書の作成は大幅に遅れたことから、IPCC-57は、主にIPCC議長団の人数、組織、構成の問題を議論、ジェンダーの平等及び組織内の運営における平等とジェンダー平等を高めるための行動についても議論した。

2023年3月のIPCC-58は、統合報告書を採択し、SPMを承認した。これにより、IPCCの第6次評価サイクルは完結した。

第7次評価報告サイクル

2023年7月、IPCC-59は、新しい議長団を選出、議長にはJim Skea (英国)が就任し、第7次評価サイクルの作業を指揮することとなった。

2024年1月、IPCC-60は、作成文書及びそのスケジュールなど、今後の作業計画に関する重要な決定を行ったが、サイクルのスケジュールに関しては、重要な要素での意見が一致せず、戦略計画スケジュールの議論を、次回の会合に持ち越すことで合意した。

IPCC-61報告書

2024年7月27日土曜日、IPCC議長のJim Skea及びIPCC事務局長のAbdalah Mokssitは、IPCC-61の参加者を歓迎した。

開会の辞で、ブルガリアの環境・水大臣のPetar Dimitrovは、気候政策の策定における科学の役割の重要性を強調、ブルガリアの科学アカデミーの黒海地域の気候リスクに関する科学会議への注目を求めた。

議長のSkeaは、この会議は第7次評価サイクルの基礎を築く極めて重要な会議であるとし、レビューする文書について説明し、参加性に関する戦略計画スケジュールに焦点をあてた。

世界気象機関(WMO)のAbdulla Al Mandous会長は、WMOの2023年世界気象状況報告書によるとGHGレベルや地表温度、海洋の熱量及び酸性化、海水面の上昇などで、最高記録となっていると指摘し、人類史上の転換期にあると強調したほか、早期警戒システムの重要性を強調した。

ソフィア市のVassil Terziev市長は、参加者を歓迎、ソフィア市はグリーンで持続可能な開発にコミットしており、2030年までに実質ゼロ排出量にすることを目指していると述べた。さらに、同市長は、ソフィア大学のGate Instituteの業績にっ焦点をあて、変動し続ける気候への適応は、特に都市にとり、極めて複雑なものだと指摘、環境保護と(経済)成長は同時に実現できるとして、今後の課題に取り組む上での科学への信頼感を強調した。

ブルガリア外務省のNevyana Miteva副大臣は、ブルガリアは気候ニュートラルを目指していると述べ、カーボンの削減、オフセット、そして国際協力が重要であると強調した。どの国も貧困と戦うかそれとも惑星を守るかの二者択一を迫られるべきではないとし、持続可能な道を探る上での科学の重要性を強調、明確な警告メッセージを声高に発するよう、IPCCに求めた。

UNEP次長のElizabeth Mremaは、AR7サイクルの報告書はUNFCCCの第2回グローバルストック(GST-2)へのインプットとして重要であるとし、適切なデータと分析が重要だと述べた。同次長は、IPCCの報告書作成をUNFCCCプロセスとタイミングを合わせる方法について、検討するよう求めた第28回締約国会議(COP 28)の招請を想起し、SLCF手法論に関するIPCCの作業を称賛、この手法論はパリ協定の国家決定貢献(NDCs)の策定において、重要であると述べた。

UNFCCCの適応担当ディレクター、Youssef Nassefは、1℃の温暖化でも問題だとするIPCCの予測を指摘、IPCCの識見は貴重だと述べた。同氏は、今回の会合で戦略計画の策定を終わらせるよう求めた。

議長のSkeaは、少人数の代表団に配慮して、譲り合いの精神を発揮するよう求めた後、暫定議題書(IPCC-LXI/Doc. 1)を提出、パネルはこれを採択した。

第60回会合報告書案の承認

土曜日、議長のSkeaは、IPCC第60回会合の報告書案(IPCC-LXI/Doc 11. Rev. 1)を提示、サウジアラビア及びインドは、特定の国を指す表現に反対し、さらに「多数の(many)」及び「複数以上の(multiple)」という表現は、必ずしも中立的ではなく、マイノリティやマジョリティの見解を暗示するとして反対した。中国は、会議報告書には開発途上国の懸念を反映するべきだと指摘、議長のSkeaは、懸念を抱く代表団は事務局に直接コンタクトしてほしいと述べた。

金曜日、IPCC事務局長のMokssitは、多数の修飾語を削除した修正版を提出した。

チリは、これらの修飾語は従来から使用されてきたのではないかと質問、前例を破ることへの不安を示した。米国は、原案の方が議論内容に忠実だったと指摘、今後の報告書の前例にするべきでないと述べた。

議長のSkeaは、チリには柔軟な姿勢を求め、米国の要請は今回の会合報告書に記載すると述べた。

デンマーク、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ノルウェー、セントキッツ・ネイビス、スウェーデン、スイス、英国は、チリ及び米国の懸念に同調、不安感を記録するよう求めた。ドイツは、国連環境総会など、他の会議の報告書における修飾語の使用が参考になると述べた。

インド及びサウジアラビアは、米国の要請を記録することに異議を唱えた。

チリは、前例の有無を明らかにするよう再度求め、IPCC法務官のJennifer Lew Schneiderは、報告書原案の用語は前例あると述べた。

議長のSkeaは、この議題項目の目的はIPCC-60報告書の承認であり、将来の会議報告書の作成ではないと述べ、IPCC61の報告書は今回の意見交換の全てを反映していないとの理解の上で、改定された報告書を採択するよう求めた。

その後、改定された報告書は採択された。

最終決定:決定書(IPCC-LXI-8)において、パネルは、IPCC第60回会合の報告書を承認した。(IPCC-LXI/Doc. 11, Rev. 2)。

オブザーバー組織の認定

土曜日、議長のSkeaは、IPCCオブザーバーの認定申請(IPCC-LXI/Doc. 3 Rev. 1)を提起、IPCC法務官のLew Schneiderは、次の12の組織が認定を要請していると述べた:the Bureau international des poids et mesures;Children and Youth International;Save the Climate;the Central American Commission on Environment and Development;the International Society of City and Regional Planners;the International Organization for Standardization;the Woodwell Climate Research Centre;the Wellcome Trust;the West African Science Service Centre on Climate Change and Adapted Land Use;the Human Rights and Environment Improvement Centre;the Degrees Initiatives;the Coalition Climat pour la Biodiversité et le Développement。

ロシアは、毎年のアウトリーチ活動を計画するなど、オブザーバーに義務を課すことを提案したが、 s法務官のLew Schneiderは、そのような変更は、IPCCの認定オブザーバー組織の政策及びプロセスのレビューを必要とすると説明した。南アフリカは、オブザーバーの認定が保留となっている4件の組織に関する最新情報を要請した。法務官のLew Schneider及び議長のSkeaは、前回の会議以後、これらの組織のレビューに進展は見られないと述べた。パネルは認定要請を受理した。

最終決定:決定書(IPCC-LXI- 2)において、パネルは、オブザーバー組織の認定に関するIPCCの制作及びプロセスに則り、IPCC-LXI/Doc. 3, Rev.1に記載する組織をオブザーバーと認定すると決定する。

第7次評価報告(AR7)における作成文書

気候変動と都市に関する特別報告書の概要:土曜日午前中、IPCC副議長で都市に関する特別報告書のスコーピングの科学ステアリング委員会(SSC)委員長のDiana Ürge-Vorsatzは、同委員会の作業報告書 (IPCC-LXI/Doc. 2 and IPCC-LXI/INF. 1)を提出、92カ国の政府から1293名、31のオブザーバー組織、20名のIPCC議長団メンバーが参加する包括的で、多様性があり、厳格なスコーピング・プロセスであると強調した。Ürge-Vorsatz委員長は、地域バランス、ジェンダーの参加性に注目、行動可能で政策関連性のある概要の策定に注力したと述べた。WGII共同議長のWinston Chow及びBart van den Hurkは、都市の多様性に注目する必要があると強調した。

Ürge-Vorsatz委員長は、概要案には次の5つの章と用語集が含まれると説明した:第1章は概観;第2章は傾向、課題、機会;第3章は都市のリスク及び排出量を削減する行動及び解決策;第4章は、変革を推進し、加速化する方法;第5章は、都市のタイプ及び地域ごとの解決策。

サウジアラビアは、次を求めた:先進国と開発途上国の差異の観点から見た報告書の概観作成; 「公正な移行」及び開発途上国の柔軟性の強調;持続可能な開発目標(SDGs)とのシナジー及びトレードオフ、並びに開発途上国での優先策同士の競合;都市部の経験及び課題の多様性。適応は開発途上国にとり極めて重要であり、多くの文章を割いて記述されるべきこと。

インドは、概要は追加作業が必要だとし、都市の分類について、文献を待つことなく、進めることへの懸念を表明した。

イタリアは、参加性を高めたとしてSSCを称賛し、IPCCに対し、このSSCの作業を支持し、信頼するよう求めた。

アイルランドは、実務者のスコーピング会議参加を歓迎し、報告書の作成においても、実務者の参加が必要だと述べた。英国は、参加性の高い概要作成への感謝を表明、概要とその説明とを受け入れると述べた。

米国は、気候危機を語る上で、都市は極めて重要であるとし、各都市の政策決定者を支援できる、利用者に優しい、簡潔な報告書の作成を求め、この特別報告書は、都市問題全体を広範に評価するべきではないと述べた。

東チモールは、次を指摘した:後発開発途上国(LDCs)の多くでは、人口の大部分が都市近郊の非公式居住地で生活、都市部と農村部の区別がつきにくい;全ての章で、損失損害を扱うべき;1.5℃目標達成での都市の役割を強調するべき。マラウィは、南アフリカとともに、概要案での都市の定義づけを質問、都市部と農村部の区別が適用できない場合もあると指摘した。日本は、農村部と都市部の相互のつながりに関心を表明し、食料安全保障における農村部の重要性を指摘した。

議長のSkeaは、昼休みに質疑応答を行うとし、12カ国ほどが待機していると述べ、コンタクトグループを設置するべきで、日曜日に、都市のタイプによる差異化、及び適応と緩和の扱いを議論する会合を開催すると述べた。ドイツは、グループの議題をこの2つの問題に絞ることに反対した。

議長のSkeaは、協議の結果、コンタクトグループの議題に「その他の問題」を加えることとすると述べた。昼休み後、議論が再開され、各国は提示されたとおりの概要を支持、セントキッツ・ネイビスは、概要案を歓迎し、この報告書で1.5℃経路への道が拓けることを希望した。

ノルウェーは、居住者の福利を目指す都市作りが必要だとし、緩和と適応のバランスをとると同時に、排出削減及び実質ゼロを達成する方法に注目し、多くの事例研究で都市間の多様性を捕捉できると述べた。ノルウェーは、概要の些少な改正には賛成できるが、大幅な改正には賛成しかねると述べた。

ルクセンブルクは、提示された概要案を支持、都市の定義づけを求め、作業部会を横断する手法への支持も表明した。

ドイツは、IPCC-61では各章のタイトルを決定すること、及び都市での行動により暮らしやすく持続可能な将来を確保できると証明することを求めた。フランスは、簡潔で読みやすい報告書にし、科学の知識がなくても理解しやすいタイトルを選ぶべきだと述べ、都市における循環、食料安全保障、食品ロスといった概念を追加し、オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書への言及も求めた。

デンマークは、行動を促す報告書にすることが重要だとし、異なるタイプの都市の実務者及び政策立案者に関連性のある情報を記載し、都市でのGHG排出量削減方法など、適応及び緩和に利用可能な科学の情報も記載するべきだと述べた。

ブラジルは、実際の経済影響、及び行動を取らないことによる費用増の情報を記載するよう求め、このような情報は、極端な天候現象発生時の緊急移住戦略、及び脆弱な人口の予防的移住に関する政策決定において、重要であると述べた。

中国は、事例研究の件数の増加、手法及びツールへの言及、開発途上国における能力不足への注目を求めた。アルゼンチンは、先進国及び開発途上国間の特に資金面での能力の違いを明記するよう求めた。アルジェリアは、貧困への取り組み、開発での地域差、持続可能な開発とのシナジーとトレードオフの議論が重要だと述べた。

ブルンジ、マレーシア、ケニアなど、多数の国は、適応と緩和とのバランスのとれた議論を求めた。スイスは、緩和及び適応を合わせた議論を支持、これによりシナジーとトレードオフが明確になると述べた。

スウェーデンは、ガイドラインとタイトルの政策関連性に着目した。オランダは、概要を歓迎し、実務者の参加で、報告書は行動可能なものになると述べた。

ベルギーは、社会経済面への考察を歓迎、社会学及び人間学の専門家の参加を求め、アウトリーチ及び教育面の強化を求めた。

ブルンジは、都市のマッピング、ハイリスク地域の特定が重要だとし、ケニア及びモーリシャスとともに、早期警戒システムの重要性を説いた。モーリシャスは、防災とリスクのマッピングに注目した。

イラクは、気候変動は食料及び水の安全保障を脅かすとし、適応の重要性を強調した。

インドネシアは、どの都市もそれぞれユニークな特性を有しているとし、都市のタイプ分けに注目、都市のミクロ気象に対する気候変動の影響に注目した。

マレーシアは、UNFCCCの流れ、特に低カーボンな開発、気候にレジリエントな開発の流れに合わせるよう求め、コンゴとともに、教育と啓発の重要性を強調した。

チリは、自然ベースの解決策(Nature-based Solutions (NbS))が重要だとし、行動を取らないことの費用増を指摘、ブラジルとともに、不適応の考察を求めた。

ケニアは、都市の分類学への注目を歓迎し、特にグローバル・サウスにおける急速な都市化を考慮し、持続可能な開発と貧困撲滅の議論を提案した。さらに、事例研究が重要であり、能力の違いを考慮するベストプラクティスへの言及を求めた。

コンゴは、人間の健康への影響を議論するよう求め、都市部での人口密度を考慮し、遺伝の変異及び新規の疾病のリスクを論じるよう求めた。

ウクライナは、戦争で破壊された都市も都市分類にいれるべきだと求めた。南アフリカは、土地の所有権及び土地利用の「歴史的な影響」の考察を求め、ナイジェリアとともに、早期警戒システムへの注目を支持した。

スペインは、第5章ではマルチレベルなガバナンスを強調し、都市での医療システムの重要性に注目するよう求めた。

日曜日、コンタクトグループでは概要について議論した。月曜日の午後、SSC共同議長のÜrge-Vorsatzは、概要の改訂版を提起、プレナリー及びコンタクトグループからのフィードバックを統合するべく、次の3つの分科会に分かれて議論したと説明した:都市のタイプの最善の分類方法;報告書での適応と緩和のバランス及び持続可能な考えの取り入れ;その他。WGII共同議長のChow及びvan den Hurkは、改定文書の議論を促し、共同議長のvan den Hurkは、第1章における「都市分類学(city typologies)」の「都市の特性の多面的な枠付(framing of multi-dimensional urban characteristics)」への言い換え、第3章における「内容別(context-specific)」の適応及び緩和のレベルの追加に注目した。共同議長のChowは、「農村部及び都市部のシステム(rural and urban systems)」の両方に言及し、適応と緩和を同等に扱うべく努力したと指摘した。

サウジアラビアは、特に次の記述を提案した:

気候リスクに焦点を当てるのではなく、都市の持続可能な開発面での重要性を議論する;

開発における気候へのレジリエンスの記述を第3章に移す;

優先策の競合、シナジー及びトレードオフへの言及;

シナリオ開発での公平性(equity)の重要性;

緩和への言及に、「適応」を追加する;

緩和オプションの議論に、緩和及び除去の技術への言及を加える;

行動コストの議論に行動しないことのコストの議論を加えて、費用効果の高い政策の全体像を提供する;

「公正な移行」への言及;

目標への言及を削除;

総論の議論をすることで、全ての利害関係者と関係性をもたせる。

多数の国が、現在の追加事項及び概要に満足の意を表し、トルコは、ルクセンブルク、シンガポール、デンマーク、オランダ、スウェーデンとともに、SSCプロセスへの信頼が重要だと述べた。ドイツは、これ以上の改正は最小限に留めるべきだとし、細かいところへこだわると、現在の概要のバランスが崩れると警告した。

多数の国が、早期警戒システムへの言及追加を要請した。ケニアは、アルジェリア、バルバドス、ボツワナ、ブルキナ・ファソ、キューバ、デンマーク、エジプト、フランス、ギニア、インド、イタリア、リビア、マラウィ、マレーシア、セネガル、南アフリカ、スウェーデン、ザンビアとともに、早期警戒システムについては第5章の中に専門のセクションを設けて議論するべきだと述べた。韓国は、早期警戒システムのためのベストプラクティスについて、ガイドラインを設けるよう求めた。

アルジェリアは、砂漠化による移住への言及を求めた。ギニア及びシンガポールは、沿岸都市への言及を求めた。バルバドスは、都市の文化面、社会面の役割は、第1章で論じるべきだと述べた。

ブルキナ・ファソ、ケニア、ボツワナは、緩和と適応のバランス改善を支持した。

インドは、適応と緩和のバランスは改善したが、損失損害という表現の単数から複数への変更は疑問視し、これまで複数で表現してきたIPCC文書はでAR6 WGII SPMだけだと指摘した。エジプト、インド、インドネシア、東チモール、南アフリカは、単数の表現を希望、さらにインドは、開発レベルは都市のレベルを指すのか、それとも国の開発レベルを指すのか質問し、「行動しないことの費用(cost of inaction)」という新しい表現の意味について、説明を求め、この表現は、「行動することの費用(cost of action)」と対をなすべきだと述べた。

ウクライナは、破壊された都市の再建ロードマップの記述を求め、第3章と第4章の順番を入れ替えて、この議論を展開する方が、筋が通ると述べた。米国は、文書の冗長性を指摘、特にタイトルや目標の表現を明確で簡潔なものにするよう求め、政策規範性の表現は避けるべきだと述べた。

米国、スイス、ベルギーは、SDGsの表現の再挿入を求めたが、ケニアは、SDGsは「持続可能な開発」よりも短期のものだと述べた。イタリアは、デンマーク及び日本の支援を得て、第2章に公平性への言及を入れるよう求め、地域全体の持続可能な開発への言及を希望した。

ノルウェー及びスウェーデンは、消費ベースの排出量が果たす役割に注目、郊外の排出量を削減しない限り、都市の排出量削減は起こり得ないというAR6の結論を想起し、北マケドニアの支持を得て、需要側対策及び経済インセンティブの可能性を探るよう提案した。ノルウェーは、イタリアの支持を得て、枠付の章での大気汚染の記述削除に疑問を呈した。

アンティグア・バーブーダ、ベリーズ、ハイチ、キリバス、マラウィは、小島嶼開発途上国(SIDS)及びLDCsと関連付けた報告が必要だと強調し、第5章に事例研究をいれるよう求めた。さらに、ハイチは、次を求めた:観光(ツーリズム)の考察、海洋生態系と都市地域の相互作用;都市が実施面で直面する障壁への対応;1.5℃目標に向けた世界的努力の観点から考えた都市の役割。

エジプトは、メガシティへの注目を支持し、ケニア及びメキシコは都市周辺の地域、イラクは世界遺産の場所に注目した。

英国は、改訂版での「開発状況」への言及を疑問視し、「開発のダイバーシティ」という表現を希望、第5章では都市を世界的観点から考える必要があると強調し、イタリア及びフランスとともに、過去、現在、未来の傾向を明らかにするよう求めた。

ベルギー、デンマーク、フランス、ルクセンブルク、マレーシア、スウェーデン、スイスは、循環性への言及追加を支持したが、サウジアラビアは、反対した。アゼルバイジャンは、ベルギーの支持を得て、ジェンダー問題への言及を求めた。

南アフリカは、第2章での公平性の言及を支持し、NbSを「都市部NbS」とすること、生態系ベースの適応への言及を提案した。

ブルンジは、低炭素でレジリエンスのある都市への言及を支持、都市部では緑地帯、都市計画、公共交通、コミュニティの参画、キャパシティビルディング、教育、訓練、啓発の重要性に着目した。

ベルギーは、都市での差異の重要性を強調、これを章横断の概念として用いることを提案した。

コンゴは、「タイプ分け(typologies)」という用語の削除に疑問を呈し、NbSへの言及維持を求め、「長期排出戦略」という用語への着目を提案、アフリカ諸国の過半数は、長期の削減戦略を約束していると述べた。モザンビークは、解決策ベースでの報告を求め、都市の分類では、いかなる都市も分類漏れがないよう求め、さらにLDCsの気候変動への適応を支援する資金スキームを提案した。

キリバスは、全ての都市をタイプ付けし、SIDS及びLDCsにおいては、特に廃棄物及び汚染問題に取り組む能力が必要だと強調、地方での解決策、世界的な解決策に関する細かい議論を求め

ハイチ及びギリシャは、都市では、ツーリズムにより健康リスクの増加、及び負担増加が考えられると指摘、ギリシャは、森林火災への言及を求めた。

C40 CITIESは、気候及びエネルギーに関する世界市長会議の立場も代弁し、特別報告書では人間の居住での「ダイバーシティ」を考慮するよう求め、Innovate4Citiesとのつながりを指摘した。

SAVE THE CHILDREN INTERNATIONALは、部門を横断する手法が必要だとし、データの細分化も必要だと述べた。INUIT CIRCUMPOLAR COUNCILは、プロセスにおける先住民の知識の取り入れと、専門家の知識の導入にはギャップがあるとして懸念した。

SSC議長のÜrge-Vorsatzは、SSCはコメントを考慮するとし、執筆者の作業及び事例研究を査読する機会はこれからも提供されると強調した。WGII共同議長のVan den Hurkは、各章の概要はあくまでも暗示に過ぎないと述べた。

火曜日の夜、SSC議長のÜrge-Vorsatzは、概要改訂版(CRP.2)を提示、全ての要請項目を記載するか、示唆していると述べた。3つの作業部会の共同議長らは、それぞれ変更箇所を説明し、特に下記の項目への注目を求めた:

  • 緩和及び適応のバランス;
  • AR6用語集での損失損害(losses and damages)の記述;
  • 「持続可能な開発及び気候レジリエンス」の下でのSDGsの議論;
  • グローバルな見方及び地方の見解のつながり、及び農村部と都市部のシステムのつながり;
  • 緩慢に発生する推進要素の例として海水面上昇を論じ、沿岸問題に注目する;
  • ツーリズムを含める、システム間及び部門間の脆弱性の変化;
  • 行動をとらないことのコストではなく、行動をとることのコストと便益を論じる;
  • 共通するがそれぞれに特有の緩和及び適応;
  • 需要側の緩和措置;
  • 循環;
  • 防災;
  • 生態系ベースの適応;
  • 医療システム;
  • 早期警戒システム;
  • 都市の特徴;
  • プラスの事例とベストプラクティス;非炭素化;
  • 資金及び資金手段。

議長のSkeaは、章ごとのコメントについて説明、その後、アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、バハマ、ベラルーシ、コンゴ、キューバ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ハイチ、アイスランド、イタリア、キリバス、ルクセンブルク、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ペルー、セントキッツ・ネイビス、シンガポール、スウェーデン、スイス、東チモール、トルコ、英国、ウクライナは、反映されていない要請事項もあるが、妥協の精神で、この改訂版の概要を受け入れたいと表明した。

ドイツは議題が山積みだとし、柔軟な対応を求めた。英国は、スコーピング・プロセスの専門家を信頼するよう求めた。ベルギーは、概要の原案の方がスコーピング会議の結果に近いが、新しいバージョンを受け入れる用意があると述べた。

バルバドス、ハイチ、セントキッツ・ネイビス、東チモールは、最終報告書にはSIDSの状況を特記しなければだと述べた。東チモールは、海洋生態系と都市とのリンクは入れる箇所について、質問した。

サウジアラビアは、アルジェリア、インド、イラク、ケニア、南アフリカとともに、概要の章ごとの議論を提案した。

ケニアは、インド及びアルジェリアの支持を得て、概要全体での適応の扱いを改善し、「不適応」という表現の削除を提案、脆弱性、影響、リスクの項目に「損失損害」を入れるよう求めた。

インドは、「ホットスポットとしての都市(cities as hotspots)」という表現は、執筆者に予断を与えかねないとして削除を要請した。

マラウィは、第2章の「計画された及び計画されていない移住(planned and unplanned relocations)」に「気候が招いた(climate induced)」を付すよう求めた。チャドは、LDCsは最も気候変動の影響を受ける国々であり、その特別な状況を考慮することが重要だと述べた。ベニンは、早期警戒システムの記載を称賛し、海水面の上昇は沿岸の都市にとり、極めって重要な問題だと述べた。

サウジアラビアは、特に次の点を強調した:目標の設定は国の管轄権内の問題であり、IPCCは特定の都市の目標を設定する、もしくは暗示することはできない;実質ゼロは、国家レベルの目的であり、都市には実質ゼロ目標を設定する権限はない;概要では、SDGsとのシナジー、及びトレードオフを論じる必要がある。

リビアは、概要は改善されるべきだと述べ、その詳細を検討するよう求めた。

CONFLICT AND ENVIRONMENT OBSERVATORYは、軍事紛争による世界の排出量の増加を認識する必要があると強調した。FRIENDS WORLD COMMITTEE FOR CONSULTATION (FWCC)は、概要はインスピレーションを与えるものだと述べた。

議長のSkeaは、多くの国がSSCの受け入れを認めていると指摘し、各国には柔軟性を求め、提示された概要案の受入可能性を質問した。

ケニアは、グローバル・サウスからのものも含め重要なコメントを提供したと指摘し、概要案に入れるよう求めた。

インドは、草案に関し特定のコメントの提供を求めた。サウジアラビアは、審議継続が必要だとし、パネルは火曜日に2つの議題項目で結論を出したと指摘した。

米国は、ハイチの支持を得て、多くの国が、現状のままの草案を受け入れる意思を示している一方で、特定の懸念や改善も求めてもいると警告した。

デンマークは、文章の練り直しは容易ではないとし、自国のコメントも入れたいと述べた。

インドは、執筆者へのストーリーの提案を減らすよう求め、移行及び不適応の表記に反対し、リスク削減から「強力(strong)」という修飾語を削除、非炭素化した都市という表現は「緩和」を主張しすぎると述べた。

オランダは、概要に対するコメント募集を再開する場合は、コメントを出すかどうか、再検討すると述べた。

サウジアラビアは、議論の終了を押し付けるべきではないとし、特に次を求めた:シナジー、トレードオフ、優先度の競合に言及する;歴史的な社会経済の動向への言及を再挿入する;緩和及び適応の統合ではなく、「リンク付け(linking)」に置き換える;キャパシティビルディング及び技術移転など実施手段に言及する。

ケニアは、報告書は拙速で出すべきでないと述べた。

ノルウェーは、SSCは素晴らしい仕事をしたと述べ、自国は先に進める用意があると述べた。

米国は、気候にレジリエントな開発、非炭素化、緩和事例への言及削除に反対し、損失損害が5つの章の概要の中で、4回登場していると指摘し、都市自体が設定した目標は、多くの科学研究の対象になっていると述べた。米国は、トルコとともに、文書の議論が再開された場合は、それぞれの妥協的立場を再検討する可能性があると述べた。

SSCのメンバーは、概要案自体は徹底した議論の成果であり、各代表団のガイダンスと科学的な助言とをバランスさせた結果であると強調した。WGI共同議長のRobert Vautardは、議論の堂々巡りを続けるか、専門家の概要を改定するか、決定しなければならないと述べた。WGI共同議長のZhangは、完全なものなど無いと発言、WGII共同議長のvan den Hurkは、各国の懸念を取り上げる余地はあるのではないかと述べた。

サウジアラビアは、都市の目標に対する異議を申し立て、これを「計画(plans)」など、別な言葉に置き換えるよう提案、インドは、特に、移行型の適応、不適応、非炭素化都市、転換点という表現の除去を主張した。ケニアは、「極めて緩和中心型の」概要を改定するよう再度求めた。イラクは、古代遺跡への影響を考慮するよう要請、経済対策と対応措置への言及を提案した。

議長のSkeaは、SSCにおいて、微妙なバランスを壊さない形での対応方法を検討することを提案した。

木曜日の朝、SSC議長のÜrge-Vorsatzは、概要改訂版(CRP.3)を提示、WGII共同議長のvan den Hurk及びChowは、SSCによる概要の編集と明確化について説明した。

SSC議長のÜrge-Vorsatzは、共同作業の成果を尊重し、提示された概要案の受け入れを検討するよう求めた。

オーストラリア、アゼルバイジャン、バハマ、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、キューバ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ハイチ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、日本、キリバス、ルクセンブルク、マレーシア、モナコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、韓国、ルーマニア、セントキッツ・ネイビス、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、ウクライナ、米国など多くの国は、提示された草案の受け入れを表明したが、さらなる変更には強く反対した。フランスは、一部のコメントを盛り込んだだけだが、これ以上の遅れを避けるため、この新しい草案を受け入れても良いと述べた。オランダは、草案の改定には驚かされたと述べた。

インドは、新しい草案はかなり改善されていると指摘する一方で、次を求めた:社会の転換点への言及削除;不適応の概念に対する深刻な懸念;低炭素開発が第4章に残されたままだと指摘;第5章に損失損害が入っていない理由は。インド及びサウジアラビアは、概要の章ごとのレビューを求めた。

ケニアは、サウジアラビアの支持を得て、SSCの作業への感謝を表明したが、改定案には自分たちの懸念が反映されていないと述べた。ケニアは、適応のギャップは広がりつつあるとし、アルジェリア、南アフリカ、ブルンジ、ギニア、ナイジェリアとともに、第5章での損失損害の議論を提案、不適応や転換型適応への言及削除を提案した。

ロシアは、サウジアラビアの支持を得て、「都市による実質ゼロ目標の採用」という表現は受け入れられないとし、目標は国家のためのものだと発言、長文のサマリーは実務者向けではないとし、各章50頁までに制限することを提案した。カナダ、イタリア、ルクセンブルク、スウェーデン、ウクライナは、実質ゼロ目標を採用した国内の都市の例を挙げた。

米国は、SSCは各国政府のコメントを報告書に入れると確信していると述べ、次を強調した:適応サイクルとは、十分に確立された概念である;不適応は、脆弱な国内地域での開発が進む先進国においても懸念材料である;損失損害は、概要全体で広くカバーされている。無数の異議が申し立てられているが、議論を前へ進め、提示された概要を支持することを提案した。

カナダ、チリ、イタリア、マレーシア、ノルウェー、英国、米国など、多くの国は、概要は方向性を示すものに過ぎないと想起し、科学に対し規範的過ぎるとの懸念を表明した。韓国は、専門家としてスコーピング会議に参加したとして、パネルに対し、専門家を信頼するよう求めた。

フィンランド、デンマーク、オランダ、スウェーデンは、先進国での不適応の事例を指摘した。

東チモールは、米国及びオランダの支持を得て、会議の終了時には妥協するよう促した。

インドは、「不適応の回避」などの表現は規範的であるとし、サウジアラビア及びケニアの支持を得て、自分たちの懸念の「議論拒否」をしている代表らへの懸念を表明した。

中国は、イタリア、英国、オランダの支持を得て、SSCは多様な意見を執筆者等に伝えることを提案した。インド、ケニア、サウジアラビアは、この提案に懸念を表明した。インドは、手順規則をどう守るのかと質問した。

アルジェリアは、IPCC副議長のRamón Pichs-Madrugaを進行役とするハドルで、これらの問題を議論するよう提案、パネルもこれに同意した。木曜日の夜、Pichs-Madruga副議長は、次の項目などで進展があったと報告した:不適応を、「不適応な実施方法(maladaptive practices)」に変更する;実質ゼロを、「目標達成で都市が果たす役割(the role of cities in achieving targets)」に変更する;第5章では、脆弱性、影響、リスクとともに損失損害も記載する。同副議長は、社会的な転換点、及び転換点全般に関する問題は残されたと指摘した。ハドルでの議論が再開された。

金曜日朝、IPCC副議長のPichs-Madrugaは、ハドルの結果を報告、参加者の柔軟な姿勢を称賛、第2章の「過去に例のない転換点(unprecedented tipping points)」という表現を、「過去に例のない状況(unprecedented situations)」に置き換え、第4章での「転換点(tipping points)」 への言及は残し、これに「の可能性(the likelihood of)」を付すことで合意したと指摘した。

金曜日午後、パネルは決定書草案を承認、この草案では特別報告書の作成予定及び作成費用の予算を記載する。

最終決定書:決定書(IPCC-LXI-5)において、パネルは次で合意した:気候変動と都市に関する特別報告書の概要、これは決定書(IPCC-LXI/Doc. 2, Rev. 1)の附属書に記載;特別報告書作成スケジュール;IPCC信託基金プログラム及び予算に関する決定書IPCC-LX-10記載の特別報告書作成予算。

短寿命気候強制力に関する手法論報告書(SLCFs)の概要:土曜日、国別温室効果ガス・インベントリに関するタスクフォース(TFI)共同議長のTakeshi Enokiは、概要に関するTFI作業文書(IPCC-LXI/Doc. 6)を提出、タイトル案の変更に焦点をあて、この報告書は2006年IPCC国別温室効果ガス・インベントリ・」ガイドラインの補足文書であるが、2006年版を置き換えるものでも、精緻化するものでもない、むしろ2006年版に合わせて用いるべきものだと述べた。さらに、報告書の様式も2006年版IPCCガイドラインに沿うものであると述べ、PM2.5の排出量をSLCFの一種とするかどうか、専門家の意見は分かれていると述べた。

EUは、研究と発明のギャップを報告書に記載するよう求め、どの研究分野に資金を充てるべきかを明らかにすべきだと述べた。

インドは、タイトル案の変更に懸念を表明、2006年版ガイドラインとのリンクは新たな義務

及び約束を作り出すとし、独立した報告書に戻すよう求め、Vo.1の序章において「大気汚染及び健康との相互関係」に言及するかどうか再考を求め、PM 2.5排出量を入れるかどうかは、ガイドラインに従うよう求めた。

フランス及びアイルランドは、手法論報告書でのWGIの参画について、説明を求めた。概要に関する非公式な意見交換は、日曜日に開催され、Shanea Young (ベリーズ)及びFrank McGovern (アイルランド)が共同議長を務めた。

月曜日、共同議長のYoung及びMcGovernは、非公式な意見交換の最新情報を報告、次を議論していると述べた:WGI及びWGIII報告書の重要性;SLCFsの推計値に関する文書は中立的なものを希望; 一部の問題ではさらなる遂行が必要。TFI共同議長のEnokiは、残された問題は報告書全体のフォーマット、及び議論する短寿命の種類であると述べた。

インドは、非公式な意見交換には何の法的立場もないとし、共同議長が結果を報告することに異議を唱えた。議長のSkeaは、少人数の代表団は非公式な意見交換に参加できない可能性があり、非公式な意見交換について、プレナリーに報告することは重要だと述べ、チリ、デンマーク、オランダ、スウェーデン、スイス、ウクライナ、その他もこれを支持した。

ドイツ、日本、ルクセンブルク、ノルウェー、セントキッツ・ネイビス、その他は、提示された概要への支持を表明した。

アルジェリア、アゼルバイジャン、中国、インド、イラク、サウジアラビアは、PM 2.5と水素の削除を求め、この2つの種を入れるには、十分な文献がないと主張した。ベルギー、カナダ、チリ、デンマーク、ドイツ、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデン、米国は、両方の種の記載を支持、カナダとともに、手法論報告書は各国の排出量の推計を助ける目的のものであり、文献が揃うのを待つことに警鐘を鳴らした。

PM 2.5の記載を希望したカナダ、チリ、モロッコ、スペイン、スウェーデン、スイスは、計測すれば部門別の影響を評価できるようになり、検証及び透明性に有用であると指摘した。ポルトガルは、PM 2.5ではなく、より精密な定義づけを求めた。

水素に関し、ベルギー、カナダ、オランダ、ニュージーランド、英国、米国は、水素に関しては十分な科学的根拠があると指摘、さらに以前のIPCC報告書に記載された実績があると述べた。米国は、水素に関する新しい文献に注目、ベルギーは、エネルギー移行及び配送産業での水素の役割の高まりに注目した。

チリは、文献を評価するのはパネルの責任ではないとし、ベルギー及びその他とともに、文献での意見の一致があるかどうか、及び文献が十分なものであるかどうかの決定では、専門家を信頼するよう求めた。

サウジアラビアは、報告書の層状の手法(tiered approach)に異論を唱えた。共同議長のEnokiは、どの層で報告するかの選択は報告する国の裁量であると応えた。ニュージーランド、セントキッツ・ネイビス、カナダは、層状方式は現在の報告の実施方法とも合致すると指摘した。

中国及びロシアは、手法論の自主性を強調、中国は、各国の能力の違い及び国情の違いを考慮する必要があると強調した。

インドは、報告書の序論で大気汚染や健康に言及するのは手法論報告書には相応しくないとし、気候変動と大気汚染は近接する言葉ではないと主張、硫黄系のエアロゾルに言及しない理由の説明を求めた。エジプトは、大気汚染と気候変動の区別に賛成したが、ナイジェリアは、全ての排出源を含めること、大気汚染と気候変動を合わせた議論を希望した。

報告書のタイトルについて、インド及びサウジアラビアは、手法論報告書を独立文書とするよう求めたが、デンマーク、ドイツ、スペイン、モロッコは、2006年版ガイドラインの補足文書に入れることを支持した。

スウェーデンは、火災はSLCFsの排出源かどうかを質問、共同議長のEnokiは報告書ではSLCFsの排出源だと確認した。

FWCC及びUNION OF CONCERNED SCIENTISTSは、PM 2.5の重要性を強調、森林を吸収源から排出源に換えるリスク、及び森林火災は人為的な排出源の重要な構成要素でありその排出量に関する手法論ガイダンスが必要性を指摘した。

コンタクトグループでの手法論報告書の議論が続けられ、その後、月曜日午後のプレナリーに続けて、ハドルでも議論した。

火曜日朝、IPCC副議長のChang’aは、月曜日夜のハドルの結果を報告、建設的な議論をしたが、結論は出なかったと述べた。議長のSkeaは、次の問題が保留されていると述べた:報告書のタイトル及びその立場;第I部(ガイドライン全般)の序論での大気汚染と健康の相互関係性の記載; PM2.5及び水素の記述挿入。同議長は、UNFCCC事務局に対し、報告書の立場を明らかにするよう招請した。

UNFCCC事務局は、SLCF手法論報告書をどれだけ活用するかはUNFCCC締約国次第であると説明、隔年透明性報告書のモダリティは2006年版ガイドラインの利用を義務としているが、この報告書はガイドラインの範疇ではないため、2006年版ガイドラインの利用は義務ではないと述べた。同事務局代表は、UNFCCCの決定書によれば、湿地に関する補足文書についても、その利用を奨励されているだけだと指摘し、IPCCで合意されたタイトルの如何にかかわらず、UNFCCCでの報告作成に今回の文書をつかうかどうかは、UNFCCC締約国自体が決めることであると述べた。

TFI共同議長のEnokiは、新たなタイトル案「国別温室効果ガス・インベントリのIPCCガイドラインに対する2027年補足手法論:短寿命気候強制力」を提示、2006年版ガイドラインを外す一方で、原則との一貫性、明確性は確保したと指摘した。米国、デンマーク、スイスは、この提案を支持したが、インド及びサウジアラビアは反対した。

議長のSkeaは、この議題項目に関する文書(IPCC-LXI/Doc. 6)に従い、主題を短いバージョンにするよう提案した。インド、サウジアラビア、アルジェリアは、提案に同意したが、オランダは、デンマーク、スイス、ベルギー、ノルウェー、英国の支持を得て、2006年ガイドラインの補足文書に言及する小題目の追加を希望した。ブラジルは、どちらも受入可能だが、短い方を希望すると述べた。

WGIII副議長のEduardo Calvoは、2件のIPCCグッド・プラクティス・ガイドライン報告書(不確実性の管理のガイドライン、及び土地利用・土地利用の変化・森林のガイドライン)は1996年版IPCCガイドラインの改訂版とされたと指摘し、今回の文書の扱いはUNFCCCの締約国次第であると述べた。

追加協議の後、TFI共同議長のEnokiは、「IPCC国別GHGインベントリ・ガイダンスの補足文書(Supplement to IPCC national GHG inventory guidance)」という小題目を提案、オランダは、小題目には2006年版IPCC国別インベントリ・ガイドラインを入れるべきだと再度述べた。

インドは、サウジアラビアの支持を得て、「国別GHGインベントリ・ガイダンス(guidance to national GHG inventory)」という小題目を提案した。中国は、意見集約分野に注目、小題目を外し、「SLCFに関するIPCC手法論報告書(IPCC supplementary methodology report on SLCF)」とすることを提案した。

IPCC副議長のPichs-Madrugaはハドルでの協議を続けた。

大気汚染と健康のインターリンクの問題に関し、議長のSkeaは、序論でのインターリンクの記述削除を提案、パネルも同意した。米国は、重要な問題への言及が失われるが、妥協の精神で受け入れると述べた。

PM2.5に関し、議長のSkeaは、IPCC副議長のChang’aに対し、附属書Iの第4パラグラフに関する非公式な文案の提示を求めた。この文案作成の目的は、ティア1手法論方式にガイダンスを提供できるだけの科学的根拠のある分類を示すとともに、全てのIPCCインベントリ部門を網羅しようとするものであり、新しい手法論報告書の対象となる種類や、評価済みの種類、対象となる可能性のある種類で、地球規模及び地域の排出量に一定の貢献をするものとしては、NOx、CO、NMVOCs、SO2、NH3、{H2}、BC、OCがあり、その他、放射バランスに関係する主な微粒子も含まれる。

議長のSkeaは、現在は微粒子の議論に焦点を当てるべきだとし、他の種類の議論に予断を加えるべきではないと述べた。

米国は、「気象学的に関連性のある(climatologically relevant)」であれば全ての種類を網羅できるし、「放射バランス(radiative balance)」よりも関連性があると強調した。

サウジアラビアは、一つの種類(微粒子)に焦点を当てるのではなく、全ての種類を議論することを主張、微粒子や水素に関する科学的な根拠の健全性を確信していると述べた。

チリは、直接/間接の放射バランスは存在しないとし、修正を求めた。英国は、「放射バランス(radiative balance)」を「気候関連の(climate relevant)」に置き換えることを提案、インドは、放射バランスは残し、直接・間接の削除を支持した。

ハドルの後、副議長のChang’aは、合意できた部分もあるが、水素の問題は議論が必要だと報告した。委任条件(スコープ)については、水素を削除し、「放射強制力に関連する主な微粒子」とする改定案を提示した。

Chang’a副議長は、執筆者に対する指示書の46項では「BC/OC排出量については、測定方法及び排出係数など、ガイダンスを提供すると述べた。脚注については、次の3つのオプションを指摘した:

  • オプション1:水素はスコープの範囲内だとし、将来、水素の排出量を推計するティア1手法の策定根拠を探ると記載する;
  • オプション2:追加のSLCFsについては、AR7の期間中、将来の手法論ガイダンスの作業部会において、議論すると記載する;
  • オプション3:意見の相違があること、及びSLCFsは将来の手法論ガイダンスに有用であることから、AR7期間中にさらなる議論を行う、この報告においては、水素はスコープに含めると記載する。

副議長のChang’aは、オプションでの合意はなかったと報告した。

チリは、スコーピング文書に執筆者が挿入した文章を削除するのは、危険な前例になると懸念し、水素の重要性を削ぐことに反対しているわけではないが、妥協案を見出してはどうかと述べた。英国は、スコーピング会議は科学的な助言を集める場であるとし、水素を記載するに足る情報があるというのが参加した専門家の意見であると強調した。カナダは、専門家の助言を退けようとする政府代表がいることは問題であると述べた。WGI共同議長のVautard及びWGI副議長のSonia Seneviratneは、スコーピング会議の専門家は水素を含めるに足る文献があると、全員一致で決議していると強調した。

アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、オーストラリア、バハマ、ブラジル、カナダ、チリ、デンマーク、EU、ドイツ、イタリア、ノルウェー、セントキッツ・ネイビス、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、ウルグアイなど、多数の国は、スコーピング会議の専門家を信頼するよう求めた。

スウェーデン、ノルウェー、デンマークは、水素はリストに入れるべきだが、妥協案としてオプション1なら考えても良いと発言した。スイスは、水素を入れることは国レベルでの包括的なガイダンスを提供することになるとし、オプション1を支持した。カナダは、オプション1はスコーピング会議の助言の精神を守るものだと述べた。

日本及びウルグアイは、オプション1支持を表明した。

アルジェリア、ブルンジ、コモロ諸島、コンゴ、エジプト、インド、イラク、ケニア、リビア、モロッコ、ニカラグア、ナイジェリア、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、シリア、ウガンダ、ベネズエラ、ザンビアなど多数の国はオプション2を支持した。サウジアラビアは、水素の強制力は科学的に確率されていないが、オプション2は妥協案であると述べた。

ロシアは、IPCCは疑問がある場合には拙速に評価する必要はない、水素や微粒子など他の種類はWGsで評価する予定だと述べた。ケニアは、アフリカ地域では水素に関するデータが少ないと述べた。イラクは、信頼できる科学的な根拠に基づいた報告書にするべきだと述べた。中国は、水素を手法論報告書で論じるのは時期尚早だと述べた。

オーストラリア、オーストリア、ベルギー、EU、ドイツ、アイスランド、キリバス、ルクセンブルク、メキシコ、モナコ、ニュージーランド、ペルー、英国、米国、その他は、オプション1を希望したが、オプション3も考えられると述べた。米国は、ドイツの支持を得て、水素が気候強制力を持つかどうかはAR6で結論を出したとし、ニュージーランド、及びブラジルとともに、水素は気候関連強制力を持つとする文献は十分に存在すると述べた。

アゼルバイジャンは、オプション3を支持した。

火曜日にハドルが行われ、議長のSkeaは、翌水曜日の朝、交渉は中間点を迎えたとし、交渉のペースアップを促した。IPCC副議長のChang’aは、火曜日夜のハドルでは意見の一致はなかったと報告、二者間協議を行う必要があると述べた。

木曜日夜、副議長のChang’aは、大半の問題が解決したと報告、水素に関する附属書作成の可能性について議論を続けると述べた。このためのハドルが再開された。

金曜日朝、副議長のChang’aは、木曜日のハドルについて報告、合意に達したとし、脚注において、水素に関しては十分な評価がされていないが、放射強制力に関連するH2排出量は「将来の手法論策定の根拠(Basis for future methodological development)」と称する付録で論じるとの脚注を挿入することで合意したと述べた。

議長のSkeaは、タイトルから「大気汚染と健康の相互関係(interlinkages with air pollution and health)」を削除することで合意したと指摘し、TFIに対し、全ての変更をまとめた文書をパネルに提出するよう求めた。

金曜日午後、議長のSkeaは、決定書草案を提出、パネルはこれをコメント抜きで採択した。

最終決定書:最終決定書(IPCC-LXI-7)において、パネルは、特に下記を決定した:

  • 手法論報告書「短寿命気候強制力のインベントリに関する2027年版IPCC手法論報告書」を作成する;
  • 附属書1記載の手法論報告書作成の委任条件、附属書2記載の目次の表、附属書3記載の専門家及び執筆者に対する指示書、附属書4記載の作業計画に関する決定書など、各種決定書で合意する;
  • 手法論報告書作成の予算は、IPCC信託基金プログラム予算に関する決定書IPCC-LX-10に示す。

第7次評価サイクルの戦略計画スケジュール

議長のSkeaは、水曜日の朝、IPCC共同議長のAR7スケジュール案(IPCC-LXI/Doc. 10)を提示、決定書IPCC-LX-9の要請に従い、IPCC-60でのコメントも盛り込んだと指摘した。さらに、議長団の第67回会合では、WG及びTFI共同議長作成の初期計画を議論したことも指摘した。

WGIII共同議長のKatherine Calvinは、このスケジュール案はIPCC-60で出てきた、サイクルの長さ、及び参加性という2つのテーマに対応していると指摘、AR7の長さはAR5及びAR6と同等の6年半の予定と指摘した。

WGIII共同議長のJoy Pereiraは、議長団はAR7での参加性向上に尽力すると強調、AR7での参加性の改善に関する文書IPCC-LXI/INF. 15を指摘、次の活動が予定されていると述べた:公平性及び参加性を高めるネットワーク作り;ジェンダー・ダイバーシティ・参加性の専門家会議の成果を考慮;執筆者専門の訓練;サイクル期間を通し、議長団による調査及び議論により参加性をモニタリングし、評価する。

アルジェリア、ブルンジ、中国、コンゴ、インド、ヨルダン、ケニア、リビア、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、ベネズエラ、その他は、このタイムラインに異議を唱え、確固として成果を上げるには文献及び政府の査読を行う時間を長くとるべきと述べた。

インドは、AR7の最後の1ヶ月にいくつもの製品を作成する正当性はないと述べた。サウジアラビアは、前例のない厳しいスケジュールだと述べた。

ケニアは、インドと南アフリカの支持を得て、適応はAR7でも適切に扱われるべきだとし、AR6はアフリカ地域の適応に関し、「西欧」の文献に過剰依存したと評価されていると指摘した。同代表は、コンゴと共に、AR7のスコーピング会議と第1回執筆者会合との間隔が短すぎると指摘した。

南アフリカは、サウジアラビアの支持を得て、GST-2の期間に一つの評価サイクルを押し込むことに反対し、これではIPCCは政策関連性を高めることがっできず、かえって政策規範性を高めかねないと指摘した。

サウジアラビアは、UNFCCCの枠を超えた広範な読者に目を向けるよう求め、IPCCプロセスの参加性、客観性、独立性は何者も否定できないと述べたが、提案されているタイムラインでは科学として不完全になりかねないと懸念した。

ザンビアは、第1回のGATでは適応及び脆弱性に十分な注目がされていないとし、WGII報告書を優先し、GST-2に間に合わせることを提案、現在のスケジュールでは、一部の代表団の負担増加を考慮していないと述べた。コモロ諸島は、スケジュールの柔軟性向上を求め、中国は、文献の評価及び作業のレビューには十分な時間を取る必要があると述べた。ベラルーシは、このスケジュールでは経済移行国に十分な時間が与えられていないと述べた。

インドは、タイムライン案は、確固とした科学的文書を提供するための道筋に立っていないと述べ、他の政府間プロセスに合わせて研究を早めることに反対した。

アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、オーストラリア、バハマ、バルバドス、ベラルーシ、ベルギー、ベリーズ、ブラジル、カナダ、チャド、チリ、デンマーク、EU、フィンランド、フランス、ドイツ、ハイチ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、キリバス、ラトビア、ルクセンブルク、マラウィ、モナコ、ナイジェリア、ノルウェー、ペルー、ポーランド、ポルトガル、韓国、ルーマニア、セントキッツ・ネイビス、セント・ルシア、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス、東チモール、トルコ、英国、ウクライナ、ウルグアイ、米国、ジンバブエは、スケジュール案に賛成し、その多くは、GST-2へのフィードインの重要性を強調した。

セントキッツ・ネイビスは、極めて重要な(crucial)IPCCからGST-2へのインプットの欠如は、IPCCが政策関連性を失うことを意味すると強調し、SIDSにとってのIPCCのインプットの重要性を説いた。同代表は、スケジュールは圧縮も拙速もしてはならないとし、AR7のタイムラインはAR6より短いが、AR6が3件の特別報告書をまとめたのに対し、AR7では1件だけだと指摘した。ポルトガルは、気候の危機を強調、政策決定者が行動に移れるための科学情報を得ることが有益だと述べた。

ドイツは、タイムラインを急がせようとするものがいることは驚きだとし、バルバドス及びポーランドとともに、GST-2までに全作業部会の作業を利用可能にすることが最も重要だと述べた。ドイツは、さらに発刊日を早めることは可能だとも指摘した。

ベリーズは、米国、オランダ、英国の支持を得て、IPCC報告書を予定より早めて、2028年のボン気候変動会議までに仕上げる必要があるとし、GSTにフィードインできてこそ、意味があるのだと強調した。

東チモールは、IPCCは政策立案者にとり、最も重要な情報源であるとし、特にLDCsには研究するだけの科学能力がないと指摘して、UNFCCCと合わせたタイムラインを要求した。バハマは、SIDSの住民は皆、気候変動の影響を痛いほど感じていると述べた。

デンマークは、タイムライン案は決して急がせるものではないとし、多くの政策がタイムリーな情報確保を求めていると述べ、ウクライナの支持を得て、IPCCが議長団の提案するタイムラインで、作業部会報告書を提供できないのは、極めて大きなリスクがあると述べた。

ルクセンブルクは、このスケジュール案はIPCCの政策関連性を保持する一方で、その科学的な確実性も確保すると述べた。

フランスは、査読作業時間はAR6の場合ほど厳しい制約がされていないと強調した。

フィンランドは、科学的な政策立案を欲するのであれば、次回の報告書を早期にまとめ上げ、政策立案者が科学に基づく政策行動をとれるようにするべきだと強調した。

マラウィ、セント・ルシア、キリバス、アンティグア・バーブーダ、その他は、SIDS及びLDCsからタイムリーに報告を得ることが極めて重要だと強調し、セント・ルシアは、危機に直面した場合、通常の運用は変えるべきであり、SIDSが危機に直面しているのは明らかだと述べた。

イタリアは、IPCCの評判に取り返しのつかない傷が付く可能性を警告し、議長団の作業に全幅の信頼を置くと表明、技術的な議論は進んでいるとし、タイムラインを数ヶ月ほど短縮することは考えても良いと述べた。

スイスは、国際及び国内レベルで、タイムリーに評価を提供するという1998年のIPCCマンデートを想起し、各国の政策立案者には、総合的な適応及び緩和での勧告が必要だと強調、筆頭執筆者会議の第1回を早めることを提案した。

スウェーデンは、サイクルを長引かせることは執筆者の参加に影響すると指摘し、AR7では1件の特別報告書しか予定されておらず、早期の報告書発表は可能だと述べた。米国は、キリバスとともに、執筆者からのフィードバックでは、サイクルの期間延長は期間を通した参加に課題を生じることが指摘されたと述べた。キリバスは、AR7のスケジュール短縮は可能だと指摘、3つの作業部会報告書を期限内に完成させるため、あらゆるオプションを探る必要があるとする一方、作業報告書の発表順には、疑問を抱いた。

ベルギー、ベリーズ、ブラジル、デンマーク、ハンガリー、ペルー、ルーマニア、英国、その他は、参加性の問題はタイムライン延長以外でも対応できるとし、執筆者への作業支援の継続、及びプロセスのモニタリングなどを挙げた。デンマークは、先進国と開発途上国の科学面での協力は進み出していると述べた。オーストラリアは、先住民の知識及び現地の知識を取り入れてゆくと約束した。ドイツは、スケジュールの決定書案には、参加性促進での現行の努力も記載されていると指摘した。

日本は、執筆者の訓練会合をオンラインで開催し、GATへのインプットの可能性に向けた調整などを、提案した。ロシアは、南アフリカの支持を得て、文献の期限を明らかにするよう求めた。

ブラジルは、当該スケジュール案を支持、開発途上国の直面する2つの問題、開発途上国が背負う特別な負担の問題と、開発途上国に不均等な影響を与えている気候危機においてタイムリーな科学情報が必要であるという問題の妥協案であると指摘した。同代表は、さらに、参加性の問題では科学能力の格差という本質的な問題があると指摘した。ナイジェリアは、提示された戦略計画を歓迎し、地域代表の参加、及び包括的で参加性の高い科学情報の必要性を強調した。

インドは、最善の科学を得るには時間がかかるとし、拙速は手抜き作業や報告書の撤回を招きかねないと指摘した。

チリは、研究促進の2つの組織と連絡をとっているとし、そのうちの一つ、世界気候研究プログラム(World Climate Research Programme)はタイムラインに基づき報告書を早期に発表できる体制を設計していると報告、2番目の組織、FutureEarthはタイムラインをサポートすると報告、3つの作業部会報告書をGST-2に間に合わせることが重要だと主張した。同代表は、作業量が多すぎるとの指摘に反論し、IPCCは各国の専門家からのフィードバックをまとめるため、専門家ダイアログを組織し、各国の窓口を支援するよう提案した。南アフリカは、インドの支持を得て、これに反論、各国の国内窓口の状況は大きく異なるとし、一人の人物だけで作業量を全てこなしている場合もあると指摘した。

ハイチは、開発途上国に十分な支援を提供することで、AR7は十分参加性が高く、タイムリーなものになりうると強調し、議長団に対し、SIDS及びLDCsの参加促進に集中するよう求め、GSTへの情報提供に向け、2028年6月の全報告書の完成を目指すよう求めた。

キューバは、スケジュールの議論を進めるよう求めた。ハンガリーは、プロセスの延長では参加性の解決にはならないと述べた。

WGI副議長のAïda Diongue-Niangは、AR7での参加性向上に向けた努力に注目を求め、開発途上国出身の科学者にとり、参加期間の延長は問題があると指摘、多少のスケジュールの延長は、参加性という構造的な問題の解決にはならないと強調した。

米国は、共同議長らは実施可能で参加性の高いタイムラインを提案してくると信頼していると述べた。

ケニアは、各国政府からのコメントに対し執筆者が十分対応できるようなタイムラインを求めた。

東チモールは、脆弱な諸国の能力面でのギャップとIPCC奨学金プログラムを合わせて議論するよう提案し、チャドの支持を得て、1.5℃目標達成には、全WG報告書をGST-2前に発表する必要があると述べた。

スイスは、学習事項に関する特別作業グループの成果及び検討事項を記載したIPCC-LXI/文書9での参加性関連の要点を指摘し、参加性改善の問題は、議論を続けるべきだと述べた。

アルジェリアは、開発途上国の科学者社会に柔軟性を与えるよう求めた。

ARCTIC MONITORING AND ASSESSEMENT PROGRAMME(北極圏監視評価プログラム)は、北極圏では、気候変動が現実の問題となっているとし、自組織の科学者及び先住民の知識保有者をIPCCの作業に候補指名する用意があると述べた。

CLIMATE ACTION NETWORK INTERNATIONAL (国際気候行動ネットワーク)は、気候の危機はより早く、悪化していると強調し、IPCCは、科学的に権威ある見解をGST-2までに提供することを求めた。

WGIII共同議長のPereiraは、戦略計画に関するコメントに応じ、特に、次の点を明らかにした:タイムラインの延長は扱いが厄介であり、執筆者の負担が増加する;IPCCタイムラインは、外部研究者社会のタイムラインと完璧に合わせることはできない;文献の量はサイクルごとに増加する;参加性というのは、参加した時間だけでなく、これまでの不平等を解決する努力に比例して改善される。する。同共同議長は、参加性を強化するための方法として、執筆者に対するガイダンス及び訓練の機会を提供するなど、多様な方法を紹介した。

文献に関し、WGI共同議長のVautardは、WGIだけでも、AR6サイクル全体の文献の量と同じくらいの量にある予定だとし、ロシアに対し、WGIは計画作りに積極的に貢献しており、タイムラインは守れることを保証した。

WGI共同議長のZhangは、2029年末に新しい議長団を選出できるようにするには、AR7を2029年5月までに完了しなければならないとし、これはWG評価報告書を2028年中に完成させなければならないことを意味すると述べた。同共同議長は、提案されたタイムラインを急がせてはならないとし、タイムラインを保持することでモーメンタムを保てると述べた。

WGII共同議長のChowは、時間をかけて、現実的なスケジュールを作ったとし、これを参加性が高く、確実で、政策関連性のある形で、遂行する用意があると述べた。同共同議長は、UNFCCCの適応世界目標が注目される中、適応に関するガイドラインの文献もかなりの量に上っており、開発途上地域からも多くの文献が出てくる可能性があると指摘した。

WGII共同議長のvan den Hurkは、IPCC-LXI/INF. 15に記載するとおり、参加性向上では多数の活動が行われており、専門家会議及び追加の資金調達を探る動きもあると述べた。

WGIII共同議長のCalvinは、提案されたスケジュールでのレビューの重複問題を取り上げ、WG報告書の政府レビューにはオーバラップはないと明言した。

共同議長のCalvinは、ロシアからの質問に応え、WGII報告書用の文献の締切日は2028年1月であり、WGIIIでは2028年2月であると述べた。

議長のSkeaは、政策関連性、参加性、継続的な改善が重要であることは、全員の意見が一致していると述べ、これを具体的なスケジュールに落とし込むことが課題であると指摘した。同議長は、共同議長らはこのスケジュールを支持していると指摘、全体としては、タイムラインの短縮を望むグループ、タイムラインの延長を望むグループ、そして原案維持のグループに分かれているようだと指摘し、夕方のコンタクトグループで意見の一致の可能性を探るよう求めた。

コンタクトグループのマンデートに関する意見交換が行われ、ルクセンブルクは、ドイツ、フランス、米国、スイスの支持を得て、参加性など、タイムライン以外の懸念事項も探求することを提案したが、インド、ケニア、サウジアラビアは反対した。共同議長のSkeaは、本来の目的に沿うものであれば、コンタクトグループのマンデートに含めるべきだと述べた。

木曜日の朝、コンタクトグループ共同議長のFabrice Lambert (チリ)は、水曜日夜のコンタクトグループ会合では、タイムラインの短縮化と延長の両方の提案を議論したほか、参加性を強化する方法も議論したと報告、意見の一致には至らなかったものの、その可能性はあるとの見方を示した。

木曜日夜、議長のSkeaは、IPCC-60と61で多くの時間を費やして誰もが納得する解決策を見出そうとしたが、極めて困難であったと指摘し、タイムラインに関する決定を、2024年12月のAR7スコーピング会議後まで延期することを提案し、これはIPCC原則及び手順書の付録Aのパラグラフ4.1に則った提案であると述べた。同議長は事務局に対し、次の決定書草案の作成を提案した:パネルはこの提案を議長のイニシアティブのものとして提示する;IPCC-LXI/Doc.10に留意する;IPCC原則手順書に則り、スコーピング会議の結果に基づく、戦略計画スケジュールで合意する。

サウジアラビアは、戦略計画の文書は議長団全員の合意を得たものではないと指摘し、現状では提示しないことを希望した。インドは、タイムラインはスコーピング会議に出されるのかどうかを質問し、議長のSkeaは、タイムラインはスコーピング会議に出さないことを提案、スコーピング会議はゼロからのスタートとなり、WG共同議長らの手に委ねられると述べた。

IPCC事務局次長のEmira Fidaは、金曜日の午後、決定書の初案をパネルに提示した。サウジアラビア、インド、ルクセンブルク、英国などから、原則及び手順書の付録Aパラグラフ4.1に関する質問が出された。

サウジアラビアがDoc.10への言及に異議を唱えたのに対し、議長のSkeaは、この文書はIPCC議長の権限で提出したものだと指摘した。

インドネシアは、二酸化炭素除去技術及び二酸化炭素回収使用貯留に関する手法論報告書への言及を求めたことを想起した。

事務局は、パネルに改訂版を提出、改定された文書が採択された。

セントキッツ・ネイビスは、この決定書が暗示する遅れに失望したとし、自国の失望感を記録するよう求めた。同代表は、参加性が重要であり、プロセスへのSIDSの寄与を高めること、知識面のギャップや地域代表性への対応も重要であると強調した。

ハンガリー及びドイツは、失望感を表明、ハンガリーは、さらなる遅れが生じないよう次回会合での建設的なアプローチを求めた。ドイツは、参加性強化のための具体的な方策を探る機会をのがしたとし、開発途上国の意見を適切に反映するため、IPCCのインプットをGSTに間に合わせるよう求めた。

インドも失望感を表明、開発途上国の科学者社会の参加性を懸念し、参加に必要な時間的余裕を求めた。

最終決定書:決定書(IPCC-LXI-9)において、パネルは:

  • IPCC議長提出の文書IPCC-LXI/Doc. 10、及び作業グループ及びTFIの共同議長らが作成した文書IPCC-LXI/INF. 15に留意する;
  • 決定書IPCC-LX-9を想起する、さらにIPCC統治原則書の付録Aのパラグラフ4.1に則り、スコープ、概要、スケジュール及び予算を含める作業計画に関し、IPCC第62回会合で合意する;
  • 気候変動と都市の特別報告書の概要に関する決定書IPCC-LXI-5、及び短寿命気候強制力のインベントリに関する2027年IPCC手法論報告書の概要の決定書 IPCC-LXI-7に留意する。

第7次評価サイクルにおける専門家会議及びワークショップのオプション

金曜日朝、WGI共同議長のZhangは、第7次評価サイクルにおける専門家会議及びワークショップのオプション(IPCC-LXI/Doc. 7)を提示し、作業部会を横断する協力が必要だと強調した。同共同議長は、2024年7月に2回の専門家会議が開催されたと指摘した:一つは、二酸化炭素除去技術及び二酸化炭素回収貯留技術に関する会議;もう一つは、土地利用排出量に関する会議である。同共同議長は、ジェンダー及びダイバーシティ行動に関するワークショップを2024年後半に開催する予定だとも述べた。

WGI共同議長のVautardは、次の項目に関し、2026年の第1四半期までに専門家会議を開催する予定と紹介した:WGIIを中心とする、適応ガイドライン、計測方法、及び指標に関する会議;WGIを中心とする、影響の大きいイベント及び転換点に関する会議;IPCC議長指導の気候変動の知識及び社会の対応を評価する新規の手法に関する会議。共同議長のVautardは、影響の大きいイベント及び転換点に関する専門家会議の提案書の追加文書(IPCC-LXI/Doc. 7. Add.1)を指摘し、これはWGI主導だが、全てのWGsからの寄与を受けると指摘した。同共同議長は:影響の大きいイベント及び転換点は、その結末が大規模なものとなりうるが、大きな不確実性も伴う;この題目に関する文献は増え続けている;見解も大きく分かれている;AR6では、作業部会により範囲が異なっており、調整が求められる。同共同議長は、提案された専門家会議には60名ほどが参加する予定で、AR7の第一回筆頭執筆者会議の前に開催し、世界気候研究プログラムから資金支援を受ける予定と説明した。

共同議長のVautardは、専門家会議やワークショップの題目としては、次のものが含まれると指摘した:(人の)健康と気候変動;地域の気候情報;地球観測データへのアクセス可能性;科学のコミュニケーション;シナリオ、公平性、持続可能な発展;オーバーシュート。

米国は、上記3つの題目に関する専門家会議の提案には利点もあると述べたが、資金タスクチーム(FiTT)の審議を経ることなく、コストをかけることに反対し、次回のIPCC会議でも議論できると述べた。ノルウェー、オランダ、英国も、予算への影響を慎重に検討するよう求めた。

トルコ、ルクセンブルク、デンマークなどの数カ国は、提示された専門家グループの会議での合意を支持すると述べた。日本は、特にデータ及びオーバーシュートに関する専門家会議及びワークショップを支持したが、題目が優先分野かどうかを明らかにするよう求めた。

韓国は、インドとともに、この問題はAR7スコーピング会議で議論するべきだと述べた。

影響の大きいイベント及び転換点に関する専門家会議について、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、フランス、イタリア、オランダ、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、ウクライナは、支持を表明、IPCC-60では、転換点に関する特別報告書が支持されたことを想起した。ウクライナは、転換点は厄介な問題だと述べた。

ロシアは、気候系に的を絞った転換点専門家会議を支持したが、経済システムでの転換点を明確にするよう求めた。

インドは、転換点専門家会議に反対し、多くの題目にまたがったテーマだとし、自然科学の転換点及び社会の転換点には一貫性がないと述べた。サウジアラビアも反対意見を述べ、この題目は WGIで議論されると指摘した。

スイスは、転換点専門家会議は、都市に関する特別報告書にも役立つと指摘し、地球観測データの作業と転換点専門家会議の組み合わせを提案した。専門家会議は参加性を助けるツールにもなると指摘して、ケニア、マラウィ、南アフリカ、ジンバブエの支持を得たスイスは、先住民の知識と地方コミュニティが重要だと強調し、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)と協力し、その経験から学ぶことを提案した。

気候変動の知識及び社会の反応を評価する新しい手法を議論する専門家会議について、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、チリ、キューバ、フィンランド、フランス、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデンは、支持を表明、多数の国が、先住民の知識の重要性を強調し、この点でのIPBESとの協力も重要だと述べた。フィンランドは、先住民の知識と科学を結びつける最善の手法を説明し、フィンランドではSámi(サーミ)気候カウンシルが設立され、サーミの人々の知識を気候政策に取り入れようとしていると指摘した。カナダは、先住民の知識は必ずしも西洋の科学の域に入るものではないとし、広範な先住民の参加を求めた。

ドイツは、IPCCはIPBESから学ぶことができることには賛成したが、報告書の科学的な厳密さを保つには、IPCCの統括原則及び手順の範囲内での運用が不可欠であると指摘し、伝統的IPCC文献を超える知識及び知識体系を対象とするべきかどうか、疑問を呈した。

インドは、このような枠付の会議に反対し、知識のタイプが多すぎるとし、AR7期間中に、人工知能(AI)及び機械学習に焦点を絞った会議を開催するよう提案した。

適応ガイドライン、計測方法、指標に関し、東チモールは、アルゼンチン、チリ、フランス、インド、南アフリカ、シリア、ウルグアイとともに、この題目の専門家会議開催の必要性を強調、ケニア及びサウジアラビアを含める数カ国は、適応こそ、このサイクルで優先されるべきだと述べた。

ノルウェー、インド、デンマークは、科学コミュニケーションに関する専門家グループ会議の開催ではすでに合意に達していると指摘した。

参加性という広範な題目に関し、メキシコ、ウルグアイ、ベネズエラを始めとする多数の国は、開発途上国の参加性を高める形での会議開催の必要性を強調した。東チモールは、専門家へのアクセスが限られているSIDS及びLDCsの特殊な状況を考慮する必要があると強調、英国とともに、科学コミュニケーションに関する各国窓口のためのワークショップ開催を提案、LDCs及びSIDSには気候変動のコミュニケーションに関する専門家が少ないことから、農業や他の分野のコミュニケーション・スキルの専門家も含めるよう提案した。セントキッツ・ネイビスは、同様に、多数の会議開催が過剰負担にならないか警告し、SIDSにとり最も重要な問題は参加性であると強調した。

イタリアは、これらの懸念に関し、地域フォーラムの開催や灰色文献の評価、英語以外の文献の評価など、イノベーティブな手法を検討するよう提案した。

ケニアは、専門家会議ではなくワークショップ、またはこの2つの組み合わせを提案、ワークショップであれば国内窓口が自国内の関連する専門家を選べるが専門家会議では分野が狭められると述べた。アルジェリアも、適応の計測方法及び指標に関しては、専門家会議よりもワークショップの開催を希望した。

ルクセンブルクは、専門家会議の提案を支持し、適応の指標に関しては技術的な議論となるため、ワークショップよりも専門家会議が適切だと述べた。

フランスは、イタリアの支持を得て、次を優先するよう求めた:オーバーシュート、健康と気候変動、科学コミュニケーション、さらにベルギーとともに、気候研究のためのデータへのアクセシビリティも優先するよう求めた。

ケニアは、データの少ない地域では地球観測が重要であるとし、この題目の会議を支持した。

コンゴは、気候変動が森林に与える影響に注目し、これはIPCCの優先題目にするべきだと述べ;IPCCの作業におけるAIの利用に対する懸念を表明、研究の全てがオンラインになってはいないと強調し;ケニアの支持を得て、適応のような包括的な題目に関し、全ての専門家を集める小地域会議の開催を提案した。

サウジアラビアは、IPCCとその科学的見解は政策に影響を与えると考えられており、その逆ではないと指摘、参加性及び能力に関する会議の開催を提案した。

CENTER FOR INTERNATIONAL ENVIRONMENTAL LAW (CIEL)は、気候変動の自然科学と、緩和経路を化石燃料依存の経済に固定している経済モデルとの対立に注目、転換点やオーバーシュートに関する専門家会議は太陽光地球工学のような投機性が高くリスクのある技術を進める機会になりかねないとして懸念した。

FWCCは、IPCC認定のオブザーバーには専門家会議参加の専門家を指名させてもらえないとして嘆き、人類や自然に新たなリスクをもたらしかねない投機性の高い技術への懸念を表明した。

INUIT CIRCUMPOLAR COUNCILは、IPCCの会議における先住民及びその知識に関する定義付けおよび代表者の参加が重要であるとし、先住民なしで先住民のことを決めてはならないとし、IPCCは先住民の直接参加を認めてほしいと述べた。

議長のSkeaは、会議開催の予算に関する懸念が提起されたと指摘し、IPCC事務局に対し、ルールの説明を求めた。事務局長のMokssitは、手順上の修正行動は2025年2月の FiTTの招集まで待つことになると確認した。

議長のSkeaは、協議を行い、WGsとTFIの議長団及びIPCC議長に対し、IPCC-62及びその後の会議において、専門家会議及びワークショップに関する提案書を提示するよう招請し、その提案では、IPCC-61においてIPCC-LXI/Doc. 7に関し表明された意見を考慮するよう求めた。

サウジアラビアは、Doc. 7への言及削除を提案したが、スイス、ケニア、オランダは反対し、Doc. 7にある具体的な提案を保持することが重要だと強調した。

事務局は、決定書の冒頭で関連文書に言及することは通常行われていることだと説明、議長のSkeaは、決定書一つで将来の会議の経路が変わるわけではないと指摘した。

サウジアラビアは、現状のママの決定書を受け入れると表明、パネルはこれを採択した。

最終決定書:決定書(IPCC-LXI-6)において、パネルは、作業部会とTFIの議長団及びIPCC議長に対し、IPCC-62及びその後の会合において、専門家会議及びワークショップの提案書を提示するよう招請、これはIPCC-61において加盟国政府がDoc.7に関し表明した意見を考慮し、IPCC統合原則手順書の付録A、パラグラフ7.1に沿うものとするよう求めた。

第6次評価サイクルでの学習事項に関する特別作業グループ

土曜日午後、学習事項に関する特別作業グループ(AGLL)共同議長のDebra Roberts (南アフリカ)及びBrittany Croll (US)は、同グループの成果及び審議事項を記載する文書(IPCC-LXI/Doc. 9)を提示した。共同議長のRobertsは、IPCCは常に過去に学んできたと指摘し、AGLLのマンデートについて説明、IPCC-60以後の会合期間外の作業には、5回のバーチャル方式の会議が含まれ、38カ国から69名のメンバーが参加したと述べた。

共同議長のCrollは、AGLLで議論した題目をリストアップした表を提出、AGLLの希望や支持を示すものではないと述べた。同共同議長は、パネルに対し、このリストを参考資料とするよう求めた。

議長のSkeaは、このリストは合意された行動のリストではなく、パネルが行動したいと希望する題目を示したものだと述べた。

サウジアラビアは、文書の使い方を質問し、記載された学習事項には、自国代表には支持できないものも含まれていると述べた。

チリは、記載された推奨案は良いものが多いとし、次回の報告書での灰色文献への言及に懸念を示し、この点での訓練が必要だとし、科学者の国籍及び住所に関する推奨案には問題があると指摘した。

インドは、AGLL共同議長は意見交換を推進したとして感謝を表明する一方、「参考文書(resource document)」の意味について質問した。

ベニンは、IPCCの行動オプションを強調するなど、数か所の改定案を提示した。

アゼルバイジャン、ブルンジ、デンマーク、英国、米国など、多数の国は、この文書はパネルでの今後の審議に役立つとして、歓迎した。

ルクセンブルクは、ドイツ、英国、米国、その他とともに、WGs、議長団、及びその他のものが、定期的な報告において、学習事項をどのように扱ったかを記載するよう提案した。ルクセンブルクは、IPCC統括原則及び手順に影響を及ぼす問題の議論を提案した。

議長団、TSUs、事務局、その他の管理職レベルで議論できる問題も多いと指摘したドイツは、英国、スウェーデン、オーストラリアとともに、パネルで取り上げるべき問題について、事務局で精査、特定することを提案した。

ベルギーは、スイス及びオランダの支持を得て、進捗状況を評価するため、独立した議題項目として保持し、パネルの行動の可能性など、改善を議論する計画を立てることを提案した。スイスは、意思決定プロセスをフォローすることが重要だと強調し、オランダとともに、ここで終わらせるべきでないと述べた。イタリア、カナダ、ノルウェー、ニュージーランドは、事務局による定期的な更新を支持した。

南アフリカは、独立した項目にする価値があるかどうか疑問視し、この文書を情報文書として扱うことを希望した。

韓国と日本は、直近で扱うべき措置を優先するよう求め、日本は、執筆者チームへのサポートを改善する必要があると述べた。

トルコは、学習事項のモニタリング・メカニズムの構築を提案、トーゴは、作業部会の提案を分類した文書を求めた。

CIELは、AR7では、先住民の知識に場を与え、議論するよう奨励した。

南アフリカは、インド、ケニア、ニュージーランド、シリアの支持を得て、文書名を変更し、「意見交換(exchange of views)」とすることを提案した。サウジアラビアは、「情報ノート(information note)」または「意見交換ノート(exchange note)」を提案した。

インドは、イラクとサウジアラビアの支持を得て、文書に留意するという行動を伴う表現は受け入れ難いとし、情報収集パッケージが必要だと強調した。

AGLL共同議長のRoberts及びCrollは、文書作成中に集められた情報の全体をまとめたパッケージを利用できるようにすると述べ、この文書はこれに限定されるものではなく、「資料文書(resource document)」というのは、この点を表したものだと指摘した。

サウジアラビアは、インド及び南アフリカの支持を得て、文書を参考資料として考えるのは問題だと述べた。

ドイツは、スイス、ルクセンブルク、デンマークの支持を得て、文書は参考資料でとどまるべきだと述べ、パネルは進捗報告書の要素に対し、いつでも異議を唱えることができると指摘した。

セントキッツ・ネイビスは、この問題の進め方を探るよう求め、IPCC会合は時間通り終了させる必要があるとし、少人数の代表団は、時間を延長しての参加ができないと強調した。

議長のSkeaは、文書の中身に関し「意見の一致がないことで意見が一致した」と指摘し、プレナリーへ出せる表現に関し、共同議長と法務チームで協議することを提案した。

火曜日の朝、AGLL共同議長のRoberts及びCrollは、決定書草案(IPCC-LXI-3)を提示し、異なる意見を「橋渡しする文章(bridging text)」を探求したと指摘した。

アルジェリア、ブラジル、中国、エジプト、ギニア、インド、イラク、イタリア、リビア、モロッコ、ナイジェリア、韓国、ロシア、セントキッツ・ネイビス、サウジアラビア、南アフリカ、シリア、東チモール、ウルグアイ、ベネズエラ、その他は、決定書案を支持した。

少数の国は、草案の採択には反対しないが、野心度の低さに失望した。スイスは、ベルギー、カナダ、エストニア、フランス、アイスランド、ルクセンブルク、スウェーデン、英国は、AGLLの「作業(work)」よりも「報告(report)」とすることを提案した。

スウェーデンは、フランスの支持を得て、「パネルの意見の一致を反映しない報告」という表現を提案した。カナダは、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、ハイチの支持を得て、文書の将来の利用方法を指し示すため、「行動する(acted on)」など、行動をとる表現の追加を提案した。ドイツは、アルゼンチン、チリ、モナコ、トルコ、米国の支持を得て、進捗のレビュー制度が特定されていないと嘆き、この文章はパネルパネルが「内容変更を採用する用意がある(readiness to adapt to the changing context)」ことを示すものではないと指摘した。ウクライナは、世界の急速な変化を求める一方で、制度的には現状維持を繰り返していると述べた。

他の問題の議論へ移る必要があるとの声が挙がるなか、ニュージーランドは、英国の支持を得て、進捗状況に関する報告を行うメカニズムを求める国があることを、会議報告書に記載するよう提案した。

AGLL共同議長らは、「IPCCを学習組織に留める希望」が聞かれたと指摘し、この文書は微妙な妥協の産物だと述べた。議長のSkeaは、IPCC-61会議報告書には、多数の代表の懸念を反映させると述べた。サウジアラビアは、会議報告書には、競技内容を正確に記載してほしいと述べた。

パネルは、決定書IPCC-LXI-3を採択した。

最終決定書:決定書(IPCC-LXI-3)において、パネルは、AGLLの作業に感謝し、それに留意するが、作業自体はパネルの意見の一致を表したものではないと指摘、その題目は暗示されたものであり、これ以外の題目もありうるとし、題目については、AR7期間中、適宜議論されると記述する。

資源調達

金曜日、事務局長のMokssitは、IPCC信託基金の資金状況(IPCC-LXI/INF. 5)を報告、現金収支は2500万スイスフランという健全な残高を示しており、今年末には3千万スイスフランを下回る程度になると予測した。同事務局長は、最近のIPCCプレナリー開催国であるトルコ及びブルガリアからのものも含め、直接の及び類似の寄付を供与した諸国に感謝し、AR7サイクルの開始に鑑み、基金の持続可能性を確保するべく、全てのものに対し、寄付を呼びかけた。

南アフリカは、2023年の自国の寄付額が表に記載されていないと述べた。

スイスは、IPCC事務局のホスト国として、野心的な目標を達成するための資金調達戦略について質問し、具体的な行動、タイムライン、責任範囲を明示する計画を求めた。同代表は、事務局に対し、計画策定時にはUNEPなど他のプロセスも調査し、異なる経路も探るよう求めた。事務局長のMokssitは、早速、ジュネーブの各国政府代表部に働きかけると述べ、NFCCCへの寄付とIPCCへの寄付を混同しないようにする必要があると述べた。

議長のSkeaは、資金の持続可能性を念頭に、働きかけに加わるとし、奨学金基金の評議員会(Board of Trustees)とも協力すると指摘し、このことは進捗報告書の範囲内に入ると述べた。

パネルはこの文書に留意した。

他のIPCC活動に関係する問題

IPCC刊行物委員会の委任条件:木曜日の夜、IPCC法務官のLew Schneiderは、IPCC刊行物委員会の委任条件草案(IPCC-LXI/Doc. 4)を提示し、これはIPCC-60のパネルの要請に応じて、議長団が作成した。同法務官は、この委員会は刊行物、翻訳、及び文献へのアクセスに関するパネル及び議長団の提案の実施を監督するため、さらにIPCC執筆者の文献アクセス改善、引用データ及びオプションの管理に関しIPCC事務局に助言するため、第7次評価サイクル期間中に設立されると指摘した。同法務官は、この委員会は作業部会及びタスクフォースの共同議長が、ジェンダー及び地域性を考慮して候補指名した、9名の委員で構成されると述べた。

ベルギーは、IPCC執筆者の文献へのアクセス拡大努力を表す表現について、より行動しやすい表現にするよう求め、これはIPCCプロセスの参加性強化にとり、極めて重要であると述べた。さらに、同代表は、同委員会はIPCC版権政策改定の提案を検討できるとの1項を追加するよう求めた。サウジアラビアは、この項目の追加に反対し、これはパネルが検討する事柄だと主張した。議長のSkeaは、刊行物委員会よりも、議長団やパネルに送られるべきだと述べた。

サウジアラビアは、委託条件はIPCC統合原則及び手順書を強める(enhance)とする文章の改定を求め、沿う(in line)とするよう求めた。

ドイツは、委員会メンバーは選挙手順を経るわけではないとして、候補指名される(nominated)ではなく、任命される(appointed)とするべきだと述べた。

金曜日午後、IPCC法務官のLew Schneiderは、IPCC刊行物委員会の委託条件改訂版(IPCC-LXI-Doc. 4 Rev. 1)を提示、参加者のコメントを基に改定したほか、版権政策に関する目的とスコープの新しい表現「IPCC刊行物、特に英語以外の言語の刊行物のアウトリーチを推進するため、IPCC版権政策の適用を提案する」を反映するべく改定したと述べた。

サウジアラビアは、この追加の1項はIPCC版権政策の修正を意味するのかと尋ね、法務官のLew Schneiderは、版権政策の適用するためのものであり、性悪方針それ自体の改定を意味するものではないと応えた。

ベルギーは、英語以外のアウトリーチを推進するため、版権政策の改定と更新を提案するつもりだったが、版権政策を保持しつつ、他言語に関する要求を満たせると納得したため、提案を取り下げたと説明した。オランダは、版権政策の変更を希望した。議長のSkeaは、版権の問題は、現在の報告書の範囲外であると述べた。

ドイツは、文献へのアクセス拡大努力は、資金状況と表裏一体であると述べた。

トルコは、刊行物委員会の議長団への報告は、一年に1回ではなく2回にするよう提案した。

After サウジアラビアは版権の問題をオフラインで議論する時間を求め、オランダは、これを将来会合の議題に加えるよう要請した。議長のSkeaは同意した。

追加の改定を経て、IPCC法務官は、更新された文書を提起した。

サウジアラビアは、アウトリーチへの言及について質問し、これは別な委員会やユニットで扱う問題ではないかと述べ、さらに、インドの支持を得て、刊行物委員会は議長団だけでなく、パネルにも報告するべきだと述べた。

ベルギーは、版権政策を改定せず、項目を以前のものに戻すよう求めた。

ドイツは、気候変動評価のデータ・サポートに関するタスクグループ(TG Data)は、議長団を通してパネルに報告すると指摘した。

議長のSkeaは、柔軟性はいつも求められるが、頻繁には提供されないと指摘し、この扱い方について、参加者の希望を尋ねた。

ベルギーは、すでに柔軟性は示されているとし、文書のさらなる改定を止めることはしない、ただし、版権政策は、更新及び改定の対象となりうるとし、次回の会合でも議題になると述べた。

議長のSkeaは、このコメントを会議報告書に記録すると述べ、事務局に対し、1項の削除を求めた。サウジアラビアは、懸念については理解していないと述べ、意見の一致を得ることなく、次回の議題書に項目を追加することを疑問視した。

議長のSkeaは、議題項目についての疑問点は決定書の範疇にはないと述べ、さらに、パネルはTGDataのモデルに従うよう提案、刊行物委員会は議長団に報告し、適切な場合は、同委員会からパネルに報告すると述べた。参加者は、委託条件を改定された通りで承認することで合意した。

最終決定書:決定書(IPCC-LXI-11)もおいて、パネルは、決定書の附属書Iに記載するIPCC刊行物委員会の委任条件に同意した。

IPCC奨学金プログラム:火曜日の朝、IPCC事務局は、IPCC奨学金プログラムの活動報告(IPCC-LXI/Doc. 8)を提示し、奨学金信託基金の残高は160万スイスフランを超えると指摘、評議員会(BOT)は議長職を設けることを希望していると報告した。同事務局代表は、信託証書の改定を承認し、BOT議長の任命方法を決定するほか、適切な場合は報告書に留意し、ガイダンスを提供するよう招請した。

議長のSkeaは、BOTは非公式ながら、Jean-Pascal van Ypersele (ベルギー)を議長に選出したと指摘した。van Yperseleは、BOTの立場で発言し、BOTはビデオ会議を4回開催し、IPCC奨学金基金の現在の資金源で最善を尽くすとの初期目標を設定し、資金源の拡大と多様化を図り、第7次評価サイクルの各章の科学者への追加資金を調達すると報告した。同議長は、このサイクルでは奨学金の数を増やし、活動も活発化させたいとの希望を述べた。

米国は、日本、ベルギー、ウクライナ、フランスとともに、BOTの第1回ビデオ会議での議長選出を支持し、選出者はIPCCに報告し、支持を得るべきだと述べ、この議長は、4年間を任期とするべきで、2期目の再任も可能だと述べた。

ドイツは、議長の役割を規定することを支持し、役割及び機能の委任条件の規定は有用であるとし、これは極めて小規模なBOTであると指摘し、BOTのメンバーは誰が議長を務めるかで合意でき、パネルにその情報を提供できると述べた。同代表は、さらに、奨学金での業務を歓迎し、無償融資での透明性向上を求め、プログラムの管理運営に関する業務量を、IPCC事務局から、すでに同じような業務を抱える他の組織に移管することを提案した。

フランスは、コンゴとともに、アフリカ諸国出身の代表への奨学金授与には困難が伴うとの報告について、説明を求め、事務局はこの問題に取り組んでいる途中だと応えた。

IPCC副議長のChang’aは、奨学金基金への寄付額を有効に使うと保証し、過去の39名の奨学金授与者に対し行ったアンケートの結果を指摘、その後、パネルは、議長の立場を確立する信託証券の改定を受理、議長のSkeaは、BOT 議長は理事会が選挙で選ぶべきとの考えが大多数であると指摘した。

IPCC利益相反委員会の報告書

COI公開書式の改定に関するCOI小委員会の報告:金曜日、IPCC副議長のChang’aは、利益相反委員会(COI)のメンバーの立場で発言し、COI委員会の活動報告書(IPCC-LXI/Doc. 5)を提出した。同副議長は、同省委員会がIPCC-60以後、5回会合し、COI公開書式をより明確でわかりやすくするための編集案を提案、さらにCOI委員会による利益相反の可能性に関する決定を通知するための編集案も提示した。これらの編集案には、利益相反を生む可能性がある資金面の報告、あるいは利益相反の認識に関する文章も含まれる。

サウジアラビアは、変更は必要ない、混乱を招きかねないと述べ、雇用やコンサルティングのセクションを例に取り、改定案は商業的な任命と他の雇用形式とを混同していると述べた。米国も、このセクションの「政府組織または非政府組織(governmetal or non-governmental)」の職務を含めることへの懸念を表明、校正の問題に注目した。

ドイツは、改定を支持し、この書式は透明性を高めることが目的であり、IPCCへの参加に影響することはないと指摘した。

IPCC副議長のChang’aは、懸念が表明された箇所は原案に戻すことを提案した。米国はこの提案に同意したが、サウジアラビアは、改定された報告書を見たいと述べた。議長のSkeaは、改定された報告書に関し、COI委員会で作業することを提案した。

IPCC副議長のChang’aは、COI委員会との協議の後、改定された書式を提示し、これが採択された。

最終決定書:決定書(IPCC-LXI-10)において、パネルは、決定書の附属書Iに規定するCOI公開書式の改定案に関するCOI委員会小委員会の提案を受け入れた。

進捗報告書

IPCC議長及び副議長の報告:木曜日夜、議長のSkeaは、IPCC議長及び副議長作成の進捗状況報告書(IPCC-LXI/INF. 11)を提出し、この報告書は、IPCCプロセスの信頼性と透明性を高める目的で作成された2つの新しい報告書の一つであり、もう一つは、IPCC事務局作成の進捗状況報告書であると指摘した。同議長は、この報告書はIPCCの業務、アウトリーチ、参加性活動を対象とすると述べた。議長自身の活動に関し、議長のSkeaは、特に、次の点を指摘した:IPCC議長団の第67回会議、及び執行委員会の5回の月例会議で議長を務めた;事務局とIPCC業務の執行を議論するため、ジュネーブを訪問した;事務局長及び事務局次長と複数回以上のコンファレンスコールを行った。同議長は、数か所のTSUを訪問したほか、他の訪問も計画していると述べた。

コンゴは、議長のオンライン活動はこの報告書に記載されているのかを尋ね、英国の支持を得て、将来の報告書では議長の選挙キャンペーンでの約束についても、最新の情報を提供するよう提案した。議長のSkeaは、この提案を歓迎した。

ノルウェーは、オランダの支持を得て、そのような進捗報告書は学習事項を反映できる分野ではないかと述べた。サウジアラビア、インド、南アフリカは、この提案に反対し、AGLLへの報告の制度ではまだ合意ができていないと指摘した。議長のSkeaは、遂行した活動は報告されるとし、この中にはAGLLからの題目に言及する可能性があると述べた。

ベルギー、英国、ドイツは、議長及び副議長の報告を信頼すると述べた。

議長のSkeaは、この報告書は議長及び副議長がそれぞれのマンデートの範囲内で行ったことを紹介するものであると述べた。

パネルは、IPCC議長及び副議長の報告に留意することで合意した。

IPCC事務局の報告書:IPCC事務局長のAbdalah Mokssitは、事務局の活動報告書(IPCC-LXI/INF. 9)を提示し、15名の専任チームは委任条件以上の業務を達成したと指摘、短期のプログラム・オフィサー、ロジスティック及び会議運営オフィサーを募集中であると述べた。

多数の参加者が事務局の業務への感謝を表明した。スイスは、募集状況及び人事計画について、説明を求めた。事務局長のMokssitは、両方ともWMOの人事担当チームが担当していると述べた。

ベルギーは、専門家選任プロセスに関する情報公開が有用であると述べた。

ケニアは、コンゴの支持を得て、査証問題の懸念を表明、事務局に対し、開発途上国からの参加者が全員参加できるような制度構築の検討を求めた。WGIII副議長のNoureddine Yassaaは、参加者のため支援書簡を用意した事務局の作業に感謝し、この問題に関し、各国窓口に働きかけることを奨励した。事務局長のMokssitは、開発途上国の参加者は査証取得で問題に直面する可能性があることを認め、十分な時間的余裕をもって申請するよう求めた。議長のSkeaは、査証申請では事務手続きの問題に直面する場合が多いとし、会議に関し、適切な通知を出すことが重要だと述べた。

ケニアは、査証申請でホスト国の大使館がある別な国に赴く必要があるものもいると指摘、事務局が参加者に対し、査証申請手続きの詳細を通知すれば参加状況も改善するだろうと述べた。チャドは、ホスト国の大使館と約束をとるのも大変であるとし、事務局に対し、この点、ホスト国と調整してほしいと要請した。

事務局長のMokssitは、事務局は査証問題に関し、最善を尽くしているとし、期限前に余裕をもって申請するよう求めた。

リビアは、アフリカ諸国の市民は申請を2回行う必要のある場合が多いと指摘、1回目は当該国入国の査証、2回目は短期滞在用査証(Schengen visas)のためであると述べた。南アフリカは、アフリカ諸国にある短期滞在用査証を発行する大使館と協定を結ぶことを提案した。

議長のSkeaは、これはIPCCでは毎年繰り返される問題だとし、経験を積み、解決策を探ることを提案した。

ベルギーは、会議の通知や日時の詳細をタイムリーに出す必要があると強調した。議長のSkeaは、それには、AR7戦略計画スケジュールが極めて有用だと指摘し、AR5では2年前から会議のスケジュールが予想できたことを想起した。

パネルは、IPCC事務局の報告書に留意した。

作業部会Iの報告書:水曜日、WGI共同議長のZhangは、WGI進捗状況報告書(IPCC-LXI/INF. 4)の情報を披露、特に、次の点に注目した:フランス及び中国のTSUにおける過去の及び今後の新規雇用;気候変動及び都市に関する特別報告書について、対面式のスコーピング会議には、WGI議長団の大多数及びWGI TSUのメンバーが出席した。その後、WGIはスコーピング会議報告書の作成に協力したとも述べた。AR7合同スコーピング会議に関し、同共同議長は、WGIは1,000件以上の申請を受理したとし、2024年9月までに決定する予定であると述べた。同共同議長は、作業部会横断の協力体制を提示し、これには2か月ごとの会議の開催も含めると述べた。

AR7戦略スケジュールのセクションに関し、サウジアラビアは、AR6での学習事項に関する「意見の一致」について説明を求め、WGI共同議長のZhangは、AR6よりも簡潔な報告書を目指していると述べた。インドは、戦略スケジュールでは意見の一致がないと報告書に記載するよう求めた。

フランスは、WGIの作業に感謝し、スイスは、WGIはどの専門家会議に最大の支援をするのかを尋ねた。共同議長のVautardは、影響の大きい現象及び転換点に関する専門家会議だと指摘した。トルコは、国際機関との協議続行に関する説明を求めた。

パネルは、WGI進捗状況報告書に留意した。

作業部会IIの報告書:WGII共同議長のChowは、WGII進捗報告書(IPCC-LXI/INF. 8)を提示し、特に、オランダ及びシンガポールの両国でのWGII TSUの設立と両方での新たな少数の人員の雇用を説明した。WGII AR7スコーピング会議に関し、同共同議長は、2,393名を超える候補指名を受け取ったと述べ、2024年9月に招請状を発送する予定であり、会議自体は、2024年12月9-13日、マレーシアのクアラルンプールで開催されると述べた。道教党議長は、気候変動と都市に関する特別報告書の内容における多くの更新作業について説明した。

同共同議長は、2024年4月16-19日にラトビアのリガで開催されたスコーピング会議での専門家選任プロセスでは、参加性を高める努力がなされたと強調し、1293名の候補指名のうち133名の専門家が選出されたと説明し、IPCC統括原則手順書に規定される基準に配慮したと述べ、特に科学的、技術的、社会経済的専門分野、地政学的代表;IPCCでの経験のあるものとないものの混合;ジェンダーのバランス;その他が考慮されたと述べた。

パネルは、WGII進捗報告書に留意した。

作業部会IIIの報告書:水曜日、WGIII進捗状況報告書(IPCC-LXI/INF. 2)を提出したWGIII共同議長のPereiraは、TSUの組織配分を説明し、次が含まれると述べた:TSU-Washington node(拠点)、TSUの長、科学長、少数の科学担当スタッフ及び運営スタッフで構成される;TSU-Asheville node、主に技術サービス専門職で構成される;そしてTSU-マレーシア。同共同議長は、WGIIIはAR7スコーピング会議の開催場所決定を主導したと説明、2024年12月9-13日にマレーシアのクアラルンプールで開催予定と述べた。WGIII共同議長は、この会議を共催するノルウェー政府への感謝の意を表した。

日本は、WGIIIのAR7報告書では、部門に注目するよう求め、英国は、WGIIIでの指名候補者中、専門家が何人いるかを質問、Pereira共同議長は、60の専門家の地位に1700名が候補者として指名されたと述べた。

パネルは、WGIII進捗報告書に留意した。

国別温室効果ガス・インベントリ・タスクフォース(TFI)の報告書:水曜日、TFI共同議長のEnokiは、TFIの進捗状況報告書(IPCC-LXI/INF. 6)を提示、特にSLCFsに関する手法論報告書のスコーピング会議について説明、2024年2月26-28日にオーストラリアのブリスベンで開催され、68名の指名された専門家が出席したと述べた。さらに二酸化炭素除去技術及び二酸化炭素回収利用及び貯留に関する専門家会議が、2024年7月1-3日にオーストリアのウィーンで開催されたと述べた。さらに、IPCCインベントリ・ソフトウェア最新版の作成が、2024年6月に開始されたとも述べた。

ベルギーは、ソフトウェアの更新を支持し、IPCCのウェブサイトとの統合性向上を奨励した。南アフリカは、近く予定されるソフトウェアの実証ワークショップについての開発途上国の反応について質問した。

パネルは、国別温室効果ガス・インベントリ・タスクフォースの進捗報告書に留意した。

気候変動評価のデータ・サポートに関するタスクグループ(TG Data)木曜日朝、TG Data共同議長のSebastian Vicuña (チリ)は、同グループの最近の作業(IPCC-LXI/INF. 7)について説明した、この中には調整会議、アウトリーチ活動、ウェブページの更新、2024年3月に開催されたIPCCプロセスでのAIの役割に関するウェブナー、地球観測データに関する専門家会議の準備が含まれた。同共同議長は、データ流通センター(Data Distribution Center (DDC))の作業への参加を呼びかけた。

米国及びベルギーは、予算面の影響については、資金タスクチームで取り上げるべきだと述べた。米国は、次を指摘した:DDCの活動は複雑化している、なぜそうなったのか、情報がほしい;専門家会議は共同議長と協調するべきだ;TSUの長は、DDC作業計画を承認するべきだ。

ウクライナは、TG Dataの作業を支持すると表明、, saying the 自国でデータを出せない国にとり、このグループの作業は不可欠だと述べた。

議長のSkeaは、進捗報告書に留意し、参加の呼びかけをするよう、求め、パネルもこれに同意した。

ジェンダー行動チーム:IPCC副議長のÜrge-Vorsatzは、ジェンダー行動チームの作業(IPCC-LXI/INF. 14)について報告し、特に次の作業を行ったと指摘した:行動規範及び苦情処理プロセス;カナダで開催予定の、ダイバーシティ、平等、参加性、ジェンダー関係問題に関する専門家会議に向け、準備していると述べた。

カナダ、フランス、チャド、コンゴは、作業に感謝し、チャドは、他のものの参加を促し、コンゴは、この点を自国に持ち帰ると指摘した。カナダは、ジェンダーや人種、他の差別行為に関する苦情処理プロセスの完成を求めた。

パネルはこの報告書に留意した。

コミュニケーション及びアウトリーチ活動:木曜日の朝、IPCC事務局のメディア及びコミュニケーションの長であるAndrej Mahečicは、コミュニケーション及びアウトリーチ活動に関する進捗状況報告書(IPCC-LXI/INF. 3)を提示した。同氏は、IPCC-60以後、特に次の分野に注目してコミュニケーション及びアウトリーチ活動を行ってきたと指摘した:AR7議長団メンバーの可視化;気候変動と都市に関する特別報告書のスコーピング会議でのメディア及びアウトリーチ活動;メディア及び公的アウトリーチ活動での全体的な調整及び開発。

メディアとの関係に関し、Mahečic氏は、Financial TimesとBBC World Newsに掲載されたIPCC議長のSkeaのインタビュー記事を引用、メディアの関心は持続しているが、過去の特別報告書の時ほどの熱気は感じられないと述べた。アウトリーチに関しては、国連環境議会の第6回会合、2024年6月のボン気候変動会議、IPCC-61、さらには、この会議の直前に行われた、黒海地域の機構リスクに関する国際科学会議という重要な参加の機会に注目した。

コミュニケーション全般に関し、同氏は、2024年7月にAR7コミュニケーション及びアウトリーチ行動チームが結成され、AR7のブランド化戦略が作成中であり、IPCCのソーシャルメディアのアカウント及びウェブサイトは、それぞれ、130万人のフォロワーを抱え、一日に1万件のアクセスがあると述べた。

サウジアラビアは、ソーシャルメディアでIPCCを代弁する権限を譲与する手順について質問し、インドは、言語表現に関する懸念を表明、Mahečic氏は、これらに応じ、IPCCプラットフォームのコンテンツは承認された表現を用いているとし、IPCCを代弁するためのルールは、IPCCコミュニケーション戦略に明記されていることを、保証した。コンゴは、対象となる聴衆に達するための戦略、特にグローバル・サウスの聴衆に情報を提供するための戦略について質問した。

ベルギーは、ファクトシートを充実させるよう提案した。スイスは、IPCCとTFIウェブサイトとのコネクションを改善し、議長団メンバーやIPCCの親組織であるWMO及びUNEPもコミュニケーション活動への参加を可能にするため、各国の国内窓口用のマニュアルを作成するよう提案した。

UNFCCC及び他の国際機関との問題

火曜日、UNFCCC事務局は、UNFCCCがIPCCと協調して行う活動並びにIPCCの作業に関連する他の活動に関する進捗状況報告書(IPCC-LXI/INF. 13)を提示し、IPCCは研究及び組織観測の交渉を行った補助機関第60回会合に参加したほか、GSTプロセス全体の手順及びロジスティック要素の推敲方法を検討した科学的技術的助言のための補助機関(SBSTA)及び実施に関する補助機関(SBI)の会合にも参加したと報告した。さらに、2024年に開催予定のIPCC関連のUNFCCCイベントについても説明した。

中国、インド、イラク、ロシア、サウジアラビアは、GST精緻化プロセスなどのUNFCCC交渉項目を検討するというIPCCのマンデートに疑問を呈し、サウジアラビアは、GST精緻化プロセスへの言及箇所を進捗報告書から削除するよう求めた。

アイルランドは、ドイツ、米国、英国、セントキッツ・ネイビスの支持を得て、上記の意見に大きな失望を抱いたと表明、UNFCCC事務局はその活動に関する事実を報告していると指摘、UNFCCCとIPCC及びそれぞれの合同作業部会の関係は、密接で特別なものだと強調した。ドイツは、UNFCCCはIPCCの最大の聴衆であると強調した。

ケニアは、バランスを考えると、報告書ではIPCCと適応世界目標との相互関係を考慮するべきだと述べた。

議長のSkeaは、事務局はこの会合の報告書草案を作成、この会議で表明された多様な意見を反映させると述べた。パネルはUNFCCC進捗状況報告書に留意した。

火曜日、IPBES事務局は、その作業の概要書(IPCC-LXI/INF. 10)を提示した、これには, 2030年までのIPBES繰り返し作業プログラム、生物多様性に関する2050年ビジョン、手法論評価、来年から始まり2028年に最終決定される予定の生物多様性及び生態系サービスの第2回世界評価の作成作業が含まれる。同代表は、IPCCとの協調オプションを探る多様なイニシアティブがあると指摘し、IPBESは気候変動と生物多様性の結びつきに関するIPCCとの協力を待望していると述べた。

ベルギー、ブルンジ、チャド、チリ、コンゴ、EU、フランス、ドイツ、日本、モナコ、ノルウェー、スイス、トルコは、IPCCとIPBESの協調関係のさらなる発展を支持した。

スイスは、議長団と国レベルでの参加を強調し、及び合同のロードマップに関する非公式協議への参加を呼びかけた。ベルギー及びフランスは、ボトムアップ・アプローチの重要性を説き、題目別のワークショップ及び会議の開催が重要だと主張した。ベルギーは、先住民の知識及び灰色文献の統合に関し、IPBESとの経験の共有を提案、協力のオプションはIPCC議長団で検討するという決定書の規定を想起した。ノルウェーは、議長団に対し、スコーピング及び専門家の選任では、これらの側面を考慮することを提案、ドイツは、協力のオプションを探求する合同の暫定特別グループの設置を提案した。

EUは、具体的な活動を求め、この問題はこれまでも議題に挙げられていたが、IPCCの反応は鈍かったと指摘した。

インドは、国際機関との協力は必ずしもプラスにならない可能性があると指摘し、たとえば気候変動への適応の影響と生物多様性の保全は相容れない場合がありうるとして、より客観的な分析が必要だと警告した。

副議長のPichs-Madrugaは、自身のIPBESの非公式連絡窓口としての経験から、地方及び先住民の知識などでは、IPCCはIPBESの経験から学べる可能性があると指摘した。同副議長は、IPCCとIPBESとの正式な協力関係は可能だとし、そのためには組織だったプロセスを経る必要があると述べた。

WGIII副議長のGervais Itsoua Madzousは、IPBESとIPCCは共同で適応指標を策定する必要があると述べた。

EUROPEAN ASSOCIATION OF ENVIRONMENTAL AND RESOURCE ECONOMISTSは、生物多様性及び気候に悪影響がある補助金の廃止、カーボン・プライシング、生物多様性プライシングなど、協力が可能な分野を指摘した。

パネルは、この報告書に留意した。

その他の問題

木曜日、UN-Habitatは、2021年Innovate4Cities会議(IPCC-LXI/INF. 12)について報告した。この会議は、同組織がIPCCとの共催で開催、都市と気候変動に関する特別報告書のための情報収集、及びイノベーションの奨励を目的とした。UN-Habitatは、組織の歴史、制度、目的、及び主要な成果について説明し、パネルに対し、UN-Habitat及びGlobal Covenant of Mayors for Climate and Energy(気候とエネルギーのための世界市長合意)と合同で世界の都市部コミュニティでのIPCCのアウトリーチを増やす方法の探求を求めた。さらに、2024年Innovate4Cities会議は、2024年9月にモントリオールで、ハイブリッド方式で開催されるとして、参加者を招待した。 パネルは、この報告書に留意した。

金曜日午後、WMO事務局次長でIPCCの前副議長であるKo Barrettは、新しい役職でもIPCCを支援し続けることを保証し、AR6は気候変動の課題に関する公共教育に大きな影響を与えたと想起し、パネルは今後も効果ある作業を続けてほしいと述べた。

IPCC副議長のChang’aは、開発途上国の参加性を高めるには、プレナリー前のブリーフィングが重要だと強調した。さらに査証確保の問題を指摘し、パネル及びWMOに対し、この点で努力するよう求めた。

議長のSkeaは、参加性は恒久のテーマであると認識し、さらに努力を続けると述べた。

WGI共同議長のVautardは、科学文献での参加性問題を指摘し、共同議長はこの問題に取り組むことを約束すると述べた。

フランスは、学習事項関係の遅れは遺憾であるとし、WGI共同議長のVautardとともに、恒久的な参加性問題の解決を約束した。

IPCC第62回プレナリーセッションの場所と日時

金曜日夕方、IPCC事務局長のMokssitは、IPCC-62は2025年2月の最終週に行われる予定だと発表、場所は近く確認すると述べた。

会合の閉会

金曜日夜の閉会の辞において、議長のSkeaは、予定時刻を50分ほど過ぎただけでIPCC-61を閉会できることを喜び、意見の一致も得られたと述べた。

議長のSkeaは、IPCC-61を主催したブルガリア政府及びソフィア市に感謝の意を述べ、出席者は、会議を手助けした現地の若い科学者たちを拍手で称えた。議長のSkeaは、これら科学者たちに対し、将来、IPCC執筆者になって欲しいと述べた。IPCC事務局長のMokssitは、会議を企画した事務局、及び、議長団、副議長、共同議長、TSUsへの感謝を述べた。

議長のSkeaは、午後6時56分、IPCC-61閉会の槌を打った。

IPCC-61の簡易分析

気候変動は、世界各地のコミュニティを危険にさらしており、そのための政策行動を支える包括的でアクセス可能、信頼のおける科学情報の必要性は、これまで以上に高まっている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球上で3番目に暑い日を迎えた週に、第61回の会合を開催し、第7次評価サイクルの主要要素の議論を進めた。

IPCC-61は、このサイクルで2回目となる実質的な討議であり、2つの報告書の概要を承認し、作業部会報告書の作成スケジュールを設定することを目指した。これらの報告書は、政策立案者に重要な情報を提供するほか、戦略計画決定書は、パリ協定の第2回グローバルストックテイクにフィードインする情報を決定する。参加者は、この最大の問題、戦略計画スケジュールで意見の一致を見るのが極めて困難であることを認識した。

この簡易分析は、IPCC-61で得られた意見の一致点、及びパネルがとるべき次のステップへの影響を考察する。

IPCC-61の主要課題

短寿命気候強制力:最初に取り上げられたのは、短寿命気候強制力(SLCFs)、もしくは人為的な地球温暖化に貢献するが大気中の滞留期間は短いガス及びエアロゾル粒子の手法論報告書の概要であった。黒色炭素など、多くのSLCFsは、大気汚染物質でもある。これらの排出量削減は、特に地域規模においては、気候及び健康面で、直ちに便益をもたらす可能性がある。

国別温室効果ガス排出量及び除去量を推計し、報告する共通の手法論の提供は、IPCCの主要な責任分野の一つである。しかし、水素や微粒子(PM 2.5)を報告書に記載するかどうかでは、意見が分かれた。十分な科学的根拠がないと主張するものもいた。この問題は国連気候変動枠組条約 (UNFCCC)での各国の報告作成作業に影響する可能性がある。PM 2.5及び水素の記載では意見の一致が見られなかったことから、将来、再度議論することが決定された。

都市:参加者は、気候変動と都市に関する特別報告書の概要も議論した。この報告書は作業部会I、II、III合同で作成する。その目的は、都市部の政策立案者及び実務者に、緩和及び適応の行動を取る際に必要な科学情報を提供することである。都市部は、気候変動に貢献すると同時に、その影響を特に受けやすい。

参加者は、都市の分類方法や適応と緩和のバランスについて議論した。特定の地域や都市部の経験などを考慮する必要性があり、都市部と農村部の区別は必ずしも明確でないと主張するものもいた。

この概要に関し、執筆者にどれだけ詳しいガイダンスを提供するかが議論された。「不適応の回避」が「政策規範性」の定義にあてはまるかどうかでは、意見が対立した。そのほか、実質ゼロへの言及や他の目標への言及でも意見が対立した。規範性を低くするよう求めるもの、執筆者を信用しようというものもいた。

戦略計画スケジュール:IPCC-61における課題の3番目は、戦略計画スケジュールの議論を進めることであった。IPCC-60での意見対立を受け、IPCC-61でも困難が予想された。問題は、GST-2に間に合うように全ての作業部会報告書を提供できるかどうかであった。GST(ストックテイキング)は、パリ協定の締約国が、パリ協定の目標に向けた進捗状況を定期的に評価し、ギャップを特定し、気候変動行動の加速化を考察する制度である。科学的な状況を評価し、緩和及び適応のオプションを特定するためのIPCC独自の評価は、UNFCCCの政策論の重要な基礎を提供する。

作業部会共同議長らは、GST-2へのフィードインに間に合うよう、2028年までに3つの作業部会報告書を全て完成させるスケジュールを作成した。小島嶼開発途上国及び後発開発途上国などは、GSTの技術評価プロセスに適切なインプットを確保するため、早期の報告書の完成を求め、研究能力を欠き、気候変動の直近の影響を最も受けやすい国にとり、IPCCのインプットは、極めて重要であると論じた。IPCCは独立組織であるが、重要な国際プロセスに科学的識見を提供する機会を逃せば、IPCCの根本的な責任の一つを棄却することになると言うものもいた。

他の国際プロセスのニーズではなく、IPCCのニーズに沿ったタイムラインにするべきだというものもいた。また、開発途上国及びその科学者たちは、IPCCの作業への参加で困難を経験したことがあると指摘するものもいた。これらの参加者は、タイムラインの設定に異議を唱え、IPCCプロセスへの開発途上国の専門家の参加、及び新たな研究論文の提供の妨げになる可能性があると指摘した。

一部の国では、気候変動の政府間の作業を担うものが1,2名しかいない場合もあり、開発途上国の参加者には、報告書の査読さえも負担になる懸念があると指摘された。戦略計画スケジュールが提示され、参加者の懸念も考慮したことが保証されたが、多くの参加者は、参加性向上のための対策が重要だと強調した。

参加者の意見の違いは大きく、参加性向上を求めるものの間でも、AR7のタイムラインとの関係では意見の食い違いがある。開発途上国の専門家及び政府に対し、参加するだけの時間的余裕をもたせるよう求めるものもいれば、脆弱な諸国に対し、科学情報をできるだけ速やかに提供して、現在発生している気候変動の影響、そして予想される影響に対処できるようにするため、多国間交渉への参加性を向上させるよう求める意見もあった。

意見の一致がなかったことから、パネルは、タイムラインの議論を、2024年12月の3つの作業部会報告書のスコーピング会議後まで延期すると決定した。意見の一致が得られなかったことで、失望を表明するものいたが、作業部会のスコーピング会議終了後に、タイムラインを決定するのは、過去の実績及びIPCC統治原則手順書とも合致することが指摘された。

参加性の高いプロセスを目指して邁進する

IPCCのプロセス及びその制作物の作業における参加性向上の必要性については、皆の意見が一致した。多数の開発途上国代表及び専門家らは、査証取得問題や科学研究論文の記載問題では、長年困難に直面したとし、先住民の知識や現地の情報を網羅する広範な知識データベースを確保し、研究年数の浅い研究者や実務者の参加を得る上での問題点を洗い出した。

IPCCにとり、この問題は初めてのものではない:

参加性は、このパネルの長年の問題であるが、特にIPCC-61では、より具体的な対策を見出す努力がなされた。AR7サイクルでの参加性向上に関する文書が作成され、2025年初頭には、ジェンダー・多様性・参加性に関する専門家会議が開催予定である。都市と気候変動に関する特別報告書の作成でも、スコーピング会議に先立ち、広範な専門家の意見をまとめたWebinar が準備されるなどの方法が実証された。

作業部会共同議長らは、スコーピング及び報告書作成の議論では、データ及び文献の不足で、十分な記載がされていない題目及び地域が特定されたと報告した。このほか、経験の浅い科学者、特に開発途上国及び後発開発途上国出身の科学者らに、奨学金基金から支援をし、参加してもらうための努力がなされている。地域のネットワーク作り、科学ジャーナルへの恒久的で直接のアクセスを確保するためのオプションも探求されている。人工知能(AI)などの新しい技術も、科学論文の翻訳に役立つことも指摘された。

将来への展望

IPCC-61では、参加者それぞれの優先策や希望に大きな違いのあることが明らかになり、議題項目での合意を妨げていたが、意見が一致した分野もあった。参加性を求める声は広範な広がりをみせ、特定の行動を約束する声も多数聞かれた。AR6からの学習事項に関する作業プロセスでは合意に至らなかったが、AR7サイクルでの参加性向上策での努力では意見が一致したことから、 気候変動の理解を深め、行動に結びつけるというIPCCの重要な役割が認識された。

今後数ヶ月の間に、参加者は、このサイクルの次の段階に向けた準備作業を続ける予定であり、作業部会報告書及び二酸化炭素除去技術及び二酸化炭素回収利用貯留に関する手法論報告書については、スコーピング会議が開催される。気候変動の影響拡大が、世界的に認識される中、可能な対応策に関し、IPCCの参加性が高く包括的な評価を求める声は、高まるばかりである。

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