Daily report for 16 May 2017
Bonn Climate Change Conference - May 2017
ボン気候変動会議は16日(火)も続けられ、非公式協議や“宿題”とされた各種イベント、コンタクトグループの会合が終日開催された。
SBSTA
パリ協定 第6条 (協力的アプローチ): Hugh Sealy共同進行役(モルディブ)は、2回目にチェックを行った3点の編集リストについて検討するよう締約国に呼びかけた。二カ国から同リストを「備忘録」(aide memoire)を称するよう提案された。また、ある締約国グループはリストをどのように位置づけるべきかという点に関して、①各種意見のリフレクション、②今後の議論の基礎、③指針のための基礎とするという3案を挙げた。一部の国からは、同リストは議論の内容を振り返り、今後の作業の基礎となるものにすべきだとの意見が出された。また、リストは各国が意見を提出する際に優先すべき要素の骨組みをつくるために使用すべきだとの意見の一方で、適切な注意事項を入れておくべきだとの意見もあった。リストの要素については、第6条2項(ITMOs)の対象範囲、適用される原則、収益の一部(share of proceeds)の使途、協定第19条 (制度的な調整)と第6条4項 (メカニズム)との関連、ダブルカウンティングに関する記載欠如とこれに対応する調整事項等について各国が意見交換を行った。
また、午後からの議論では、リスト内容のバランス維持、要素の細かな内容の詰め、解決策と要素の区別等を行う必要があるとの指摘があった。非市場アプローチについては、その役割やガバナンスについて議論するのは時期尚早との声が複数あがった。Sealy共同進行役は、要素リスト‘バージョン2.1’と一連の結論書草案、共同進行役のリフククション・ノートを配布する予定だと述べた。非公式な非公式会合が夕方開催された。
パリ協定の技術枠組: Elfriede More (オーストリア)は修正版の結論書草案を紹介。技術枠組の原則に関する議論の捉え方について各国の意見は未だまとまらなかった。
技術メカニズムとステークホルダーの関与については、多くの途上国が技術メカニズムの役割“強化”を明言する必要があると主張したが、反対意見もあった。ある締約国は「転換的な変革(transformational change)」と記することに反対した。
技術枠組の 実施に関する追加活動についての情報提供をTEC及びCTCNに要請する案については、“パリ協定の実施”と言及することで締約国の合意が得られた。ある国は、CTCN とTECは各々の役割を拡大することはできないと強調した。
午後には非公式の非公式折衝で作成された文言がある国から紹介された。 “原則” または “基本的な価値観(guiding values)”については、今後さらに詳細に記す必要があるが原則について明記する方がいいとの意見が出されたが、反対意見もあった。原則として定めるべき内容は、整合性、全員参加、成果主義のアプローチ、変革的アプローチ、透明性、ならびにこれら諸原則がパリ協定を実施する上で技術メカニズムの指針となるという点であるとして最終的に各国の合意に至った。
ステークホルダーの関与については、SBSTA 45の初期のテーマと技術サイクルを考慮し、パリ協定で想定された転換的変革を実現するための個々の役割に則り、技術枠組は技術メカニズムを強化し、関係するステークホルダーの関与を増大すべきだという意見で各国が合意した。
キャパシティビルディング:結論書草案および決定書の文言に関する意見交換が行われたが、特に次のパラグラフを含む文言については合意に至ることができなかった。事務局の統合報告書(FCCC/SBI/2017/3)を歓迎;途上国において実施されているキャパシティビルディングについて留意するがギャップやニーズ、制約事項が残ることに留意; 経済移行国におけるキャパシティビルディング枠組の実施に関する第4回レビューの完了および決定書草案の勧告。SBI 47での審議続行を定める手続きに関する結論書草案については、合意に至った。
SBI
政府間会合の調整: Collin Beck議長(ソロモン諸島)は修正版の結論書草案の文言に関する意見交換を行った。「締約国以外のステークホルダーの貢献を実質的な問題に限定する」と明記すべきか否かで意見の一致が見られなかった。さまざまな途上国が本件に関する意見書提出を呼びかけるとの案に賛同したが、先進国側は「意見書はすでに提出済み」であり、インセッションワークショップでも十分な意見が出されていると指摘した。
また、モニタリングやレビューの手順を含め、締約国以外のステークホルダーの参加に絡むリスクの回避のため異なる手順を定める案についても、各国の意見は対立した透明性の原則に反しており未だ起こってもいない“リスク”に対処しようとする内容だとして、そうした文言には多くの国が異議を唱えた。
手順に関する提案は午後からのコンタクトグループで話し合われた。締約国以外のステークホルダーの参加推進にあたり事務局が現在行っている慣行を強化するというパラグラフ代替案について、エクアドル、ロシア、米国が異なる意見を示した。エクアドルは、 “完全性、正当性、評判”と言及する案を支持したが、米国が示す定義とは異なり、反対に遭った。
今後の方針については、米国とEUが留保を表明したものの、エクアドルが意見書提出を支持した。エクアドルが提案した文言を含めない形で両パラグラフは合意を受けたが、意見書の提出を募り、SBI 48で進捗状況を検討する内容を含めることとなった。これらを受け、その他修正も入った形で結論書草案が締約国の合意を受けた。
SBI/SBSTA
適応に関する技術専門家会合(TEM): Musonda Mumba(UNEP)が進行役を務めた。
Hakima El Haite(ハイレベルクライメート・チャンピオン・モロッコ)は、適応とSDGsを実現する統合アプローチを提唱した。
Inia Seruiratu(ハイレベルクライメート・チャンピオン・フィジー)は、サイクロンの頻度と強度が増大していると述べ、喫緊の課題を解決しようと呼びかけた。
UNFCCC仙台枠組とSDGsの相乗効果に関する検討も行われ、特に総合的なアプローチや災害後のデータ損失、影響に関する報告、各国の実施と国際機関との連携について議論された。
対応策: Andrei Marcu共同進行役(パナマ) は、改善フォーラムと作業計画ならびにパリ協定のフォーラムの手順・作業計画・機能に関する結論書草案2点の文言について議論を行った。二、三の括弧書きは削除されたものの、セッション間の作業や会合の価値、TEG会合の公式報告書の作成ならびにTEG再招集など、根本的な意見の隔たりが残された。非公式折衝は夕方も続けられた。
APA
行動・支援のための透明性枠組: 共同進行役 Xiang Gao (中国) は、非公式折衝に関する共同進行役のリフレクション草案について意見を求めた。今後のステップについては、会合前のワークショップで各国が提出した意見書に網羅された問題を中心に討議し、これらの意見書が非網羅的リストに記載された横断的問題をどのように取り上げるのかといった技術的な議論を盛り込むということを明記することで各国が合意した。
MPGsに関して見出しと小見出しがつけられた非公式ノート草案附属書については、 ある締約国が最重要の検討事項として原則論を追加することを提案した。
協定第13条3項の運用 (SIDS及びLDCsに関する認識、ならびに不可侵型の罰則なく促進的な実施)については様々な意見が存在すると文書の中で言及すべきだとの声が午後の議論であがった。他方、別の国は附属書にいかなる変更を行うことにも反対した。附属書の免責事項に今回の追加修正を入れた共同進行役の非公式ノート修正版がAPA共同議長に提出される予定だ。
グローバルストックテイク (GST):共同進行役のXolisa Ngwadla (南アフリカ)は午前、共同進行役の文書骨子案に関する意見を募った。途上国は草案の骨子が今後の議論の基礎になると歓迎した。他方、先進国はもっと一般的な骨子にすべきだと主張し、APAの役務を反映させた見出しが必要だと強調し、反対を唱えた。
午後、先進国が提案する新たな見出しリストは途上国からの支持を得られなかった。今後の方針についても意見が対立した。衡平性を含めた意見書や2013-2015年レビューの教訓に関するテクニカルペーパー、意見がまとまった分野と対立分野をまとめた共同進行役ノンペーパー等の作成を要請すべきとの声や見出し部分を議論するためのセッション間ラウンドテーブルを開催すべきだとの意見が出た。Ilze Prūse共同進行役(ラトビア)は、見出し関しては各国の合意を反映していないとの一文を入れた「共同進行役の非公式ノート」の送付ならびに今後想定される見出しに関する意見提出を要請した。
さらなる問題:適応基金: Pieter Terpstra ( オランダ)が共同進行役を務めた。
共同進行役の非公式ノート修正草案は各国の歓迎を受けたが、その中には議論に関するリフレクション(省察)や2点の附属書(①基本的な疑問点を受けて締約国が特定した選択肢や要素のリスト、②パリ協定に役務を果たす適応基金向け調整事項に係る諸問題の非公式協議についてのUNFCCC法務部作成文書)が盛り込まれた。
今後の方針については、事務局がCMP決定書のリストをUNFCCCウェブサイトに掲載することが決まった。ある締約国は2006年の適応基金に関するCMP決定書 (決定書 5/CMP.2)について強調していた。
適応基金以外のさらなる問題: APA共同議長のJo Tyndall (ニュージーランド) が共同進行役の非公式ノート草案第2版を紹介。パリ協定の対応策フォーラム、途上国の適応努力に関する認識、GCF及びGEF、LDCF及びSSCFに対する (初期)指針等について、今後の方針案が示されていると伝えた。対応策に関するフォーラムによるAPAへの報告手続きを明確にすべきだとする、ある国の主張は複数から反対を受けた。適応努力の認識については、どのようにして適応委員会やLEGに関する勧告に関するCMA向けの決定書草案を作成するかという議論が行われた。共同議長がノートを修正予定。
締約国が協定9条5項に則り提供した情報を特定するプロセス
Outi Honkatukia (フィンランド)が共同進行役を務めたラウンドテーブルでは、事前情報の提供における課題とギャップ(協定第9条5項)、戦略とアプローチに関する隔年意見書からの教訓(決定書3/CP.19パラグラフ10)、事前情報の種類が議論の中心となった。
先進国は、将来を見据えた定量予測を行う上での課題は、年次予算のサイクルに係る予測不能性、予測期間に係る確実性と期間の長さとのトレードオフ関係、ホスト国主導の計画立案における柔軟性のニーズ等があると指摘した。多年度にわたる定量的な数値目標を設定するには政治的意思も必要との意見もあがった。
隔年報告書に関する全体的な教訓としては、隔年報告書の国内情報が改善し、政策協調がみられた点だとする意見が多かった。各国の報告に整合性をもたせるよう改善すべきだとの声もあがった。世界の気候資金拠出の現況に対するより良い理解につながるとして集団による取り組みを示唆する提案もあった。いくつかの途上国は、とりわけ信頼のための予測可能性、政治的意思、資金の利用可能性に関するスコーピング等が重要であると主張した。
隔年報告書は今後の作業のための良い土台となるとの意見が出された。今後提供する情報の種類については、細分化された適応資金の合計拠出額の定量評価、ベースライン参照値、優先する国/セクター、専門技術に関するセクター、資金動員・環境改善・多排出分野への投資援助減額等を目指す計画及び取組み、成果と妥当性評価が挙げられた。
スケジュール上の難しさを考慮して2回目の会合を延期するという案を受け、Rafael da Soler共同進行役(ブラジル)は、5月17日(水)かCOP 23で議論を続けると述べた。
廊下にて
16日火曜日の会議場に到着した各国の政府代表にとっては今回の会議で行われた作業をどうやって把握するかという問題が関心事となった。さまざまな骨子の文書が“スナップショット”、 “備忘録”、“非公式の要素集”といった体裁で出てきたため、ある参加者は話題作となった“フィフティ(50)・シェイズ・オブ・グレイ” になぞらえて、 “フィフティ・シェイズ・オブ・ノート”、 “フィフティ・シェイズ・オブ・快適レベル” 等々と皮肉った。最後のAPA非公式協議の多くが、夕刻までにAPA共同議長にどの文書を送るべきかという問題で決着するため時間延長となったため、慌てて会議室間を移動する羽目になった参加者は「たくさんの火種があって火消が大変だ」と愚痴っていた。
水曜日のAPAコンタクトグループを前に、ボン会議の手土産は少ないか全くの手ぶらで帰国という可能性もあると複数の参加者が案じていた。もう少し楽観的な参加者は具体的でテクニカルな議論の場を望みつつ、「ここでの交渉の歩みが遅くなるとしても全員参加が必要だ」と語っていた。
以上