Daily report for 10 May 2017
Bonn Climate Change Conference - May 2017
ボン気候変動会議は水曜日も続けられた。一日中、非公式協議及び義務付けられたイベントが開催された。
SBSTA
ナイロビ作業プログラム:Beth Lavender(カナダ)が共同進行を務めた。この会合では、「フォーカル・ポイント・フォーラム(Focal Point Forum)」の改善案に議論が集中した。事務局は、とるべき行動の案で意見を交換する中、このフォーラム開催の考えが出てきたと説明した。事務局代表は、議論する時間が十分でなく、専門家の参加も得られないなど、課題があると指摘した。一部の締約国は、将来のフォーラム開催に注目する考えを支持した。あるフォーカル・ポイント(focal point)代表は、問題を絞った会合であれば選択された分野で作業していないフォーカルポイントのものが参加を控える可能性があるとの懸念を表明した。共同議長は結論書草案を作成する予定。
パリ協定第6条;締約国は、手順問題を長時間議論した後、この非公式会合をオブザーバーに非公開のものにすると決定した。共同進行役のHugh Sealy(モルディブ)は、第6条の全3部分に対するガイダンスの要素をオープンリストにあぶり出し、次の段階について検討することを提案した。多数の締約国は、構成要素に焦点を当てて議論する、または文章を作成できるような題目について議論することで合意した。一部のものは、要素を選び出す基準を作ることを提案した。多数の締約国は、COP 23の前に、更なる技術的な議論をする必要があると強調した。
パリ協定6.2条(ITMOs):共同議長のKelley Kizzier(EU)は、締約国に対し、題目、主要な要素、優先分野を特定するよう招請した。締約国は、次の項目の必要性を指摘した:ITMOsの数量化を含め、定義づけを行う;ガイダンスの範囲を描き出す;ITMOsの技術ツール及び構造基盤を考案する;確固とした規則及び成果の比較可能性により、環境十全性を確保する。締約国は、ITMOsのNDCsへの適用方法について意見交換を行い、数か国のものは、適用に上限を設ける必要があると指摘した。一部の締約国は、第6条には緩和と適応の両方の野心を高めることが含まれると指摘した。数か国の締約国は、全体を網羅する原則として、追加性、比較可能性、補足性、国家の決意などを挙げた。締約国は、特に、多国間による監督に対する国家による監督の範囲、6.4条のメカニズムとそのNDCsへの適用について、意見交換を行った。共同進行役は、意見を取りまとめる文書を作成する。
パリ協定6.4条(メカニズム):締約国は、可能性ある要素の概要を論じた、これには次の項目が含まれた:原則とパリ協定の目的との合致;定義;スコープ;CMAの役割など、ガバナンスと制度アレンジ;手法論及びプロジェクトのサイクル;収入の一部(の徴収);全体的な緩和、これには定義づけ及び運用開始を含める;移行時期の問題、及びCDMの信頼性を確保する手段。持続可能な開発の支援に関し、ある締約国は、持続可能な開発目標とのリンク付を提案したが、一部のものは、この目標は各国固有の権利であると称した。議定書のメカニズムを取り巻く移行時期問題に関し、締約国は、CDMと共同実施の両方をふくめるかどうか、意見を交わした。共同進行役は、意見の取りまとめ文書を作成する。
パリ協定10.4条の下での技術枠組:Elfriede More(オーストリア)が共同進行役を務めた。締約国は、次の内部ツールについてコメントした:目的、原則、主題の概要;技術枠組の構成の一部である技術サイクルに関する考えについて、締約国のこれまでの議論を含めるマトリックスの提出。一部の締約国は、技術サイクルを枠組の構成の一部として用いることに対する懸念を表明したが、他のものは、これは技術の受け入れ準備水準をダイナミックに捉える良い方法であるとして歓迎した。ある締約国は、研究開発、実証と展開及び技術の普及と移転をオプションにリストアップすることは「時期尚早(premature)」であるとの意見を示した。他のものは、活動、資金の流れ、及び技術を明確にするよう求めた。多くのものは、関連する行動者との相互連携の必要性を強調した。
SBI
公開登録簿(パリ協定4.12条)の運用及び利用に関するモダリティ及び手順の作成:共同進行役のGertraud Wollansky(オーストリア)は、NDCsの登録簿のモダリティ、手順、機能の要素を締約国が特定することを提案した。
締約国は、利用しやすさ、公開アクセス、セキュリティー、検索可能性を強調した。多数のものは、暫定NDCs登録簿を改良する方法について議論するよう提案した。一部のものは、登録簿は時間の経過と共に進化し、将来のNDCsなど、多様な文書に対応できるものにすべきだと述べた。
各国の提出する情報を追加することに関しては意見が分かれ、ある国は、情報は登録簿を経由してではなく、各国が決定する方法で伝達されるべきだと指摘した。
共同進行役のWollanskyは、締約国に対し、非公式に協議し議論の範囲を明らかにするよう推奨した。非公式協議が続けられる予定。
公開登録簿(パリ協定7.12条)の運用及び利用のモダリティ及び手順の作成:共同進行役のMadeleine Diouf-Sarr(セネガル)は、締約国が多数の登録簿及びAPAとのリンクに関する議論を「一時留めおき(park)」、適応コミュニケーションの登録簿運用に焦点を当てるよう提案した。
各国は、利用しやすさ、公開アクセス、利用者にとってのセキュリティー、事務局による登録簿の管理を支持した。多数のものは、柔軟性の必要性、適応コミュニケーションを目的とする他のポータル利用手段とのリンク付の必要性に注目するよう求めた。
多数のものは、モダリティはAPA4項(適応コミュニケーション)の下での成果に予断を加えるべきでないと指摘した。非公式協議が続けられる予定。
SCFの機能のレビュー:Delphine Eyraud(フランス)が共同進行役を務めた。締約国は結論書草案について意見交換を行った。先進国数か国は、締約国の提出文書を事務局作成のテクニカルペーパーに対するインプットとすることに留意するよう希望した。SCFの機能に対し、何が活動を構成するかでは意見が分かれ、ある締約国は、効率面の利点、及びSCFの作業遂行方法での優先順位づけに注目するよう希望した。他のものは、パリ協定の透明性枠組に照らし合わせ、支援のMRVに焦点を当てる必要があると強調した。締約国は、それぞれの見解でレビューのTORに言及することを支持し、ある締約国は、結論書草案でも言及することを提案した。議論が続けられる。
SBI/SBSTA
対応措置:Alexandria Rantino(オーストラリア)とPeter Govindasamy(シンガポール)が共同議長を務めたTEGでは、 TEGのマンデートの2番目の要素に焦点を当てた:労働力の正当な移動。国際労働機関は、気候政策は労働部門への影響の主要な要因にはなっていない、しかし野心の引き上げは大きな要因となる可能性があると指摘した。オーストラリアは、同国における石炭部門での正当な労働力移動政策での経験を提示した。両共同議長は、それぞれの責任で作成したサマリー報告書を提出した、この文書には、正当な労働力移動、経済多角化、クロスカッティング問題に関しこの2日間に専門家が表明した意見を反映している。参加者は、報告書を作成するのは本来TEGのマンデートであると指摘した上で、共同議長の報告書をコンタクトグループに送ることで合意した。
APA
決定書1/CP.21の緩和セクション:共同進行役のWollanskyは、NDCsの国家による決定という特性を損なうことなく、不要な負担をかけることのない形で、NDCsの明確さ、透明性、理解を高める情報が必要であるという点で意見が集約していると指摘した。議論ではこの情報の目的と要素に焦点が当てられた。締約国は、ガイドラインを第一回のNDCsに適用するのか、それともその後の提出に適用するのか、さらに透明性枠組とのリンク付けについて合意する必要があると指摘した。多様な諸国が報告作成にはキャパシティ・ビルディング上の制約があると協調した。一部の締約国は、NDCには多数のタイプがあると指摘し、最小限のアレンジから始めることを提案した。非公式協議が続けられる。
適応コミュニケーション:共同進行役のLavenderは、構成及び可能な文章の「骨格(skeleton)」を作ることを目指す作業構成を提案した。多数の締約国は、コミュニケーションの目的や要素などの項目では、予想したよりも意見の集約が近くなっているようだと指摘した。数名のものは、次回の非公式協議に向け、会合前の議論をとりまとめた濃縮版の表を作成するよう要請した。
行動と支援の透明性枠組:Xiang Gao(中国)が共同進行役を務めた。締約国は、共同進行役が提出した要素に関する非限定的リスト3件についてコメントした。NDCsの実施及び達成に向けての進捗状況追跡に必要な情報に関し、多数のものは、重複を避けるよう求めた。数名のものは、NDCsの異なるタイプに共通する要素及び固有の要素の明確化を強調した。一部の締約国は、土地利用部門による貢献を特定することに懸念を表明し、これを締約国のアカウンティングに関する情報の項目に入れることを希望した。他のものは、差異化を反映するよう求め、あるものは、開発途上国に対し、実施障壁に関する情報の提供と、その克服に必要なMOIの情報を提供するよう提案した。
技術専門家レビューに関し、締約国は、そのインプット及びアウトプットを特定し、インベントリ及び支援など、報告されるべき情報の特定のタイプに関する手法を特定するよう求めた。
進捗状況の促進的で多国間の考察に関し、締約国は、プロセスを改善するため過去の経験を活かし、将来のイベント開催など、作業の段階及び構成の概要を示すよう提案した。議論が続けられる。
グローバルストックテイク(GST):共同進行役のXolisa Ngwadla(南アフリカ)及びIlze Prūse(ラトビア)は、マラケシュのインフォームノートの更新を提案した。可能なリンク付及び内容に関し、一部の開発途上国は、損失と被害に対する支援とのリンク付を強調し、あるものは、対応措置の影響に言及した。多様な開発途上国は、GSTにおける衡平性の運用開始を求めたが、一部の先進国は、衡平性を実用面で定期付することの困難さを強調した。他のものは、野心サイクル及び最善の利用可能な科学とのリンク付に言及した。
可能なアウトプット/成果に関し、多数の締約国は、パリ協定がGSTの成果の概要を示していると指摘した。一部のものは、GSTのモダリティの議論は成果の明確化を可能にすると述べた。さらに一部のものは、2013年-2015年レビューに関する組織的専門家ダイアログの経験、特にアウトプットを提示するため情報を抽出した方法から学習するよう求めた。
実施推進及び遵守促進委員会:Peter Horne(オーストラリア)及びJanine Felson(ベリーズ)を共同進行役とする非公式協議では、この委員会のスコープと機能、及びトリッガーについて議論した。多様な締約国は、「実施推進(facilitating implementation)」及び「遵守促進(promoting compliance)」の機能を、別々なものと解釈し、一部の先進国は、両者は連続すると論じた。議論が集中したのは、同委員会の活動範囲は協定の全ての条項を対象とするか、それとも法的拘束力のある条項のみを対象とするかであった。トリッガーに関し、ある開発途上国グループは、自主トリッガーのみを支持したが、二つの開発途上国グループと他の諸国は、トリッガーの追加を求めた。一部のものは、事務局トリッガーに反対し、事務局の中立性、情報収集の役割を指摘したが、他のものは、これこそ事務局トリッガーとする理由であると述べた。数名のものは、体系的な問題に対するCMAトリッガーを支持した。非公式協議が続けられる。
更なる問題:適応基金:Pieter Terpstra(オランダ)が共同進行役を務めた。事務局の法律チームは、前回会合での締約国の質問に答え、現在、適応基金は、CMPのみに報告し、そのガバナンス枠組は京都議定書に対してのみ役割を果たすように策定されていると説明した。
締約国は、次の問題など追加の質問を行った:同基金がCOPまたはCMPの下に置かれる一方で、(パリ)協定に対し役割を果たすことは可能なのかどうか;基金を一つの法制度から別な法制度へと移行した法的な前例、または複数以上の法制度で役割を果たした法的な前例;異なるシナリオの下でのガイダンスの提供;理事会(Board)のメンバー;収入の一部または全体的な資源の利用。
ある国は、3つのシナリオ、具体的には基金がCMP、COPまたはCMAで役割を果たすかどうかに関し、事務局が3つを横断する回答を作成するよう提案し、別な締約国は、この基金が議定書と協定の両方で役割を果たすというオプションを追加した。事務局は、次回の非公式協議に向け回答を作成する。
廊下にて
ボン気候変動会議は3日目を迎え、交渉は順調に進んでいた。大半の部屋では、多数のものが「締約国は本当に必要なガイダンスについて考え始めて(parties are starting to think about the guidance that is really needed)」おり、パリ協定の「建設的な曖昧さ(constructive ambiguities)」と取り組み始めていると報告した。さらに、参加者は、実質的な内容にも手をそめ、 文書草案の輪郭を明らかにし、今年中に肉付けできるようにする作業に移った。
パリ協定規則書の内容における差異化を運用する方法など、一部の厄介な問題は、無視するのが困難な時もあった。あるオブザーバーは、大半の議論は「一つか二つ(one or two)」にまとめられると述べた、透明性枠組または遵守委員会のモダリティ、あるいは公開登録簿の数である、数名のものは、これらの議論は「政治的」な決定であり、後日に議論する必要があると述べた。しかし、一部の分野について、楽観的な参加者は、このような技術的な議論は、締約国が舵取りの難しい政治的な領域を進むのを助けると述べた。
以上