Daily report for 3 September 2015

ADP 2-10は、2015年9月3日(木)もドイツ・ボンで続けられた。参加者は、次の促進グループ(facilitated groups)に集合した:午前は、適応及び損失・被害、技術、緩和、透明性、時間枠;午後は、資金、合意の前文、実施と遵守、キャパシティビルディング;夕方は総論/目的、及びワークストリーム2(プレ2020年野心)。促進グループの非公式会議も一日を通して開催された。

促進グループ

適応及び損失・被害:Andrea Guerrero (コロンビア)がこの会合の共同進行役を務めた。

グレナダは、損失と被害に関する分科会(スピンオフ・グループ)について報告し、2件の提案に焦点を当てた: G-77/中国の提案は、損失と被害のメカニズムを気候移動調整ファシリティーとともに合意の中に入れ、このメカニズムは2020年以後、ワルシャワ国際メカニズム(WIM)に代わると指摘する;米国、EU、スイス、オーストラリアの提案は、損失と被害はCOP決定書で規定し、WIMの永続性も明記する。

共同進行役のGuerreroは、次の項目等、適応に関する分科会の議論の概要について報告した:脆弱性を軽減し、適応能力を増強するための長期グルーバル目標もしくはビジョンの可能性;知識の共有、MOI、科学の進展等を含むビジョンを達成するための考えられる手段。

分科会は、午後にも会合し、文章案を検討した。

緩和:この会合ではFranz Perrez (スイス)が共同進行役を務めた。

集団的努力に関し、中国は、長期目的を示すことに焦点を当てるよう提案した。コロンビアはAILACの立場で発言し、総論/目的に関するセクションにグローバル目標を含め、合意の関連セクションでその運用を図るべきと述べた。カナダは、最新の科学に沿う行動を可能にするにはCOP決定書が適切であると指摘した。

差異化に関し、AILACは、全ての締約国による約束に言及することを支持した。ニュージーランド、カナダ、日本は、差異化の表現は個別の努力に関するパラグラフに属すると述べた。多数の途上国は、集団的努力はCBDR、衡平性、条約第4条(約束)とリンクされるべきと述べた。

インドは中国とともに、個別の努力は集団的努力の差異化を運用可能にすると述べた。ニュージーランドは、米国とともに、合意は差異化を認めるものだと述べ、共通の集団的努力が必要だと強調した。ノルウェーは、集団的努力のパラグラフにおいて個別の努力の枠組みも示すことを提案した。

マーシャル諸島は、総論/目的セクションと緩和に関する集団的努力との関係を明確にするよう求めた。共同進行役のPerrezは、この会合の議論はADP共同議長に対する自分のインプットに情報を提供するものだと述べた。

技術移転と開発:Tosi Mpanu-Mpanu (コンゴ民主共和国)は、この会合の共同進行役を務めた。カナダは、水曜日の分科会について報告し、強化された行動枠組みに関する建設的な議論を指摘し、技術セクションの主要要素リストを提出した。

EUと米国は、技術の役割と重要性、協力行動、基礎となる制度に関し意見が集約したことに注目した。

スワジランドはアフリカン・グループの立場で発言し、COP決定書において制度アレンジの定期的評価に関する追加作業を行うよう提案した。EUは、COP決定書は制度を強化できると述べたが、イランは、それを合意で行うことを希望した。

日本は、強化された行動枠組みをCOP決定書に入れるよう求めた。インドは、合意は枠組みの「最終的な強化(final reinforcement)」となるもので、その永続性を反映しうると強調した。アラブ首長国連邦は、枠組みは合意とCOP決定書の両方に記載できるとし、前者は「何であるか(the what)」を説明し、後者は「どうするか(the how)」を説明すると述べた。

共同進行役のMpanu-Mpanuは、分科会において、協力行動、枠組み、制度に関する草案作成作業を行うよう勧めた。

透明性:この会合の共同進行役はFook Seng Kwok(シンガポール)が務めた。アルジェリアは、緩和中心のMRVシステムを回避するよう求めた。シンガポールはAOSISの立場で発言し、合意のこのセクションに入れるパラグラフとして、途上国による透明性システムへの効果的な参加に対し、先進国は適切な支援を提供すると記述する枠づけパラグラフを提出した。

中国はLMDCsの立場で発言し、特に、途上国がMRVアレンジを実施できる範囲は先進国の資金援助によって決まるとの文章案を提出した。

EUは、文章案は「橋渡し(bridging)」するものであるべき、すなわち多様な見解を持つ締約国間の事前の議論を含むものであるべきと強調した。

インドとブラジルは、「支援(support)」の全体範囲を記載するよう求めた。米国は、キャパシティビルディング面の明記を提案した。

EUは、水曜日の分科会ではアカウンティングを利用できる多様な方法が明らかにされたほか、信頼性に関し、異なるが必ずしも対立するとは限らない観点が取りまとめられたと報告した。

締約国は、合意の要素、及びこれに対する決定書の要素に関する提案を聴き、異なる支援タイプを明確にする提案を聴くため、最終的な非公式会議を開催することで合意した。

時間枠:この会合の共同進行役はRoberto Dondisch (メキシコ)が務めた。それぞれ適応と資金の共同進行役であるAndrea GuerreroとDiann Black-Layneは、それぞれのグループにおけるタイミングに関する議論について報告した。続いて、締約国は、共同進行役のDondischが提出した主要要素リストについて議論した。

多数のものは、世界全体の進捗状況の総括を合意に入れることを支持した。ブラジルは、合意の中に進捗状況総括プロセスを設け、資金の適切性レビュー等、条約の下での既存プロセスからのインプットを入れ、締約国がNDCs改定を提出する少なくとも一年前にアウトプットを出すことを提案した。EUは、進捗状況総括からの統合報告書の発行を提案した。

締約国数カ国は、NDCsの調整は自主的特性を有すると強調し、EUは、これを合意に記載される長期目標に向けた進捗状況と一致させるべきだと強調した。

米国は、時間枠の下では適応と緩和の扱いに差をつけることを提案した。ジンバブエはアフリカン・グループの立場で発言し、異なる実施タイプに関する報告(communication)を規定し、能力に限界がある締約国に柔軟性を持たせる条項を求めた。ツバルはLDCsの立場で発言し、次を提案した:「NDCs」という用語は緩和を指す;「貢献(contributions)」という用語は適応に適用しない;MOIでは並行するタイミング・プロセスが必要。

資金:Georg Børsting (ノルウェー)は、この会合の共同進行役を務めた。

エクアドルは規模に関する分科会の議論について報告し、分野横断的な問題を解決することの難しさを指摘した。スイスは、資金源に関する分科会の議論の概要を報告し、資金源は単一オプションに限定されないという共通の見解に焦点を当てた。

締約国は、続いて、G-77/中国、韓国、EU、及び米国、日本、カナダの合同提案という4件の制度アレンジ提案の議論に進んだ。

南アフリカはアフリカン・グループの立場で発言し、例えば条約11条(資金メカニズム)の下の資金メカニズムを新しい合意でも資金メカニズムとする等、提案間の共通点を指摘した。同代表は、ボリビアの支持を受け、緑の気候基金(GCF)を合意の「主要な(main)」運用組織に指定するという韓国の提案に反対し、これはGCFの統治手法の議論を再開するものだと指摘した。ノルウェーは、合意の中に条約の下での既存の基金を記載するというG-77/中国の提案に懸念を表明した。EUは、柔軟性を強調し、さらに、COPは基金の運用上の問題を決定する全面的な権限を保持することが必要だと強調した。

共同進行役のBørstingは、提案における重複を指摘し、締約国に対し橋渡しとなる提案を提出するよう勧めた。

合意の前文:共同進行役のGeorge Wamukoya (ケニア)は、水曜日の分科会において、5つの概念で合意したことを想起した:条約への言及;科学;持続可能な開発アジェンダ;十全性;SIDS及びLDCsに関係する問題。ボツワナは、分科会後の非公式議論について報告し、締約国グループは作業モードで合意できず、実質審議に入れなかったと述べた。ボリビアとグアテマラは、合意の前文への概念リストの挿入は可能であるという点で一部の締約国の意見が一致したと報告した。締約国は、手続きに関する議論の後、十全性の概念に関する見解を述べた。

オーストラリアは、合意の前文の議論は時期尚早であると述べた。EUは、人権に言及するよう求めたが、ザンビアはそのような言及への不快感を表明した。多数の国は、性の平等及び先住民への言及を支持した。ボリビアとエクアドルは、母なる大地(Mother Earth)への言及を強調した。米国は、持続可能な開発の権利への言及に反対した。スイスはオーストラリア及びベネズエラとともに、健康を含めることを支持した。

共同進行役のWamukoyaは、夕方に議論のサマリーを配布すると述べ、これに関する締約国のコメントは共同進行役からADP共同議長へのインプットの一部になると指摘した。

実施及び遵守:Sarah Baashan (サウジアラビア)は、この会合の共同進行役を務めた。議論では新しい合意での実施及び遵守の推進方法に焦点が当てられた。

促進性に関し、米国は、多国間協議プロセスに関する提案への注目を求めた。コロンビアはAILACの立場で発言し、バーゼル条約の実施及び遵守委員会の促進性を説明し、非遵守の場合は能力面のニーズを認識して支援し、COPに注意勧告を出すよう助言することになっていると述べた。

オーストラリアは、非遵守の場合に資金援助にアクセスする新たな道を提供するのでは、逆インセンティブとなる可能性があるとして警告した。サウジアラビアは、意図的な非遵守は合意に紛争解決条項を入れるきっかけになると指摘した。ロシアは、締約国の意図決定の基準を明確にする必要があると述べた。

中国は、一部の締約国は実施部(implementation branch)の設置を希望していると指摘し、遵守部(compliance branch)の対象範囲について質問した。EUは、締約国の実績を検討し、適切なきっかけを与えるメカニズムを求めた。同代表は、透明性とMRVシステムのリンクを指摘した。バハマは、将来と過去の両方を見据えた促進方法を提案した。

キャパシティビルディング:Artur Runge-Metzger (EU)は、このグループの共同進行役を務めた。日本は、制度アレンジの分科会について報告し、締約国は「橋渡し(bridging)」できる段階に至っていないと指摘した。サウジアラビアは、プレ2020年の里程標(milestone)に関する分科会では妥協文案を作成できなかったと報告した。

スワジランド、日本、ウガンダは、既存の制度をどのように強化するかに的を絞った議論を求め、LDCsの立場で発言したセネガル、AOSISの立場で発言したジャマイカ、G-77/中国の立場で発言した中国とともに、米国の提案どおり、キャパシティビルディングに関するダーバン・フォーラムで既存のギャップを議論できないのか、質問した。

インドは、G-77/中国、LMDCsの立場で発言したサウジアラビア、及びスーダンとともに、新しい制度アレンジのオプションを、合意に関する共同議長ツールのパート1に移すよう要請した。

オーストラリアは、パート1のパラグラフの一部についてはまだ議論されていないが、広範な意見の一致をみる可能性があると強調した。

共同進行役のRunge-Metzgerは、キャパシティビルディングの強化を合意の中心に据える必要があるという点で意見が一致しているが、それを既存の制度で強化するか、それとも新しい制度で強化するかについては意見が一致していないと指摘した。同共同進行役は、金曜日に、共同進行役の方で、文章に関する議論を捕捉し、締約国の反応を集めると述べた。

廊下にて

交渉は最終日に向かい、参加者は、この会合の成果がどのようなものになるかに思いを巡らすとともに、ボンの会議場で提供されたBen and Jerryの最新のアイスクリームフレーバー「Save Our Swirled (SOS)」のサンプルについても考えていた。一部のものは、水曜日の進捗報告会合は「時間の無駄」であったとし、プロセスは依然として明確さを欠いており、どの問題も議論は進んでいないと述べた。

しかし、水曜日の共同議長による厳しい言葉と合わせ、多少の甘味も助けになったようである。一部のものは、より多くの締約国が「通路を横断して手を伸ばし合った(reaching across the aisle)」と指摘、特に資金及び損失・被害に関する分科会において少数の文章案が提出され、議論が進められたことを歓迎した。

一部の締約国は、10月の会議までの期間中の作業について、ADP共同議長へのガイダンスを検討し始めたことから、あるオブザーバーは、「ボンからのシグナルがSOSでないことを望もう(let’s hope the signal from Bonn isn’t an SOS)」と皮肉った。

ENBサマリー及び分析:Earth Negotiations Bulletinのボン気候変動会議のサマリー及び分析は、2015年9月6日日曜日に下記URLに掲載される予定:http://enb.iisd.org/climate/unfccc/adp2-10/

(IGES-GISPRI仮訳)

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