Curtain raiser
本日、スイスのジュネーブにおいて、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下での交渉が開始され、2015年2月13日まで続けられる。この会議は、2015年12月にフランスで開催予定の気候変動パリ会議の準備に向けた数回の会合の最初のもの。パリ会議は、「全ての締約国に適用可能な、条約の下での議定書、別な法的文書もしくは法的効力を有する合意成果」の採択を行うマンデートを有する。当該合意は、2020年以後に施行される。 当該パリ合意の作成を課せられた組織が、強化された行動のためのダーバンプラットフォーム特別作業部会(ADP)である。ジュネーブで、ADPはその第2回会合の第8部を開催する。(ADP2-8)
2014年12月の第20回締約国会議(COP 20)は、ADPに対し、2015年5月より前に、条約の下での議定書、別な法的文書もしくは法的効力を有する合意成果のための交渉文書を利用できるようにするとの観点から、作業の一層の推進を図るよう求めた。 (決定書1/CP.20) ADP共同議長のAhmed Djoghlaf (アルジェリア)及びDaniel Reifsnyder (米国)は、そのシナリオノート(ADP.2015.1.InformalNote)において、2015年5月より前に予定される会議はジュネーブ会議以外にないことから、この会議の目的は交渉文書の提供であると指摘した。この文書は、COP 20において同じく要請されているとおり、条約の条項及び適用可能な手順規則書に従い、事務局から全締約国に通知されることになる。 UNFCCC及び京都議定書の歴史概要 気候変動に対する国際社会の政治的対応は、1992年のUNFCCCの採択に始まる、このUNFCCCCは「気候系に対する危険な人為的干渉」を回避するため、温室効果ガス(GHGs)の大気濃度を安定化することを目指す法的枠組を示したもの。この条約は1994年3月21日に発効、現在196の締約国を有する。
1997年12月、日本の京都におけるCOP第3回会合の参加者は、UNFCCCの議定書で合意した、この議定書において、先進工業国及び市場経済移行国は、排出削減目標達成を約束した。これら諸国はUNFCCCの附属書I締約国と呼ばれ、6種のGHGsの全体排出量を2008-2012年の期間(第1約束期間)に1990年比で平均5%削減し、各国により異なる固有の目標を有することで合意した。この京都議定書は、2005年2月16日に発効、現在192の締約国を有する。
長期間の交渉、2005-2009年:2005年、カナダのモントリオールで開催された第1回京都議定書会合(CMP 1)は、第1約束期間終了の少なくとも7年前には附属書I締約国の更なる約束を協議することと規定した議定書3.9条に従い、京都議定書の下での附属書I締約国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)を設置すると決定した。
2007年12月、インドネシア、バリでのCOP 13及びCMP 3は、長期的問題に関するバリロードマップについて合意する成果を得た。COP 13は、バリ行動計画(BAP)を採択し、条約の下の長期的協力行動に関する特別作業部会(AWG-LCA)を設置し、緩和、適応、資金、技術、キャパシティビルディング及び長期的協力行動のための共有ビジョンに焦点を当てることが課せられた。附属書I締約国の更なる約束に関する交渉は、AWG-KPの下で続けられた。この2トラック方式の交渉の終了期限は、2009年のコペンハーゲン会議とされた。
コペンハーゲン:2009年12月、デンマークのコペンハーゲンで、国連気候変動会議が開催された。高い関心を集めたイベントは、透明性やプロセスに関する論争で彩られた。12月18日深夜、これらの議論は政治的合意「コペンハーゲン合意(Copenhagen Accord)」にまとめられ、その後、COPプレナリーによる採択のため提出された。13時間に及ぶ議論の後、参加者は、最終的には、コペンハーゲン合意に「留意する(take note)」こととし、交渉グループの権限を2010年のCOP 16及びCMP 6まで延長することで合意した。2010年、140を超える諸国が同合意の支持を表明した。さらに80を超える諸国が、自国の緩和目標または行動に関する情報を提出した。
カンクン:2010年12月、メキシコのカンクンで開催された国連気候変動会議において、締約国は、カンクン合意を最終決定し、2つのAWGsの権限をもう1年延長した。条約の下での交渉トラックでは、決定書1/CP.16において、世界の平均気温を産業革命前水準より2℃の上昇で抑えるため、世界の排出量の大幅削減を行う必要があると認識した。締約国は、2015年までのレビューにおいて、提案された1.5℃目標も含め、世界の長期目標の更なる強化を検討することでも合意した。さらに決定書1/CP.16は、緩和の他の側面も論じている、例えば:測定、報告、検証(MRV);及び途上国における森林減少及び森林劣化に由来する排出の削減、並びに保全の役割、持続可能な森林管理、及び森林の炭素貯留量の増加(REDD+)。
さらにカンクン合意は、数件の新しい制度及びプロセスを設置した、これには次のものが含まれる:カンクン適応枠組;適応委員会;及び技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)を含める技術メカニズム。緑の気候基金(GCF)は、条約の資金メカニズムの運用組織として創設され、認定された。
議定書の下での交渉トラックにおいて、CMPは、附属書I締約国に対し、その排出削減の野心水準を引き上げるよう求め、土地利用・土地利用変化・林業に関する決定書2/CMP.6を採択した。
ダーバン:南アフリカ、ダーバンでの国連気候変動会議は、2011年11月及び12月に開催された。ダーバン会議の成果は、広範な題目を網羅しており、特に、2013年から2020年の京都議定書第2約束期間を設置する合意、条約の下での長期的協力行動に関する決定書、GCF運用開始に関する合意が挙げられる。さらに締約国は、「全ての締約国に適用可能な条約の下での議定書、別な法的文書もしくは法的効力を有する合意成果を作成する」ことを任務とするADPの開始でも合意した。ADPは、2015年までに交渉を終了し、その新しい文書は2020年に発効する予定である。これに加え、ADPは、2℃目標に関し、プレ2020年の野心面のギャップを解消するための行動探求の任務も課せられた。
ドーハ:カタール、ドーハでの国連気候変動会議は、2012年の11月、12月に開催された。この会議の成果は、「ドーハ気候合意(Doha Climate Gateway)」と称される決定書のパッケージであった。この中には、京都議定書第2約束期間を設置する京都議定書の改定、ドーハにおいてAWG-KPの作業を終了させるとの合意が含まれた。さらに締約国は、AWG-LCA及びBAPの下での交渉を終了させることでも合意した。更なる審議が必要な数件の問題は、実施のための補助機関(SBI)及び科学的技術的助言のための補助機関(SBSTA)に移行された、例えば:2013-2015年の世界目標のレビュー;先進国及び途上国の緩和;京都議定書の柔軟性メカニズム;国別適応計画;MRV;市場及び非市場メカニズム;REDD+。
ワルシャワ:ワルシャワ国連気候変動会議は、ポーランドのワルシャワで2013年11月に開催された。交渉の焦点となったのは、前回会合で達成された合意の実施であり、この中にはADPの作業推進が含まれた。この会議では、特に締約国に対し、約束草案(INDCs)作成に向けた国内作業の開始もしくは強化を求めるADP決定書が採択された。さらに締約国は、損失と被害に関するワルシャワ国際メカニズム、ワルシャワREDD+枠組―これはREDD+の資金、制度アレンジ、手法論問題に関する一連の7件の決定書―を採択した。
リマ:リマでの国連気候変動会議は、2014年12月、ペルーのリマで開催された。これにはCOP 20とCMP 10が含まれた。3つの補助機関も次の会合を開催した:SBSTA 41、SBI 41、ADP 2-7。
リマでの交渉の焦点は、2015年、パリでのCOP 21における合意に向けた進展を図るために必要とされる、ADPの下での成果であり、これには、2015年の可能な限り早期のINDCs提出に向けた情報及びプロセスの検討、及び交渉文書草案の要素での進展が含まれた。長時間の交渉の末、COP 20は、「リマ気候行動声明(Lima Call for Climate Action)」を採択したが、これは2015年の合意に向けた交渉を動かすものであり、これにはINDCsの提出及びレビューのプロセスが含まれる。さらに当該決定書は、プレ2020年の野心強化も論じている。
締約国は19件の決定書も採択、このうち17件はCOPの下でのもの、2件はCMPの下でのものであり、特に次を行う:損失と被害のためのワルシャワ国際メカニズムの運用開始を推進する;性差別に関するリマ作業計画を設置する;教育及び啓発に関するリマ宣言を採択する。リマ気候変動会議は、2015年合意のための交渉文書草案の要素推敲での進展を確保し、INDCsの範囲や事前情報及びINDCs提出後に事務局がとるべき行動などINDCsに関する決定書を採択したことで、パリ会議の基礎を築くことを可能にした。
会合期間外ハイライト
IRENA総会:国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の第5回総会は、2015年1月17-18日、アラブ首長国連邦のアブダビで開催され、1000名以上が参加した。議論された主要な問題には次が含まれた:同機関事務局長による年次報告の提出;制度問題;再生可能エネルギーと気候変動。閣僚ラウンドテーブルでは、電力部門の転換及びエネルギー安全保障が論じられ、同時に再生可能エネルギーによる発電コスト、及びオフ・グリッドの再生可能エネルギーの展開に関する予定された議論も行われた。この会議では、Adnan Amin氏が4年任期の2期目となるIRENA事務局長に再任された。
ポスト2015年開発アジェンダに関する交渉:ポスト2015年開発アジェンダに関する第1回政府間交渉は、2015年1月19-21日、ニューヨークの国連本部で開催され、世界の新しい持続可能な開発アジェンダ作成に向けた準備状況の「進捗状況報告(stocktaking)」が行われた、このアジェンダは次の4つの要素で構成されるものと期待される:宣言;一連の持続可能な開発目標(SDGs)、目標、指標;その実施方法(MOI)及び新しい開発グローバル・パートナーシップ;及び実施のフォローアップとレビューのための枠組。ここでの議論から、2014年にオープン作業部会が設置されたSDGsに関する提案が支持されていること、第3回開発のための資金供与会議への期待感が、明らかになった。その他の問題では、2015年9月25-27日のサミットにおいてポスト2015年開発アジェンダで合意するとの観点から、今後数カ月間、参加者が会合を重ねる場合、一連のオプションを考慮する必要があることも明らかにされた。
FFD3のための成果文書作成会合:開発資金に関する第3回国際会議(FfD3)の成果文書の第1回草案作成会合は、2015年1月28-30日、ニューヨークの国連本部で開催された。これは、2015年7月13-16日、エチオピアのアディスアベバで開催予定のFfD3の成果文書を交渉する3回の草案作成会議の第1回である。この会議では次の問題が議論された:国内の公的資金;国内及び国際的な民間資金;国際的な公的資金;貿易;技術;発明及びキャパシティビルディング;各国の国家債務;システム上の問題;モニタリング、データ、フォローアップ。多数の参加者が、気候資金に焦点を当てた。モンテレイ・コンセンサスに基づき構築し、ポスト2015年開発アジェンダとの一貫性を達成することでは、広範な支持が得られた。共同進行役は、2015年4月の次回草案作成会議の前に、この1月会合での議論を踏まえたゼロ稿草案を作成する。
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