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国連気候変動会議がペルー・リマで本日開幕し、12月12日迄の日程で開催される。この会議では、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第20回締約国会議(COP20)、京都議定書第10回締約国会合(CMP10)、ならびに3つの補助機関の会合として、実施に関する補助機関(SBI)、科学的・技術的助言に関する補助機関(SBSTA)、強化された行動のためのダーバンプラットフォーム特別作業部会(ADP)も同時に開催される。
今次会議では、資金、緩和、適応、技術といった議題を中心に検討する。また、COPは、2015年までに2020年よりも遅くならないように「条約の下で全ての締約国に適用可能な、議定書、法的文書、もしくは法的効力を有する合意成果を形成する」という目的に向けた3カ年の進捗状況について、ADPから報告を受けることになっている。
UNFCCCと京都議定書のこれまでの経緯
気候変動に対する国際政治の対応は、1992年、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。気候に対する「危険な人為的干渉」を回避するため温室効果ガスの大気濃度安定化を目指し、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効、現在は196の締約国を有する。
1997年12月、日本の京都で開催された第3回締約国会議(COP 3)に参加した各国政府の代表は、先進工業国および市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で、附属書Ⅰ国と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)の間に6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別目標を担うことで合意した。京都議定書は、2005年2月16日に発効し、現在、192の締約国を有する。
2005-2009年の長期交渉: 2005年、カナダ・モントリオールで開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP1)では、議定書3.9条に則り、京都議定書の下で附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第一約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書Ⅰ国の更なる約束を検討することをその役割と定めた。
2007年12月、インドネシア・バリで開催されたCOP13及びCMP3では、長期的な問題に関するバリ・ロードマップについて合意に至った。COP13は、バリ行動計画を採択するとともに、条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)を設立し、緩和、適応、資金、技術、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議する役目を定めた。また、AWG-KPの下では、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する交渉が続けられた。さらに、2つの交渉トラックが結論を出す期限は、2009年のコペンハーゲン会議と定められた。
コペンハーゲン:2009年12月、デンマーク・コペンハーゲンで国連気候変動会議が開催された。非常に大きな注目を浴びる会議となったが、透明性やプロセスをめぐる論争が目立った。ハイレベルセグメントでは、主要な経済国や様々な地域の代表、その他の交渉グループの代表で構成されるグループによる非公式交渉が行われた。12月18日深夜、会議の成果として政治合意である「コペンハーゲン・アコード」が成され、その後、採択のためにCOPプレナリーに提出された。それから13時間にわたる議論の末、参加者は、コペンハーゲン合意に「留意する」ことで合意した。また、締約国はAWG-LCAおよびAWG-KPの役割をそれぞれ 2010年のCOP16及びCMP6まで延長することで合意した。 2010年には140カ国以上がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家緩和目標または行動に関する情報を提出した。
カンクン: 2010年12月にメキシコ・カンクンでの国連気候変動会議が開催され、締約国はカンクン合意を成立させるとともに、2つのAWGを一年延長させることでも合意した。条約の交渉トラックでは、決定書 1/CP.16において、産業革命以降の世界の平均気温の上昇を2℃以内に抑えるには世界の排出量の大幅な削減が必要であると認識された。締約国は、世界の長期目標を定期的にレビューし、2015年までのレビュー期間中に目標の強化を更に検討するということで合意し、その際に1.5℃を目標とする案についても検討することで合意した。また、決定書1/CP.16には、測定・報告・検証(MRV)やREDD+(途上国における森林減少や森林劣化からの排出削減策、森林保全の役割、持続的な森林管理や森林炭素吸収源の強化)等、緩和に係わるその他の側面についても記載された。
さらに、カンクン合意は、いくつかの新たな制度やプロセスを創設した。その中には、カンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズムがあり、技術メカニズムの下では技術執行委員会(TEC)と気候技術センター・ネットワーク(CTCN)が設立された。また、緑の気候基金(GCF)が新設され、条約の資金メカニズム運用機関と指定された。条約の交渉トラックは、世界全体の排出削減目標の実現に向けて、附属書I国に対して野心レベルを引き上げるよう要請し、土地利用・土地利用変化・林業(LULUCF)に関する決定書2/CP.6を採択した。
ダーバン:南アフリカ・ダーバンでの国連気候変動会議は、2011年11月28日から12月11日に開催された。ダーバンの成果としては広範なトピックが網羅されたが、特に京都議定書の第二約束期間の設置や、条約の長期的協力行動に関する決定、GCFの運用開始に関する合意などが盛り込まれた。締約国は、「条約下で全ての締約国に適用可能な、議定書、法的文書、もしくは法的効力を有する合意成果の形成」を目的とする新組織としてADPを発足させることでも合意した。また、ADPでの交渉は2015年中に完了させることとし、2020年には新合意の発効を目指すこととした。さらに、ADPは2℃目標に絡んで2020年までの野心ギャップを埋めるための行動を模索する役割も付与された。
ドーハ: 2012年11月26日-12月8日、カタール・ドーハにて、国連気候変動会議が行われ、「ドーハ気候ゲートウェイ」と称される一連の決定書パッケージが作成された。その中には、第二約束期間を定めるための京都議定書改正やドーハでAWG-KPの作業を最終的に完了させるための合意が盛り込まれた。また、AWG-LCAの作業完了についても締約国の合意がなされた。一方、2013-15年の世界目標に関するレビューや先進国と途上国の緩和、京都議定書の柔軟性メカニズム、国別適応計画(NAP)、MRV、市場および市場以外のメカニズム、REDD+等、さらなる議論が必要とされる数多くの問題については、SBI及びSBSTAに付託されることとなった。
ワルシャワ: 2013年11月11日-23日、ポーランド・ワルシャワにて、気候変動会議が開催された。ADPのフォローアップ作業等、これまでの会議で成立した合意内容の実施に関する集中交渉が行われた。この会議では、各国が決定する約束草案(INDC)のための国内準備作業の開始または強化を締約国に要請し、BAPの完全実施ならびに2020年までの野心を加速する決意を記すADP決定書が採択された。また、損失被害に関するワルシャワ国際メカニズムの設立、ならびにREDD+の資金や制度的アレンジ、方法論の問題等に関する7つの決定書を盛り込んだワルシャワREDD+枠組みの設置を定める決定書も採択された。
会合間のハイライト
ADP 2-4: ADP第2回会合第4部 (ADP 2-4)は2014年3月10-14日、ドイツ・ボンで開催された。ワークストリーム1 (2015年合意)では、議題項目3についてオープンエンド型の協議が行われ、適応、INDC、資金・技術・キャパシティビルディング (実施手段) 、野心・衡平性、緩和、行動や支援の透明性、その他の各要素に絡む諸問題などについて議論した。また、インセッション・ワークショップでは、 INDCの国内準備の問題が取り上げられた。ワークストリーム 2(2020年までの野心)では、再生可能エネルギーやエネルギー効率に関する技術専門家会合(TEM)を実施した。
ボン会合間会議:ボン気候変動会議は2014年6月4-15日、ドイツ・ボンで開催され、 SBI及びSBSTA第40回会合およびADP第2回会合第5部 (ADP 2-5)も併催された。会期中にADPに関する交渉が進展し、リマCOP及びCMPに提出される決定書草案も作成された。また、各国の閣僚レベルが参加するイベントとして、議定書の実施状況を評価し、各国の排出抑制削減の約束(QELRC)を引き上げる機会の提供を目指した“京都議定書の下でのハイレベル閣僚級ラウンドテーブル”、および2020年までの野心を引き上げて2015年合意に関する交渉の機運を盛り上げることを目指した“強化された行動のためのダーバンプラットフォームに関するハイレベル閣僚級ダイアログ”の2つが開催された。
ADP 2-6: ADP第2回会合第6部(ADP 2-6) は2014年10月20-25日、ドイツ・ボンで開催された。ワークストリーム1では、2015年合意の最終形の土台となる交渉テキスト案の要素を詰める協議が続けられ、交渉文案の要素について締約国の意見や提案をまとめた “ノンペーパー”が検討された。また、ADPでは、 各国がINDCを通知する際に提供する情報の種別を定める決定書草案についても検討作業を行い、これらの貢献が今後どのような形で考慮されるのか審議した。ワークストリーム2では、CO2以外のGHGに関する行動の機会、炭素回収貯留利用、エネルギー効率や再生可能エネルギー、都市環境や土地利用の改善を通じた2020年までの緩和機会の向上に関するフォローアップを行うTEM会合等について、TEMでの審議を行った。また、締約国は2020年までの野心に関する決定書草案についての議論も行った。
IPCC-40:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第40回総会が2014年10月27日-11月1日、デンマーク・コペンハーゲンで開催され、IPCC第5次報告書(AR5)を構成する「統合報告書」(SYR)及び「政策決定者向け要約」(SPM)を検討し、これらを完成させた。AR5の作成にあたっては、過去6年にわたり、世界85ヶ国の800名以上の執筆者及び査読編集者が携わった。報告書には「気候変動には疑いの余地がなく、前例のないものである。最も深刻な影響を回避するには大幅かつ持続的な排出削減が必要である。行動を遅らせれば遅らせるほど被害額は甚大になり、将来まだ実証されていない技術に多くを依存しなければならなくなる」という結論が記載された。
モントリオール議定書MOP26: オゾン層保護に関するウィーン条約第10回締約国会議(COP10)及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書第26回締約国会合(MOP26)が2014年11月17-21日、フランス・パリで開催された。 MOP26及びCOP10では、多国間基金(MLF)の拠出金問題をはじめとする数多くの問題について審議することができた。しかしながら、議定書の中で「オゾン層を破壊しないが高い温室効果を有するODS代替物質」として紹介される、ハイドロフルオロカーボン類(HFC)に対処するために議定書を改正するべきか否かという議題については合意に至らなかった。
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