Daily report for 10 June 2013
午前中、2020年までの野心引き上げに向けた実際的アプローチに関するADPワークショップが開催された。午後、リンケージに関するADPワークショップが開催され、合わせて決定書1/CP.16、パラグラフ70 (REDD+)に記載する活動の全面実施に向けた成果ベース資金に関するワークショップ及び条約第6条(教育、訓練及び啓発)に関するドーハ作業計画の実施推進のための第1回会合期間内SBIダイアログも開催された。一日を通し、SBSTA、ADPの下での非公式協議、及びSBI議題書に関する非公式協議が開催された。
ワークショップ
2020年までの野心引き上げに向けた実際的アプローチ及び今後の進め方に関するワークショップ(ADPワークストリーム2):午前中のADPワークショップで、締約国は、資金、技術、キャパシティビルディングに関する議論を続け、その後、COP 19までの進め方について議論した。
南アフリカは、世界経済の不安定を実施方法実現を遅らせる言い訳にすることに警告し、GCFの資本強化に焦点を当てる必要があると強調した。
ベネズエラはLMDC(訳注:Like Minded Developing Countries、有志途上国)の立場で発言し、モーリシャスの支持を受け、先進国の排出削減量は国内行動に基づくべきだと強調し、実施方法の実現を求めた。同代表は、HFCsをモントリオール議定書の下で検討することに反対した。
ブラジルは、経済の構造改革及び低炭素投資の必要性に賛同したが、先進国が先頭に立つ必要があると強調した。
COP 19までの進め方に関し、ナウルはAOSIS(訳注:小島嶼国連合)の立場で発言し、ネパール、インドネシア、ケニアの支持を受け、次の提案を行った:エネルギー政策及び技術に関するものも含めた文書提出、排出削減量、障壁、及び障壁克服戦略に焦点を当てる;締約国が直面する特定の問題に関する締約国提出文書を取りまとめ、合わせて技術専門家会議で得られた対応策を記載するテクニカルペーパー;技術ワークショップ;COP 19での閣僚級ラウンドテーブル。フィリピンは、提案をさらに拡大し適応も対象とするよう求めた。
技術ワークショップに関し、ベネズエラは、「規範的動向(normative trends)」、パイロット・プラクティス、パラダイムシフトを推進する方法について議論するのが有用だろうと述べた。
EUは、COP 19への期待について、次のものが含まれると説明した:先進国が先導する形での新しいプレッジ、既存のプレッジの野心引き上げ;HFCsの段階的廃止に関する決定書;国際イニシアティブの仲介役としてのUNFCCCの役割を練り上げること;UNFCCCと2014年国連リーダーズサミットなど他のプロセスとのリンク。
中国は、附属書ⅠのQELROs(訳注:数量化された排出抑制及び削減目標)の再検討、及び京都議定書の第二約束期間に参加しない附属書Ⅰ国に対し同等な目標を持つよう求めることを提案した。同代表は、COP 19では資金に焦点を当てるべきだと強調した。サウジアラビアは、以下を強調した:多様な行動を含める総合的なアプローチ;条約の原則および条項の適用。
マリはアフリカングループの立場で発言し、締約国は特定のオプションまたは部門に集中すべきでないと述べた。COP 19の成果に関し、同代表は次を求めた:附属書Ⅰ国からの支援をレビューするプロセス;長期資金への毎年一千億米ドルの供与に関する明確化;炭素価格引き上げオプション。
リンケージ(ADPワークストリーム1):午後のADPワークショップで、ブラジルは、自国の提案を提出し、ブラジル案は排出量だけでなく気温上昇に対する相対的な歴史的貢献度という意味でも歴史責任に対応していると強調した。同代表は、この提案に関する追加の議論を求め、SBSTAが次の行動をとることを提案した:IPCCに対し手法論の作業を行うよう求める;締約国に対し、過去の排出量の推計を行うよう求める;気温上昇に対する先進国の貢献度を測るため専門家グループを設置する。
リンケージに関し、インドは、ADPワークストリーム1と2のリンケージを設置し、補助機関、IPCC、2013-2015年レビューが2015年合意にどのように情報を与えるか検討する必要があると強調した。EUは、2015年合意に必要な緩和要素及び適応要素に関する提出文書を求めた。エクアドルは、緩和、資金、技術、適応でのギャップにおけるリンケージに焦点を当てるよう求めた。スイスは、新しい合意と次の項目とリンクさせる必要性を強調した:化石燃料の排出量を見越した科学的現実;適応および公的資金供与を超えて先を見据えた政治的な現実。米国は、次のような新しい合意を主張した:簡略で全てのものに適用され、永続的なもの;条約の下での経験および実施方法に基づくもの;構造面の再交渉ではなく、各要素の実際運用に焦点を当てる;広く国民に受け入れられるもの。
条約第6条(教育、訓練及び啓発)に関するドーハ作業計画の実施に関するダイアログ:このダイアログの共同進行役は、Adriana Valenzuela (ドミニカ共和国)とRichard Merzian (オーストラリア)が務めた。
気候変動教育の戦略的手法及び長期計画に関するパネルディスカッションで、参加者は次の点に焦点を当てた:能力面のニーズ評価;学校のカリキュラムに気候変動を組み入れる;教育上のニーズを評価するボトムアップ手法。各国の戦略成果及び長期的影響の持続可能性を確保する方法について、インドネシアのAmanda Katilin Niodeは、組織間の活動を調整し、国際レベルでレビューを実施する能力が課題であると強調した。国際政策の国内行動への転換に関し、参加者は、条約6条に関するドーハ作業計画が国内対応策の協調を図る根幹であると強調した。
国内レベルの気候変動教育の実施における課題、優れた実施方法、学習事項に関し、モーリシャスのJogeeswar Seewoobaduthは、アフリカにおける持続可能な開発のための気候変動教育(CCE)に関する専門家会議の提案に関し、プレゼンテーションを行った。同氏は、世界的観点と地方の観点の結び付きに焦点を当て、アフリカでの教育システムを通した適応及び緩和への対応を強調した。スウェーデンのMats Kullbergは、CCEは国内目標及び国際目標を達成するツールであると指摘し、環境行動を子供や若者に伝えていく事例に焦点を当てた。米国のFrank Niepoldは、CCEの国内実施での課題、優れた実施方法、学習事項に関する米国の観点を示し、科学組織及び教育組織間のパートナーシップによる、聴衆に焦点を当てた地域社会に根ざした手法を強調した。
ガールガイドとガールスカウトの世界連盟(WAGGGS)のHarriet Thewは、同連盟による協調的で多部門、三本柱の「学び、語り、行動する」方法について論じた。気候変動に関する国際先住民フォーラム(IIPFCC) のネパール出身Pasang Dolma Sherpaは、CCEに関する世界的パートナーシップ・イニシアティブの概要を説明し、TEBTEBBAとのパートナーシップによるアジア、アフリカ、中南米での訓練についても説明した。Centre for Environment EducationのRixa Schwarzは、変革を進める要素としての教育に注目し、ハンズオンプロジェクトによる持続可能性に向けた解決策中心の行動という同組織の手法について論じた。
日本のMakoto Katoは、成果測定に関し、日本における気候変動教育の効果測定についてのプレゼンテーションを行った。ガンビアのBubu Pateh Jallowは、セイシェルの学校における雨水集積プロジェクトなど、成果ベースの教育活動について論じた。参加者は特に次の点についても検討した:マイルストーンの設定、情報収集、専門家のレビューを含める、事前および事後の効果測定;気候変動教育のベースライン設定。
決定書1/CP.16、パラグラフ70 (REDD+)の活動の全面的実施に対する成果ベースの資金供与:午後のREDD+に関するワークショップにおいて、ガーナのYaw Osafoは、追加議論すべき問題を特定した、これには次のものが含まれる:成果ベースの行動の範囲;REDD+の「プラス」の明確化;GCF理事会に対するガイダンス;制度アレンジを練り上げる必要性。
EUは、REDD+の成果ベース資金における特異な特徴を説明した、これには次のものが含まれる:土地ベース;広大な面積を対象とする;生活に影響する;複雑な推進要素を扱う;セーフガードを必要とする。同代表は、参照レベルとインセンティブ・レベルの関係、二重計算を避けるための成果ベースの支払い追跡の必要性など、保留問題に焦点を当てた。
ガーナは、資金アクセスでの課題を指摘し、支援での協調のなさ、REDD+の行動と支援の国内レジストリの欠如に注目した。同代表は、資金制度により基準、標準、手続きが異なり、このため資金アクセスが複雑化していると強調した。同代表は、特に次の必要性を強調した:手法論上の要求事項と資金ニーズとのバランス;信頼できる追跡システム;GCFによる官民の資金源の仲介。
インドネシアは、二国間、多国間イニシアティブが既存の活動の強化や、ギャップを埋め、二重計算を回避することに焦点を当てると共に、国レベルでの利害関係者の能力強化に注目するよう提案した。
オーストラリアは、民間の資金供与の可能性に注目し、可能な環境を築き、投資リスクを軽減するよう求めた。同代表は、実際に提供できた製品、この場合は回避した排出量に基づき支払うべきだと述べた。同代表は、UNFCCCの決定書は各国が国内のREDD+面での意思決定を行えるよう、柔軟性を提供する必要があると強調した。
コスタリカは、環境サービスに対する国家支払い(PES)スキームについてプレゼンテーションを行い、自国の経験を指摘した:炭素以外の便益を考慮する;異なる資金源を得る;多様な森林関連活動に対し補償する。同代表は、各国の意思決定には、予見可能な資金が「必須(a must)」であると強調した。
議論の中で、ボリビアは、事前資金供与を伴う緩和と適応共同の手法に焦点を当てた。ガイアナは、特に多様な資金源から支払いを得る必要があると強調し、資金の一貫性および言行一致を高める新たな国際構造の必要性も指摘した。中国は、資金の予見可能性、REDD+資金の規模拡大、特に公的資金源からの資金規模拡大が重要だと強調した。パプアニューギニアは、途上国は持続可能な資金の明確化を必要としていると強調し、優れたガバナンスの重要性に焦点を当てた。スイスはEIG(訳注:環境十全性グループ)の立場で発言し、COPガイダンスがREDD+資金の追加負担を生むことがあってはならないと指摘し、早期資金と長期資金の間のギャップを埋める必要があると指摘した。ブラジルは、成果が十分モニタリングされ、報告され、検証された後の資金供与方法と手段を議論する必要があると強調した。EUは、リスクを軽減する方法として地域社会の参画に注目し、資金は多様な資金源からのものにすべきだと述べた。
COP 19に対する期待に関し、コロンビアは、REDD+に特有のもの、たとえば資金のセーフガードと、GCFなどの組織とを結び付け、成果ベースの行動に資金を供与する構造を求めた。ノルウェーは、REDD+を資金メカニズムに結び付けるCOP決定書を求め、このようなメカニズムを利用可能にするよう求めた。タイとドミニカは、COPの下でのREDD+統治組織を求めた。
市民社会組織は、REDD+の資金構造、市場の役割、セーフガードの重要性、タイムリーで適切な支払いの必要性を論じた。
廊下にて
月曜日、交渉が再開され、SBI議題書では、「議長の友人」グループの非公式協議が続けられたが、成果を得ることはなかった。この部屋から出てきた参加者の一人は、「もう十分だ(enough is enough)」と述べ、今これからどう進むかというと、プレナリーの議論を再開することだと宣言した。
参加者がSBIやADPでの作業継続方法について徹底的な議論をしようとする中、ボン会議不在が目立つ国際メディアの関心は、新しい国際エネルギー機関の報告書に集中している、この報告書は、化石燃料の利用によるGHG排出量が2012年に最高記録まで上昇したと指摘し、世界は、産業革命前から2℃以内の世界平均気温上昇に抑えるというUNFCCC合意目標をはるかに上回る、3.6℃から5.3℃の温暖化に向かっていると警告した。さらにこの報告書は、各国及び各企業に対し、次のことなどを行うよう求めている:積極的なエネルギー効率化措置の実施;石油および天然ガス生産でのメタンの放出削減;化石燃料補助金の段階的廃止。
軽い話題では、GRULAC(訳注:ラテンアメリカ・カリブ海グループ)の昼食会において、COP 20のペルーでの開催、ベネズエラでのプレCOP会議の開催が合意された。参加者数名は、極めて多忙な会議となりそうな2014年会議が終わると、マチュピチュへの会議後ラッシュが起きるのではないかと冗談をかわしていた。
This issue of the Earth Negotiations Bulletin © <enb@iisd.org> is written and edited by Jennifer Allan, Beate Antonich, Asheline Appleton, Rishikesh Ram Bhandary, Elena Kosolapova, Ph.D., and Eugenia Recio. The Digital Editor is Leila Mead. The Editor is Pamela S. Chasek, Ph.D. <pam@iisd.org>. The Director of IISD Reporting Services is Langston James “Kimo” Goree VI <kimo@iisd.org>. The Sustaining Donor of the Bulletin is the European Commission (DG-ENV). General Support for the Bulletin during 2013 is provided by the German Federal Ministry for the Environment, Nature Conservation and Nuclear Safety (BMU), the Ministry of Environment of Sweden, the New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade, SWAN International, the Swiss Federal Office for the Environment (FOEN), the Finnish Ministry for Foreign Affairs, the Japanese Ministry of Environment (through the Institute for Global Environmental Strategies - IGES), and the United Nations Environment Programme (UNEP). Funding for translation of the Bulletin into French has been provided by the Government of France, the Belgium Walloon Region, Québec, and the International Organization of the Francophone (OIF and IEPF). The opinions expressed in the Bulletin are those of the authors and do not necessarily reflect the views of IISD or other donors. Excerpts from the Bulletin may be used in non-commercial publications with appropriate academic citation. For information on the Bulletin, including requests to provide reporting services, contact the Director of IISD Reporting Services at <kimo@iisd.org>, +1-646-536-7556 or 300 East 56th St., 11D, New York, NY 10022 USA. The ENB Team at the Bonn Climate Change Conference - June 2013 can be contacted by e-mail at <asheline@iisd.org>.