Curtain raiser
ボン気候変動会議がドイツ・ボン、Maritim Hotelにて本日開幕、6月14日まで2週間の日程で開催される。ここでは、実施に関する補助機関 (SBI 38) 及び 科学上及び技術上の助言に関する補助機関 (SBSTA 38) 第38回会合ならびに強化された行動のためのダーバン ・プラットフォーム特別作業部会第2回会合第2セッション(ADP 2-2)が行われる。
SBIでは、 国別報告書; 途上国による国別適切緩和行動(NAMA);京都議定書の柔軟性メカニズムに関する諸問題; 後発開発途上国(LDC);国別適応計画; 損失・被害; 資金; 技術; キャパシティビルディング; 対応措置; 及び政府間会合のためのアレンジ等を含む議題項目が取り上げられる予定である。
SBSTAでは、特にナイロビ作業計画; 開発途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減並らびに森林保全、炭素貯留量の増加(REDD+); 技術; 研究及び系統的観測; 対応措置; 農業; 条約及び京都議定書の下での方法論の問題; 市場及び市場以外のメカニズム; 及び2013-2015年の見直し等について検討される予定だ。補助機関(SB)ではイン・セッション・ワークショップやイベントも多数開催されることとなっている。ADPの会合はラウンドテーブルやワークショップを中心に開催されるが、ADPの作業を進めるための手順についてもさらに検討が行われる。
UNFCCCと京都議定書のこれまでの経緯
気候変動に対する国際政治の対応は、1992年、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の採択に始まる。気候系に対する「危険な人為的干渉」を回避するため温室効果ガスの大気濃度安定化を目指し、その枠組みを規定した条約であり、1994年3月21日に発効、現在は195の締約国を有する。
1997年12月、日本の京都で開催された第3回締約国会議(COP 3)に参加した各国政府の代表らは、先進工業国および市場経済移行国に排出削減目標の達成を義務付けるUNFCCCの議定書に合意。UNFCCCの下で、附属書Ⅰ国と呼ばれる国々が、2008-2012年(第一約束期間)の間に6種の温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年と比較して全体で平均5%削減し、各国ごとに異なる個別目標を担うことで合意した。京都議定書は、2005年2月16日に発効し、現在、192の締約国を有する。
2005-2009年の長期交渉:
2005年末、カナダ・モントリオールで開催された京都議定書の第1回締約国会合(CMP1)では、議定書3.9条に則り、京都議定書の下での附属書Ⅰ国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)の設立を決定し、第一約束期間が終了する少なくとも7年前までに附属書Ⅰ国の更なる約束を検討することを、その役割と定めた。また、COP 11では、「条約ダイアログ」と呼ばれる4回のワークショップを通じて、条約の下での長期的協力を検討するプロセスも創設された。
2007年12月、インドネシア・バリで開催されたCOP 13及び CMP 3では、長期的な問題に関するバリ・ロードマップについて合意に至った。COP 13は、バリ行動計画を採択するとともに、条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)を設立し、緩和、適応、資金、技術、長期協力行動の共有ビジョンを中心に討議することを役割づけた。また、AWG-KPの下では、附属書Ⅰ国の更なる約束に関する交渉が続けられた。2つの交渉トラックが結論を出す期限については、2009年12月のコペンハーゲン会議とし、その準備作業として両AWGは2008-2009年に数回の交渉会議を開催した。
コペンハーゲン:デンマーク・コペンハーゲンでの国連気候変動会議は2009年12月に開催された。非常に大きな注目を浴びる会議となったが、透明性やプロセスをめぐる論争が目立った。ハイレベル・セグメントでは、主要な経済国や様々な地域の代表、その他の交渉グループの代表で構成されるグループによる非公式交渉が行われた。12月18日深夜、会議の成果として政治合意である「コペンハーゲン・アコード」が成され、その後、採択のためにCOPプレナリーに提出された。それから13時間にわたる議論の末、参加者は、コペンハーゲン合意に「留意する」ことで合意した。2010年には140カ国以上がこの合意への支持を表明し、80カ国以上が国家緩和目標または行動に関する情報を提出した。また、締約国はAWG-LCAおよびAWG-KPの役割をそれぞれ COP 16及びCMP 6まで延長することでも合意した。
カンクン:メキシコ・カンクンでの国連気候変動会議は2010年12月に開催され、締約国はカンクン合意を成立させた。条約の交渉トラックでは、決定書 1/CP.16において、世界の平均気温の上昇を2℃以内に抑えるには世界の排出量の大幅な削減が必要であると認識された。締約国は、世界の長期目標を定期的にレビューし、2015年までのレビュー期間中に目標の強化を更に検討するということで合意し、その際に1.5℃を目標とする案についても検討することで合意した。また締約国は、先進国と途上国がそれぞれ通知した排出削減目標や国別適切緩和行動(NAMA)に留意した。決定書1/CP.16には、測定・報告・検証(MRV)やREDD+等、緩和の他の側面についても記載された。
さらに、カンクン合意は、いくつかの新たな制度やプロセスを創設した。その中に、カンクン適応枠組み、適応委員会、技術メカニズムが含まれ、技術メカニズムの下には技術執行委員会と気候技術センター・ネットワークが設立された。また、緑の気候基金(GCF)が新設され、24人のメンバーによる理事会が統治する条約の資金メカニズムの運用機関として指定された。締約国は、この基金の設計を課題とする移行委員会や、資金メカニズムに関してCOP を支援する常設委員会の設置についても合意した。さらに、締約国は、先進国が2010-2012年に早期開始資金300億米ドルを供給し、2020年までに年間1千億米ドルを合同で動員するとの先進国の約束についても認識した。
議定書の交渉トラックでは、CMPは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書に明記されたレンジに合わせて合計排出削減量を達成するべく附属書Ⅰ国が野心度を引き上げるよう促し、土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF)に関する決定書 2/CMP.6を採択した。また、両AWGのマンデートはもう一年延長されることとなった。
ダーバン:南アフリカ・ダーバンでの国連気候変動会議は、2011年11月28日から12月11日に開催された。ダーバンの成果は、広範なトピックを網羅し、特に京都議定書の下での第二約束期間の設置や、条約の下での長期的協力行動に関する決定、GCFの運用開始に関する合意が含まれた。締約国は、「条約の下で全ての締約国に適用可能な、議定書、法的文書、もしくは法的効力を有する合意成果の形成」を目的とする新組織、ADPを発足させることでも合意した。ADPでの交渉は2015年末までに完了させることとし、2020年には新合意を発効させることを目指す。さらに、ADPは2℃目標に絡んで2020年までの野心ギャップを埋めるための行動を模索する役割も付与されている。
ボン: 2012年5月14日-25日にドイツ・ボンで開催された気候変動会議では、第36回SBI・SBSTA会合やAWG-LCA 15、AWG-KP 17、ADP第1回会合も同時開催された。AWG-KPでは、京都議定書の第二約束期間を採択するための最終的な決定事項や、AWG-KPがCMP 8で作業を完了させるための諸問題に焦点が当てられた。京都議定書の第二約束期間の長さや余剰ユニット繰越問題をはじめとする多数の懸案事項が残された。
AWG-LCAでは、COP 18でAWG-LCAの作業を完了させるために検討すべき問題について討議が続けられた。先進国は「著しい進展」を強調し、カンクン及びダーバンで様々な新制度が設置されたことを強調した。一方、途上国の多くは、バリ行動計画の目的遵守に必要とされる課題の議論を続けるべきだと指摘した。
ADPで議論の中心となったのは、議題と役員選出だった。約2週間の議論ののち、ADPプレナリーでは、ビューローの調整について合意し、議題書を採択。2つのワーク・ストリーム(作業部会)も開始されることとなった。そのうちの一つが、決定書 1/CP.17 (2015年合意)のパラグラフ2-6に関する事項、もう一つがパラグラフ7-8(2020年までの期間の野心レベルの引き上げ)等の問題について対応するものであり、役員選出については合意が成された。
バンコク:2012年8月30日-9月5日、タイ・バンコクで非公式の交渉が行われた。ADPでは、ADPに対するビジョンや希望、また、期待する成果やそうした成果の達成策などについて議論するラウンドテーブルが開催された。また、野心の強化や実施手段の役割、国際協力イニシャティブ強化の方策ならびにADPの作業の骨組みを成す諸要素などについても議論が行われた。
AWG-KPでは、ドーハでCMPに対して改正案を勧告し、AWG-KPの作業を成功裏に完了できるよう、懸案事項の解決に焦点があてられた。2013年1月1日から議定書の第二約束期間が即時開始できるようするためのものだった。
AWG-LCAでは、COP 17からの具体的な要請を実現するための現実的な解決策について、引き続き作業が行われた。とりわけ、ドーハでAWG-LCAの作業を解決するために必要とされる成果や、AWG-LCAの最終的な成果に諸要素をどのように反映させるのかという問題や、COP 18以降も追加的な作業が必要になるかどうかという点について集中的な討議が行われた。
ドーハ: 2012年11月26日-12月8日、国連ドーハ気候変動会議が行われ、「ドーハ気候ゲートウェイ」と称される一連の決定書パッケージが作成された。その中で、第二約束期間を定めるための京都議定書改正やドーハでAWG-KPの作業を最終的に完了させるための合意が盛り込まれた。また、AWG-LCAの作業完了やバリ行動計画の下での交渉終了についても締約国の合意がなされた。世界目標の2013-15年のレビューや先進国及び途上国の緩和、京都議定書の柔軟性メカニズム、国別適応計画、MRV、市場及び市場以外のメカニズム、REDD+等、さらに議論が必要とされる数多くの問題については、SBI及びSBSTAに付託されることとなった。また、ドーハの成果の重要な要素としては、途上国の特に気候変動の悪影響に脆弱な国々における損失・被害に対応する国際的なメカニズム等、制度的なアレンジを設立するための合意が盛り込まれたことである。
ADP 2:2013年4月29日-5月3日、ボンでADP 2が開催された。ワークショップとラウンドテーブル を中心に構成された同会議では、ADPの2つのワークストリーム、すなわち、2015年合意 (ワークストリーム 1) 及び2020年までの野心(ワークストリーム 2)が取り上げられた。ADP 閉会をもって討議はいったん中断となり、6月のボン気候変動会議で再開されることとなった。
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