Daily report for 8 June 2013
ADP ワークストリーム 2 ラウンドテーブル(2020年までの野心を引き上げるための実践的なアプローチ構築など)2種、及びワークストリーム 1 (活動の種類)のラウンドテーブルが午前中、開催された。午後には、活動の種類に関するADP ラウンドテーブル が引続き行われ、数多くのSBSTAコンタクトグループや非公式会合が終日開催された。また、議長フレンズ会合も一日中開催された。
ADP
ラウンドテーブル ワークストリーム 2: 2020年までの野心を引き上げるための実践的なアプローチ構築; 気候資金・ 技術・キャパシティビルディングの強化: 排出ギャップを埋めるための方策について討議が行われた後、気候資金や 技術、キャパシティビルディングについての討議に移った。
中国は、モデリングの結果を紹介し、2020年までの附属書I国の “炭素スペースの過剰使用” が緩和ギャップを起こしたと結論づけた。 また、その他、適応や、歴史的責任に基づく持続可能な開発への公平なアクセス、途上国支援等の分野にもギャップがあると強調した。米国は、複数のセクターが考慮されている別の研究調査では、2020年までに途上国からの歴史的な排出量が先進国のそれを上回ることが示唆されているとし、現在の排出量は12年ごとに1970年までの過去の排出量すべてと等しくなる計算だと強調した。
EUは、固定資本やインフラへの投資等について現在行われている政策的な選択 が将来にインパクトをもたらすと強調した。これを受けて、 中国は、2010年までに附属書I国の累積排出量が全体の7割を占めていると強調し、世界的な景気後退の影響で新興国経済の排出量増加率が鈍化する見通しであると述べた。
締約国のプレゼンテーション: EUは、GCFによって低炭素化や気候への耐性ある開発へのパラダイム・シフトを促せるとし、長期目標の設定が投資家のみならず2015年の法的拘束力を有する文書のために不可欠であるとの見方を示した。また、リスクを軽減させ、リターンの確実性を向上させるために、リスク共有とリスク分析が 必要であると述べた。
排出ギャップを埋めるための国内のイニシアティブに焦点をあて、ウガンダは、途上国の開発目標を維持する一方で、低炭素開発に向けた調整はまず情報に基づいた政策から始める必要があるとの見方を示した。
ベネズエラは、持続可能ではないライフスタイルを変革する必要があると指摘し、政策決定を市場任せにすることに釘を刺した。
気候にやさしい技術に向けた投資への移行については、米国が、先進国は資金源を動員する必要があるが、途上国は国内のイネーブリング環境を強化する必要があると指摘し、低排出開発戦略 (LEDS)には、国内及び援助国の支出と気候変動及び開発目標とを確実に整合性させることが必要不可欠だとしながらも、資金動員の課題を解決するための「魔法の特効薬」はないと釘を刺した。
締約国のインターベンション: 中国は、先進国の公的融資の活用が民間の資本や技術市場にインセンティブを与えるための触媒になると示唆した。ナウルは、 AOSISの立場から、エネルギー効率、再生可能エネルギー、炭素回収貯留といった分野の具体的な緩和のソリューションに対する政策オプションについて記載したテクニカル・ペーパーの作成を求めた。インドネシアは、資金と技術を動員するためには、国際レベルで先進国におけるイネーブリング環境を検討することが重要だと強調した。
ワークストリーム 1に関するADP ラウンドテーブル(行動の種類):締約国のプレゼンテーション: 衡平性参照フレームワークを綿密に作成するよう求め、ガンビアは、LDCsの立場から、 測定基準および歴史的責任や将来の持続的なニーズ、脆弱性といった基準以外の尺度の活用を支持した。
エチオピアは、特に、歴史的排出量および1人あたりの排出量; 世界平均気温目標; 数値化された配賦された大気圏; 数値化された排出権などに関するハイブリッドなアプローチを提唱した。
スイスは、共通のルールや期待、協議段階および共通のMRV制度などを含めた、負担共有に対するハイブリッドなアプローチを提唱し、協議段階は誓約のとりまとめ、2°C 目標に対する誓約のとりまとめ、残りのギャップに対処するための協力などを実施するフェーズのことであると説明した。
締約国のインターベンション: EUは、2015年合意について、各国および全体として公平なもので、2°C目標を達成可能なものか試す必要があるとし、その目的に向けて、すべての締約国が、CBDRに則り、各指標に沿った評価を受け、将来的な引き上げも可能な、拘束力ある約束を行わなければならないと強調した。
ブラジルは、“実行困難なもの” にするのではなく、行動志向のプラスのインセンティブを重視するよう求め、附属書I国と非附属書I国の誓約は異なる方式で提示されるべきであるとし、附属書I国は今後も京都議定書を参照すべきであると言い足した。
フィリピンは、“あらゆる側面で”野心を強化する必要があると強調し、資金供与に際して条件づけをすることに警戒感を示した。
南アフリカは、衡平性参照フレームワークを支持した。また、科学の命題と各国の事情とを調整し、比較可能な行動の公平性の認識し、適応を国際的な気候政策ダイアログの中心議題に据え、締約国の構造的な違いを超えた野心に関する議論に専念することを特に強調した。事前評価のフレームワークについては、基準および基準以外の尺度に基づいたアプローチを組み合わせて、締約国自ら提起している緩和と適応の約束に適用することを提案した。
約束の事前評価については、 サウジアラビアが、先進国だけに適用を検討すべきであるとし、あくまでも途上国の行動は自主的なものであると強調した。ノルウェーは、基本的な基準や仮説、公平という観点からカンクン 緩和の誓約を定量化することがいかに困難だったか学習すべきだと述べた。
ケニアは、衡平性のレビュー・プロセスを伴う衡平性フレームワークのアプローチを支持した。シンガポールは、衡平性は指標の中に抽出することはできないと述べ、条約そのものが衡平性を具現化する究極のフレームワークであると強調した上で、新たな枠組みをつくるという案に釘を刺した。
中国は、倫理規範は将来および現行の世代への配慮を伴うものだとし、革新的な低炭素開発経路が必要であると強調した。
インドは、衡平性が野心の引き上げを可能にするのだと強調し、ダイナミックな衡平性の適用に対して警告し、個々の能力という概念で先進国から途上国への責任移譲という結果 を招いてはいけないと強調した。
米国は、一連の指標に関して合意を形成しようとしても困難だと警告し、誤った方法で作成された指標が締約国共通の目標を損ねかねないとの懸念を示した。
ワークストリーム 1に関するADP ラウンドテーブル(行動の種類):資金・技術・キャパシティビルディング:支援は “相互責任”であると称し、 ノルウェーは、支援が行動という結果に至るものならば、常に支援の提供に前向きであると述べた。また、コストと行動の便益の両面を重視した議論を行う必要があると強調した。インドは、資金と技術に関する約束の実施が限定的であることが中心的な障害となっていると指摘し、途上国が早期に効果的な行動を行うために、無償での技術支援が必要だと呼びかけた。
コロンビアは、新しい気候合意には、気候変動の影響の増大といった日々進化するニーズの観点から実施手段のレビュー・プロセスも盛り込むよう要請した。ペルーは、適応コストの急増を回避するためにも早い段階での行動に注意を喚起した。
中国は、2015年合意はバリ・プロセスの合意済み成果と条約に基づく約束の実施を基礎とするものでなければならないと述べ、技術移転のためのメカニズムの検討を提案した。信頼のギャップを埋めて、実施手段の提供が不十分であるという問題に対処するため、韓国は、明確な定義、ベースライン、スコープをもたせた資金供与のためのMRV策定を提唱し、UNFCCC内外の既存のメカニズムの連携改善も訴えた。ネパールは、途上国の脆弱性対策と低炭素開発経路の実行に向けた途上国向けの実施手段について強調した。
バングラデシュは、実施手段が“パリ議定書”のカギになると述べた。ナウルは、特に、資金源の特定および気候資金供与の拡充について強調した。オーストラリア は、実施手段の供与は支援国と被支援国間のパートナーシップ構築を意味するものであり、効果的な緩和行動と透明な支援の実施という文脈の中で2020年の資金目標を見るべきであると述べた。
EUは、新合意の文脈の中の“大改革”とダイナミズムという概念に焦点をあて、GCF等、創設された諸制度が2020年以降も確実にその作業を実現・継続するよう担保する必要があると強調した。日本は、2015年合意においては、キャパシティビルディングや 技術移転、資金についての検討が、既存のアレンジや議論に立脚するものであり、それが2015年プロセスのパッケージ部分と成すべきであると示唆した。
米国は、途上国への資金の流れはすでに整備された政策や規制枠組みに依拠しているとし、現行の諸制度の強化を求めた。
メキシコは、各国の取り組みと国際的な取り組みとの間の補完性を求め、官民の資金供与を要請した。フィリピンは、先進国の約束に個々の能力という概念を適用することに警戒感を示した。 スイスは、強力なイネーブリング環境と官民資金ミックス、低炭素の未来のための国内及び多国間の資金が必要だと強調した。
廊下にて
交渉第1週目の最後となる土曜日の会議に対する参加者の印象は様々だった。一部の参加者は、ほとんどのSBSTAの議論では“前向きな精神”で満ちており、実質的な進展も手の届くところにあるように思われたとの所感を伝えていた。また、ある政府代表は、気候変動の影響、 脆弱性、適応に関するナイロビ作業計画(NWP)について現在行われている作業は期待が持てるとし、「NWP の第2段階に向けて進展中だ。現場にもっと即した実施のニーズを何とか実現できるようにしたい」 と語った。REDD+をフォローしている参加者も、 MRVや、国内モニタリング制度、セーフガードに関する情報提供の時期や頻度などの未決問題について実質的な前進がみられたとの朗報を伝えてくれた。しかし、SBSTAの農業問題については、期待するようにはスムーズに進んでいないとの指摘があった。
一方、SBI方面の廊下では、一日中、議長フレンズ会合が行われ、多くの参加者が交渉難航に苛立ちを募らせていた。「失われた時間を埋め合わせるために、ワルシャワでは一体どれだけの作業が必要になるのか想像できるか?」とある参加者は嘆息する。ベテラン交渉官は、SBI議長の折衷案にもかかわらず「どんな代替案も締約国の関心を満足させるようには見受けられないが、全ての難題も月曜か火曜日までに解決してくれるよう願っている」と現況を説明した。
ランチタイムに開催されたADP 共同議長の市民社会イベントも多数の出席者を集め、それは一部の出席者に「UNFCCC以外の方があるいは内部の進展よりも早いスピードで進んでいるのではあるまいか 」との思いを抱かせるほどであった。 ある企業・産業NGOの代表者は、「 我々は、現在も、そして、今後もずっと、気候変動対策に取組んでいくし、それが可能だ」と述べた。 気候行動ネットワーク(CAN)は、 衡平性ベースのフレームワーク構築のための“非公式プロセス”について発表した。地方政府や、女性とジェンダー、クライメート・ジャスティス・ナウ! は、それぞれの数々の活動について紹介した。また、2015年合意の要素について議論を行い、市民社会の参画のためのより透明で系統立ったアプローチに対する全員の希望について思いを寄せた。「それが、われわれ全員の望みだ」とある参加者が声を張り上げた。こうした精神で、 メキシコは、EIGの立場から、市民社会との対話を継続するためのプラットフォーム立ち上げを求める提案を行うと発表した。「楽しいことには必ず終わりがやってくる」とMauskar共同議長が閉会の言葉を述べると、ADP 共同議長はボン会議の閉幕時に後任にバトンタッチする準備をしていると述べた。
This issue of the Earth Negotiations Bulletin © <enb@iisd.org> is written and edited by Jennifer Allan, Beate Antonich, Asheline Appleton, Rishikesh Ram Bhandary, Elena Kosolapova, Ph.D., and Eugenia Recio. The Digital Editor is Leila Mead. The Editor is Pamela S. Chasek, Ph.D. <pam@iisd.org>. The Director of IISD Reporting Services is Langston James “Kimo” Goree VI <kimo@iisd.org>. The Sustaining Donor of the Bulletin is the European Commission (DG-ENV). General Support for the Bulletin during 2013 is provided by the German Federal Ministry for the Environment, Nature Conservation and Nuclear Safety (BMU), the Ministry of Environment of Sweden, the New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade, SWAN International, the Swiss Federal Office for the Environment (FOEN), the Finnish Ministry for Foreign Affairs, the Japanese Ministry of Environment (through the Institute for Global Environmental Strategies - IGES), and the United Nations Environment Programme (UNEP). Funding for translation of the Bulletin into French has been provided by the Government of France, the Belgium Walloon Region, Québec, and the International Organization of the Francophone (OIF and IEPF). The opinions expressed in the Bulletin are those of the authors and do not necessarily reflect the views of IISD or other donors. Excerpts from the Bulletin may be used in non-commercial publications with appropriate academic citation. For information on the Bulletin, including requests to provide reporting services, contact the Director of IISD Reporting Services at <kimo@iisd.org>, +1-646-536-7556 or 300 East 56th St., 11D, New York, NY 10022 USA. The ENB Team at the Bonn Climate Change Conference - June 2013 can be contacted by e-mail at <asheline@iisd.org>.