Daily report for 20 October 2015

ADP 2-11の審議は10月20日(火)にも続けられ、午前のオープンエンド型のコンタクトグループでは19日(月)に締約国から意見が出された文章を合わせた統合テキストについて検討し、今後の方針についての議論が行われた。また、午後と夕方からの分科会(spin-off groups)では、ワークストリーム 2、技術の開発と移転、キャパシティビルディング、緩和、資金についての問題が取り上げられた。

ADP コンタクトグループ

午前、ADP 共同議長 Daniel Reifsnyder (米国)は、パリ合意パッケージに関する分科会 [緩和; 適応と損失・損害; 資金; 技術の開発・移転とキャパシティビルディング; 遵守; 透明性;ワークストリーム 2]で行う交渉の出発点として「修正版ノンペーパー」を利用することを提案した。

修正版テキストについては歓迎の意を表明しつつ、南アフリカはG-77/中国の立場から、同地域グループが出来上がったテキストを土台に議論する準備ができていると強調した上で、事務局が"ライトタッチの編集作業"を行うことに合意したことを報告した。スイスは EIGの立場から、締約国には文章を提案する権利があり、特に様々な提案を埋める権利があると指摘しつつ、新たな草案は“明らかに我々のテキスト”であり“我々は交渉を開始する準備が出来ている”と述べた。

削除部分に関して、G-77/中国は、幾つかのグループの加盟国の主張がテキストに反映されなかったとし、この点を分科会で問題として提起すると主張した。多くの国が新テキストには自国が追加を主張した部分が十分に反映されていないと主張した。

作業方式については、多くの国が、分科会において直接、テキスト交渉を行うのか、決定書のテキストも扱うのか、オブザーバー組織も参加させるのか等の問題を含め、分科会の特徴を明確にするべきだと要請した。透明性の重要性について言及し、G-77/中国、メキシコ、マレーシア(LMDCsの立場で)は、オブザーバーも参加させることを求めたが、これに日本は反対を唱えた。

法律問題の審議の場や方法についての質問が挙がり、第11条から26条まで最終的な全ての条項を遵守に関する分科会で審議することが決まった。ADP 共同議長 Reifsnyder は、分科会の作業内容については、会期末のノンペーパー修正版で反映される旨を明言した。

テキストが増大することに警戒感を示しつつ、ブラジルは、トルコの支持を受けつつ、様々な意見を調整しつつコンセンサスを形成するよう建設的に取り組んでいくことを求めた。

こうした協議を経て、ADP共同議長 Reifsnyderは、分科会へのオブザーバー受け入れに関しては、さらに懸念する声が上がり、オブザーバーの参加は認めない方針となったと伝えた。

Reifsnyder共同議長は、午前中に発行した修正版ノンペーパーには“不作為による脱落箇所”があったものの、あくまでも交渉の出発点となる文書であると説明した上で、分科会でなく、コンタクトグループにおいて、決定書草案の序文・定義・目的/総則、国際的な中間点検・パラグラフ等を扱うものとし、毎日議論の振り返り作業を行い、オブザーバーに対しては追加的なブリーフィングを予定していると報告した。

ADP 共同議長 Reifsnyderは、分科会の作業を削除された文案の議論から開始するよう勧めた。

ADP分科会

ワークストリーム 2: ワークストリーム 2に関する分科会では、Aya Yoshida (日本) と George Wamukoya (ケニア)が共同進行役を務めた。10月19日(月)のコンタクトグループで行われたように、ノンペーパー内の決定書草案では脱落していたり、適切なセクションに挿入されていなかったりした文言追加の提案作業が開始された。

手続きに関する議論を受け、前回脱落した文章を最初からパラグラフ単位で見直し、追加で文言を挿入することが決まった。

前回の合意事項や条約に基づく各種決定を実現するため、序文及びパラグラフ1-3に対して以下のような修正案が出された。[CBDRRCに則った完全かつ効果的で持続的な条約の実施強化、先進国の主導、全ての締約国の参加の保証、現行のプレ2020年の約束/誓約に関する野心の引上げ、2ヶ年更新報告書が未提出となっている非附属書I締約国への提出奨励、先進国の緩和に関する約束や途上国への支援についての2016-2017年レビュー等。]

認証排出削減量 (CERs)の自主的な取消しについては、CERsに限定せず数値化された排出削減量について言及するとの案や京都議定書の全ての柔軟性メカニズムを含める等の提案が出された。

技術検証プロセス(TEP)の強化については、締約国は以下の文言を追加した。[支援の効果的な調整及び提供を目的とする条約・資金メカニズム関連機関の技術専門家会合(TEM)への参加奨励、環境技術の移転に向けた支援; 対応措置による負の社会経済的影響に関する条約の条項の実施についての評価]

適応TEPでは、10月21日(水)の審議に適応の専門家の参加を認めることに共同進行役が同意した。ワークストリーム 2での緩和の議論には緩和の専門家が出席したことはないと指摘し、いくつかの締約国はこれが前例となると懸念を示した。

Wamukoya共同進行役は、文書とりまとめのため、残りのテキストについて追加して挿入する箇所があれば速やかに提出するよう締約国に要請した。

技術の開発と移転及びキャパシティビルディング: 技術の開発・移転 (7条)、キャパシティビルディング (8条)及び関連する決定書についての分科会はTosi Mpanu-Mpanu (コンゴ民主共和国) とArtur Runge-Metzger (EU)が共同進行役を務めた。

技術については、合意文書に関するパラグラフ単位の交渉に移る前に懸案となっている削除箇所の問題が討議された。

あるグループが、イネーブリング環境に関するパラグラフの削除を提案し、この意見に賛同する形で、イネーブリング環境が投資を誘引すると明記することや“低炭素技術や気候耐性のある技術の普及”に向けた投資について記載することに反対だと主張した。

一方、協力行動や実施のための支援には“特に”投資を促すようなイネーブリング環境の改善が必要だとの異見も出された。技術の普及や吸収に対する障害対策に関する記載についても、意見は分かれた。

グローバル目標については、あるグループが、緩和の野心は技術支援を受けてこそ達成可能だと主張し、技術の供給側の問題に対処するための技術の利用可能性に関する評価を行うべきだと強調した。他方、そうした目標の数値化は困難であり、“約束の偽装”を招くとして、パラグラフに反対する意見も出された。

研究開発や環境技術の適用に対する支援策については、一グループが反対し、多くの国がセクションの末尾で本件を取り上げるべきだと提案した。

結局、分科会は“テキストのスリム化”に向けて、テキストに関する各種提案の審議を続けることで合意した。

キャパシティビルディングについては、懸案の削除問題についての議論で、“先進国締約国の内在的な能力”の強化に向けた約束に関するテキストの提案があった。

パラグラフ単位の交渉に入ると、一部の国から、例えば、LDCsやSIDS等の具体的な締約国グループ名を挙げることにより、キャパシティビルディングに関する差別化に取り組むことが提案された。一方、“困窮している締約国”とだけ記し、枝葉末節の議論を回避すべきだとの提案も出された。同部会では締約国から出された意見やテキスト合理化案について討議を継続する。

緩和: 緩和に関する分科会は、Franz Perrez (スイス) 及び Fook Seng Kwok (シンガポール)が共同進行役を務めた。修正版ノンペーパーで脱落した要素の挿入が開始された。パラグラフ単位の交渉に移ると、Perrez共同進行役は締約国に対して“実質的な”交渉を行うべく、柔軟な姿勢で臨み、簡潔に発言し、各種提案の溝を埋めるよう求めた。

その後、緩和目標 (パラグラフ 1)に関するブリッジ提案についての議論が行われた。ある締約国が、締約国の種別や特殊事情に対する記載を削除することにより目標を“地球規模”にすること、貧困撲滅や経済開発、正味ゼロ排出や気候中立性等の文言の削除、GHGsという記載を“climate forcers(気候強制力)”という記載に変更すること等の提案を行った。

この提案に対して、テキストの合理化に対する合意なしで様々な変更を行うべきだとの意見が出た。さらに別のブリッジ提案が出されたが、これはCBDRに則り、途上国の最優先課題が貧困撲滅であることを念頭に、先進国と途上国で排出量ピークアウトの期限を異にすべきだというものだった。

パラグラフ 1に関するこれらブリッジ提案の議論では結論が出ず、NDCsに関するテキスト(パラグラフ 2)の検討に移ることになったが、ある国の代表からは「全ての締約国にブリッジ提案を出す機会が与えられなかった」と不満の声が漏れた。その他、作業方式を明確にするよう求める声があり、代替案が提案された。

テキストのスリム化作業の難しさに触れて、Perrez共同進行役は、テキスト内の概念の骨子や時間枠(期限)をベースに体系的な議論を続けることを提案し、ブリッジ提案を行った締約国には、まずグループ内で意見調整をするよう求めた。

資金: 資金 (6条)に関する分科会は、Georg Børsting (ノルウェー) 及び Diann Black-Layne (アンティグア・バーブーダ)が共同進行役を務めた。

分科会は2つの脱落箇所があったことに留意し、Børsting共同進行役が合意文書にオプションを明記することを要請した。

ある締約国グループは、新合意では、途上国向けの資金の予測可能性や拡充、アクセス、ならびに適応資金に関する言及の両方が不可欠であると強調した。

ある締約国は、国内の資金動員を含めた気候にやさしい資金の動員のための集団的努力、政府開発援助(ODA)や経済の現状、資金拡充について認識すること自体が目的ではないと主張し、潜在的な資金拠出国のプールの人為的な抑制に反対し、気候資金に関する先進国向けの連絡を制限することに反対した。

UNFCCCの条文改正という役割は課されていないと指摘しつつ、一部の提案に関しては法律上の問題があるとの指摘があがった。

 一部から“議論の蒸し返し”との声もあがった「やり取り」の中では、差別化や“経済的な現実の変化”と認識される問題などに関して、各国の意見はまとまらなかった。ある締約国グループは、「先進国の義務」と「途上国の自主的な努力」を同一視するという考えはまるで「お話にならない」と述べ、そうした自主的な努力はCBDRを希薄化したり、“責任転嫁”したりする理由にならないと主張した。

現段階では差別化問題について意見の収束を図れる見通しは無いため、本件の議論から離れるべきだとの意見が数カ国から出された。しかし、パリ会議で作業文書を閣僚レベルに提起するため、これらの難しい問題に取り組むことが分科会の責務であるとの意見も出された。

まずは意見が収束しやすい分野の交渉から着手し、数カ国からテキスト交渉に入りたいとの希望が出された。Børsting共同進行役は、10月21日(水)午後からの会議再開までに制度的なアレンジの問題に取り組めるよう、同日午前に非公式協議を行うことを提案した。

廊下にて

ボンの世界会議場で行われた午前のコンタクトグループ会合は、分科会のパリ合意草案テキスト交渉の場にオブザーバーの出席を認めるか否かという議論一辺倒になった。

パリ会議まで残り僅かな時間。厳しい交渉と駆け引きの応酬が今まさに始まろうとする中、水面下の交渉でこそ実を結ぶという現実を直視しなければならないという声があがったものの、そうなるとプロセスの透明性が損なわれると反対する声もあがった。

あるオブザーバーは“秘密交渉はフェアな交渉にはならない”と嘆いていたが、一部途上国の熱い嘆願にもかかわらずオブザーバーを蚊帳の外に放り出すような締約国の決定に苛立ちを露わにする者は多かった。

「締約国は“今や自分達のテキスト”を手にしており、パリ合意パッケージ作りの真剣交渉に取り掛かる準備は出来ている」という楽観論も浮上。希望の薄日も射してはいるが、テキスト交渉の場から喜びの声はほとんど聞かれない。午後と夕方に行われた分科会の交渉では、新たな統合テキストを削る作業を進めようと各国が腐心したものの、さらに文言を挿入する状況に陥り、すぐさま交渉は行き詰まった。「8月のADP会合がまるで無かったかのようだ…」と嘆息を漏らす参加者もいて、夕刻に会議場から出てきた参加者の多くが今回の文章スリム化作業に既視感を覚えたと話していた。

(IGES-GISPRI仮訳)

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